食べないで欲しかったのに
柱に五ミリ程度の穴がいくつもあいている。
その穴を何かの幼虫が行き来している。
マスカット色と巨峰色の丸い粒を交互に繋げたようなカラフルな幼虫だ。
色の境はくっきりと黒く縁取られている。
薄く柔らかな皮膚はみずみずしく充実していて、木を削る口元だけが鎧を纏ったように硬い。
何匹もの幼虫たちがものすごいスピードで柱に穴を開けて突き進む。
床は削られた木の粉でいっぱいだ。
杉の匂いがする。
このままでは家が倒れてしまうと思い、私は幼虫をつかんで落とし踏みつける。
落とした幼虫は丸い粒の一つ一つが巨峰の粒くらいに膨み、足では全体を踏み切れない。
靴を挟んでちょうど真っ二つになった幼虫は、それぞれ踏み残した部分から鎧のような頭を再生して、平然と動き出した。
駆除しようとして却って増やしてしまったことに気付き、焦る。
靴を上げるとぶどうの皮のようなものが張り付いている。
周りの床が汁でシミになっている。
そのシミから小さな幼虫がいくつも這い出してきた。
幼虫は、今誕生したのだ。
自ら幼虫を呼んでしまった。
とんでもないことを招いてしまったと、途方にくれた。




