焼死体を解体する※
※不快な描写があります。ご注意ください。
焼死体を解体する
炭化した焼死体の灰を刷毛で丁寧に落としてやると、飴色の血管が現れる。
皮膚は燃え落ちたのになぜか血管がだけが残るのだ。
組んだ指先の血管はあみあみしている。
きれいに交差した血管は、卵の黄身を塗りつけて焼いたパイの表面みたいにてらてら光っている。
溢れ出すマグマのようなオレンジ。
血管を形を崩さないように気をつけて丁寧にピンセットで剥がしていく。
パサツキと粘り気。
この血管を使用して私達は”美しいなにか”を作る。
”美しいなにか”に辿り着くことは、何よりも何よりも優先されるべき私の、大切な仕事。
額を集め、私達はあみあみの切れたさきからねっとりとした油がしずくを垂らすのを見る。
輝きに息を呑む。
太陽を凝縮して押し込めたような、どろどろに煮詰めたような琥珀色。
私達はこれからすべてを脱ぎ捨てて、美と一体となる。
美そのものを飲んで、全身を通して、抽出する。
太陽を飲むと”私”の中身は焼けて皆溶け出してしまう。
外身は日焼けしてこぼれ落ちる皮膚のような極薄の抜け殻になり、風に舞い上げられて散り散りに解け去る。
”美しいなにか”の精製を成し遂げるのは私のすべて。
黙って成し遂げるべき私の仕事。
私達の仕事。
誰にも知られてはならない。
この時をずっと待ちながら私は現実をこなす。
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私の仕事はどこかの嘱託職員。
お茶汲みもクレジットカードの操作すら新鮮な世間知らずな私。
体にピッタリの制服を着たグラマラスな女の先輩はちゃきちゃきしていてとても気がきくが、その分見る目が厳しい。
私のような間抜け、すぐにボロを出してしまうに違いない、なんて分厚い皮膚を青くして怯えながら。
先輩のしっかりとした重量を持ったはちきれんばかりの現実感を羨望する。
生き生きとした皮膚の色。
斜向かいに座る愛らしい天パの男の子は、職場の連中のおもちゃ扱い。
だが彼は実は仕事ができるのだ。
なんの仕事なのかわからないけれど。
企画会議の最中、私はあの流れるマグマのように美しい血管のあみあみのことを思う。
ただそのことを思ってぼんやりと時を待つのだ。
美しい焼死体のことを。
それだけで満ちていく。
焼死体はもう私の手の中だ。




