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【夢日記】内側を旅しても(stray thoughts.)  作者: 遠宮 にけ ❤️ nilce
2020年の夢

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134/138

掌から生まれる魚

 岩礁に立っている。

 車道から防波堤を越えて石を渡り、海に臨む先端まで出たのだ。

 風に白いノースリーブのワンピースがなびく。

 海に呼ばれ、手を引かれているみたいに強く。




「戻ろう、潮が満ちてきたよ」

 腕を引かれて、素足の裏が濡れているのに気がつく。

 わたしの立つ岩の城を飲み込もうとするように、波は遡上し、みるみるうちに岩場が消えていく。

 岩に生えた髪の毛のような茶色い藻が、誘うように足をくすぐる。


「早く」

 彼女の手を取って、導かれるまま後を足跡を辿る。

 陸の世界へ。

 わたしは魚だったかもしれないのに。



 子供部屋。

 Mさんの書いた歴史物語をベッドで子供に読み聞かせている。


 ふくふくした羽毛布団に白いシーツ。

 水まんじゅうみたいなふるふるした頬の幼子が二人、すっぽり布団に埋まって、ビー玉みたいな丸い目を向けていた。



 わたしの掌にはジップロックみたいな開閉できる穴があって、開くとそこから魚が出てくる。

 波と共に溢れ出し、白い布団を濡らして跳ねる。

 何度も尾を打ち付けて、子供達の頬をびたびたにする。


 わたしの魚。


「いけない魚ね」

 黄色い尾びれを掴んでわたしは子供部屋を出る

 この誰にとってもどうでも良い、どこにでもあるただの魚にわたしは惹かれる。

 逆さにされて連れ出される哀れな魚。

 あなたの良さは誰も理解しないから、部屋から締め出さなくてはならない。


 解体され、味わわれるためのあなた。



 台所に立つわたしをUさんがなぐさめてくれる。

「仕方がないわ。魚は彼らにとっての対象じゃないんだもの。語りかけたり抱きしめたりするような、大切に扱って愛するための」


 魚は、テディベアではないの。



 頭を落とされ、手足ひれを削がれ、切り身になって冷凍庫の中にあるもの。

 冷たくなって、わたしはそこに眠っている。



 あなたを描けるようになりたいな。

 なるとき、わたしは。




 20200209

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