学祭の準備に忙しい子供たち
学祭の支度をしている。
なにがしかを瓶の中に詰めて配るのが私の仕事だ。
そこには真実の欲求が入れられればベストということが、黒板に白色のチョークで大きく示されている。
◎ しんじつのよっきゅう
× いつわりのよっきゅう
こんなふうに少し震えたまるっこい平仮名で明瞭に。
書いたのは黒板のチョーク置きの上を歩き回る小人たちだ。
空っぽの瓶に息を吹き込んで、これでいいのだろうか? というふうに黒板を確認すると、小人たちがいっせいに頷いてくれる。
「よかったねえ、よかったねえ」
自分のことみたいに嬉しそうなくしゃくしゃの顔で、目を合わせては頷きあっている。
クリアできて気分がいい。
ただ吹いただけで、何も考えてなくて、だから実際何をしたのかよくわかってないんだけど。
何が入っているかも見えないんだけど。
今のでできているってことなのか。
いまのことだけ。
この瞬間感じている感覚だけで何もいらない。
それだけを感じているほうが、入りやすいみたい。
何か思い浮かんでいる時はダメだ。
私の仕事が軌道に乗り始めると安心したのか、小人たちは小さな湯呑みにチョークの粉を集めて溶かし、お茶を作って飲んでいた。
瓶はそれだけでいいものではなくて、学祭で使うものらしい。
カゴに詰めて指示された教室へ運ぶ。
特に何も入っていないようにしか見えない瓶だけど、いったい何に使うんだろうな。
一階上がり損ねて、教室を間違える。
けどまあいいかっておもう。
その教室では男子生徒が集まって、とても大きな装置を運んでいる。
プラネタリウムの映写機みたいな巨大な三脚のついた重いもの。
これがいくつもいくつも廊下に並べてある。
全部運ぶのかな。
教室の奥には何人か幼児がいる。
一人の女の子がビーズを髪に通して細くいくつも三つ編みしていた。
ゴムがはずれたのか、残ったものがこぼれたのか、ビーズが床に散乱してキラキラしている。
他の幼児たちは落ちているビーズなんて構わず、折り紙に夢中だ。
そばにいるのはルピタスという名の教師。
真っ白なペッパーみたいなロボットの形の。
うまく折れない女の子が癇癪を起こすが、隣で一緒に折っている凝り性の男の子は我関せずで、ただ黙々と折りつづけている。
ルピタスも他の周囲の幼児たちも彼女の癇癪に構わない。
ほったらかしにされて面白くない女の子は、それでも男の子の指先を見つめ、なんだかんだ折り紙を再開する。
リズミカルな動き。
だんだんと女の子と男の子のペースがあってくる。
みんなとあってくる。
ダンスみたいに。
20200115




