驚くほど柔らかな岩肌
めまいの時に見た夢の一つ
色の白い老婆の片足を肩にのせ、ゆっくりと足を開かせる。
ひどく太った後、萎びたのだろう。
腿の皮膚は垂れ、岩肌の露出した山脈を天から見下ろしているように見える。
深く浅く刻まれた皺は鞍部。
股の部分は確認できないほど深い、地の底にもつながるような谷だ。
山の頂点を掴むと、指が埋まるほど柔らかく、頼りなく、生暖かい。
この肉の感じ、もう長くない。
アリの群がる芋虫のように、薄い皮膚の内側は活動を終えかけている。
薄っぺらく波のように揺れる皮膚に触れるのは、幾層にもなった深い霧を掴んでかき分けているみたい。
ベール、ベール、ベール。
捲るたびに現れる肌色のベール。
化粧のお粉のようなおばあちゃんの匂い。
粉ミルクみたいに甘い。
股に鼻を埋め、深呼吸して、おばあちゃん、と口にする。
すると、どうしてだろう、急に懐かしくなった。
おばあちゃん、おばあちゃん、と終わりのないベールを捲り続ける。
私のおばあちゃん。
バカみたいに徹底的に甘やかしてよ。
ママには内緒と言って、こっそりスプーンいっぱいの粉ミルクを口に運んで。
はいはい。
XXちゃんは、本当にこんなして食べるのが好きなぁ。
スプーンを差し出すおばあちゃんの顔は、霧の向こう側で、どんなに目を凝らしても見えない。
赤べこのように頭を揺らしているのがわかるのに、たぶんそこにはないんだ。
スプーンに向かって口を開くと、粉が気管に入ってむせ、粉があちこちに飛散した。
おばあちゃんの顔にもきっと吹きかけたはず。
でも、何も言わない。
部屋を汚しても叱らないで。
背中をさすって。
むせる私に白湯を飲ませてちょうだいよ。
そしたら私の喉をむずがゆくしたミルクの粉がみんな溶けてお腹に入るから。
あったかく私を満たしてくれるから。
おねがい……。
スプーンにこびりついて残ったミルクを棒付き飴のようにしゃぶれば、おばあちゃんの味がした。
夢中になって味わっているうちに、誰もいなくなっていた。




