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傷つかない癒されない異世界  作者: 酢モツなタン
第一章、旅立ちの道連れ
9/23

1、不思議な少年


少年は再びベッドに寝かせていた。



その隣には、椅子があり、青髪の少女もいるのだか、すっぽりと丸まって寝息を立てている。



そして、水桶を持った金髪の少女が、扉を開けて中に入った。




ーーーーーーーーーーーーーーーーー





不思議な少年、それが私の彼に、(やなぎ) 奈義(なよし)に抱く第一印象。



歳は、自分とそう変わらないと思う。目元と眉間の皺があるから、少し老けて見えてしまっているが。顔の作りは悪くない。



彼は、アオが拾ってきた薪と一緒に籠に詰められた形で見つけた。見つけた時の彼は、酷く(うな)されていて、呼びかけても、起きてはくれなかった。



彼女に、彼は何なのか訊ねたら、ハナツタヤナギを指差した。喋らないからおおよその事しかわからないが、多分拾ってきたのだろう。



流石に行き倒れの人間を放っては、置けなかったのだろうか。



彼女自体の行動も、不思議なところがある。もう何年もの付き合いになるが、わからない事だらけだ。



彼女は、基本人に懐かない。



純粋に興味がないのだろう。彼女に最初にあった時は、私は見向きもされなかった。



今は亡き師匠も、彼女について多く語らなかった。



そんな彼女が、何故今も少年の側を離れないでいる。いつもなら彼女は、ハナツタヤナギのところに行っている時刻なのだ。



彼女の不思議な行動の一つが、1日に必ず、ハナツタヤナギの元へ出向く事である。過去に一度、彼女の行動の意味を探るべく同行した事があったが、彼女は、木に登ってハンモックで寝こけていただけだった。そんな彼女が眠る少年の横を離れないのだ。



そして彼の不思議なところはまだある。



目覚めて言葉を交わした中での、彼の出身だ。彼の言っていた。ニホンという島国は、この国「プラント」では、聞いた事のない。



彼の言っていた平和な国



本当にそんなところあるのだろうか?



このマテン村は、比較的、平和なところだ。と言うのもマテン村が、王国騎士団の防衛対象領地であり、その防衛対象になったのは最近の話だ。



この世界に、害を及ぼす存在が多々ある。



魔物、魔族、


そして、異能者。




まず、魔族や魔物は、魔の王によって生み出された物だ。(かつ)ては、魔の王と共に世界を滅ぼさんと、残虐の限りを尽くしたそうだ。


しかし、魔の王が英雄によって滅ぼされたのは、丁度、二百年前、そしてその残党が、今もこの世界にいる。


そしてもう一つの悪、異能者。

異能者は、この世界の魔法の理から外れ、独自が、個々の不思議な力で猛威を奮った。



彼らを束ねている「癒しの女神」と呼ばれる者がいる。その目的は不明だが、人の命をも軽んじる連中だ。



魔の王を滅ぼした英雄の中に異能者がいたそうだが、これまでの異能者の所業は、とても許されるものではない。



しかし彼は、そんな者を全く知らないかのように語った。彼の故郷には、その様な脅威は無いのかも知れない。



そして最後に・・・



治癒魔法を施した時の皮膚の破裂。

本来は、傷を癒す為に行った行為だが、彼の手に触れた瞬間、皮膚の内側から爆ぜたのだ。血が飛び散り、彼は、そのまま気絶。



私は、慌てて再度治癒魔法を掛けたら今度は、普通に彼の傷が癒えていた。


あの一瞬の出来事は何だったのだろう。


私が、治癒魔法の加減を誤ったのか?


そんな筈は無い、仮にも私は、王国の騎士団に連なる治癒術師に指南を受けている。



ならば、問題が有るのは、彼の方なのか?


亜人種の様な感じは、しない。


ましてや、治癒魔法で浄化されるアンデットでもない。




まさかこの少年は、異能者なのか?




彼女は、眠る少年に濡れた布を当てな

がら、思う。



もし、彼が異能者ならば、また同じ様に接する事が出来るのだろうか?



そんな事を考えて、彼の顔を拭いていくと、虚ろな黒瞳と目が合う。



「ああ、おはようございます。良い天気ですね。」


頬を少しだけ赤くしながら呟く。


さっきの考えは、遥か彼方へと飛ばされてしまった。



この少年は、とても不思議だ。






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