6、独りの妹
訳のわからない状況だか、とりあえず彼女は降りてきてくれたらしい。ヒメリからのミッションは、どうにか遂行できそうだ。
降りてきた彼女は、俺をただ見ているだけだ。
「とと、とにかく!ヒメリから、お前を呼んでくるよう頼まるれた、や、なぎ、奈義だ!覚えとけ!」
噛み噛みである。
もうダメだ。
一瞬死ぬかもしれない一時を過ごしたので声が震えているだけである。
彼女のガン飛ばしにびびってなどなどいない。助かったのに殺されそうだ。
彼女は無表情のままだか不意に何回か飛び跳ねた。
そして物凄い勢いで空をとんだ。
彼女は風を纏って木の上まで届き、空中で停止。
パンツ見えないかなぁ、なんてアホな事考えていたら、彼女は木からハンモックを素早く回収、俺の方へ落下、って危ねぇだろ!咄嗟に避けた。
すると彼女が着地の直前フワッと浮いた後、着地した。水色。そうじゃないだろう、俺のバカチン!
こっぱずかしいが今が機会だ。
「あのさ!お前の睡眠を二回も妨げたのはすまんかった。でもさ、お前が喋らないって知らなかったし、最初蹴り飛ばしたのは、あの・・悪い」
俺の不注意で女の子に蹴りを入れてしまったのだ、流石に謝らないのは心苦しい。
「それとお前、倒れてた俺を助けてくれたんだってな、その、ありがとう。」
彼女は俺の話を聞いてくれたのか、黙ってこっちを見ていた。
そして、彼女は、口を大きくパクパクさせた。
最初は何をしているのかわからなかったが、口で、「あ」と「お」を作っているようだ。
無表情だかそれが面白くて俺は笑ってしまった。
「そうだな、アオ!ありがとう!」
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俺とのやりとりの後、アオは、ハナツタヤナギの根の側まで向かい、何か二つ持ち上げた後、一つを俺の方へ投げてきた。
乱暴に投げられたが俺は普通にキャッチした。
何かと思い、受け取った物を見て目を張った。それは俺が長年使ってきた肩から掛けるバックだ。
もちろん死ぬ時まで
「お前・・・これ・・・」
アオは俺を見ている。
慌てて中身を確認する。
俺の記憶が確かなら、
俺の予想が正しければ、
俺が使っていたものならば、
薄汚れた黒い長財布
黒い財布の中にそれはあった。
紙には、雑な字で日付とたこ焼きパーティーと書かれていた。
恐る恐る紙を裏返す
昔、恥ずかしがる妹に無理矢理頼んで、俺と妹とあいつで一緒に撮った写真。
その写真には妹しか写っていなかった。
妹の愛らしい照れ隠しの笑顔、それだけ。
右にふざけた俺がいて、左に普通にピースするあいつがいるはずなのに、
俺とあいつが写っているはずなのに、
写真の中では、俺とあいつは消えていた。
とても悲しくなった
写真の中でさえも俺は妹を「独り」取り残したのだ。
俺が生きる支えだった妹の笑顔を見た筈なのに
目の前に他人である青髪の少女がいるはずなのに
「ゔあぁああああああああ!」
俺は、救い様もなく、写真を握りしめ、胸に抱き、
大粒の涙をボタボタ流し、
無様に汚く泣き叫んだ。
ちゃんと伝わるだろうか?
次回プロローグ終わり