4、山吹色の光
「しかしですね、ナギっちがなんでマテン村を知らないのにハナツタヤナギの下で倒れていたんですか?」
「待て待て、此処がマテン村ってのはわかったんだかそのナントカヤナギってのがわからん。地名か?あと馴れ馴れしいなお前」
彼女の自己紹介のときに此処がマテン山のマテン村というのは聞いたが、また新しい長い単語が出て混乱する。
ヒメリが人差し指を立ての向こうの森の中のデカイ木を指差した。
「あの大きい木がハナツタヤナギですよ!春には花を沢山咲かせてこの村では有名なんですよ!
綺麗です!」
「そのハナツタヤナギの下で、何故か倒れている俺を君が見つけて此処で看病してくれたと。」
俺の予想では此処は日本ではない、しかし日本語は通じるし、そしてどうやら四季があるらしい、日本と似ているが違う、つまり・・・
異世界だ
どうしよう妹に会えない、辛い、お兄ちゃんとんでもないとこに来ちゃたよ。
「なんだかかなり深刻そうな顔をしていますが、ナギナギを見つけて連れてきたのは[アオ]です。
訂正です。」
「おまえにナギナギなんて呼び方を許したおぼえがない。それに、その[アオ]ってのは、もしかしてさっきの目つきの悪い青髪のことか?」
目覚めて最初に会った少女、確かに蹴った事は申し訳ないがあんな目で見られる言われはない、
近くに居たあいつが悪い
「おぉ〜、やっぱナヨナヨはアオに会ったんですね。そうですよ〜綺麗な青髪なのに目つきが絶望的な不貞腐れ女の子がアオです!
因みに私はヒメリです!」
俺決めたよ、こいつには気は使わない
そのなもの溝に捨てちまえ
「おまえの身内なのにひでえ言われようだな。なあコブダイ」
ヒメリのデコがタンコブでコブダイのようなので、見たまんま言った。
ザマァ。俺の小学生時代の渾名を言った仕返しだ!倍返しだ!
ふん!とヒメリが手を額に当てると手が仄かに光だした。
ぎょっとした俺に構わず、彼女は更に光を強め数秒後、コブダイは可愛いらしい女の子になった。
「・・・今の魔法か?」
「正確には、光属性式外傷治癒魔法ですよ。ナヨナヨ」
また長い単語が出た。
魔法にも種類があり、その中の一つなのだろうと思う。
流石は異世界、何でもありだ。
しかし、俺が過剰に反応したせいで
こいつからの呼び方が過去に言われた渾名に決定してしまいそうだ。
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「ふふん!私は、光の魔法なら大概こなせます!他にも色々できます!貧弱そうなナヨナヨとは、天地の差があります!」
腰に手を当て、胸を張る彼女
相変わらずの嫌味と最悪の態度だが、彼女はとても有能なのだろうと思う、故に態度がデカいのだ。
「ナヨナヨの出身のニホン?とはこの辺りでは、聞きません。
黒髪黒目だからアズワイ地方の人と思ったんですが違ったんですね。以外です!」
俺の中では、もうこの世界が異世界という結論に至ったので日本の話をしても意味ない事だと思ったが、とりあえず簡単にではあるが教えてやろう。
「俺の故郷は、島国で、ユニバーサルで平和なとこだよ、頼むからナヨナヨはやめてくれ」
俺は両手を上げ、呼び方の訂正と故郷の説明をした。
「島国ならば船で、来たのですか?
この辺りに、港はありませんし、近くでも王都の方か山脈を渡らないと海はありませんよ。不思議です。」
「まあ、俺も記憶がこんがらがって、わけわからんから、余り詳しくない、ただの戯言だよ。」
頭に?を浮かべている彼女は、訝しげに俺を見ながら頭をあっちゃこっちゃ振っている。
が、落ち着いたようで
そして少し遠くを見ながら、ポツリ
「・・・・平和・・ですか・・・」
俺が怪しい奴だし、ぶっちゃけ悪人面だし、不審がるのも無理もないだろうと思っていたが、
彼女が何故あんな儚く、寂しそうに呟くのかと疑問を感じ、口を開こうとしたが
「よし!」という声に遮られてしまう手を叩き、何か閃いたのだろう。
「元気そうなので丁度いいです!ギナギナには、アオを呼びに行って貰います!
ナギさんが倒れて居たのはハナツタヤナギの下ですし、何か思い出すかも知れません!アオはいつもそこに行きます。
私には、やる事が沢山ありますから!
我ながら良い考えです!」
最初に会った明るい元気な女の子に戻った彼女はニコニコしながら提案する。
私に良い考えがある
と言う奴の考えに乗ったら碌なことがないことは赤と青の大型トラックが教えてくれた
と、くだらない事を考えるまで本調子に戻った、最も他人とここまで話す事は、ずいぶんと久しぶりな気がする
「そのナギさんってのは良いな採用。
まあ色々お世話になったみたいだし、それぐらい引き受けるよ」
「それじゃあ!頼みましたよ!」と彼女はそそくさと小屋の中に入ったが、またドアが開き一言。
「因みにアオは喋りませんので会話は一方的ですから!」
何故喋れないのかと聞こうとしたが扉は勢いよく閉められる
無理に聞こうと思ったが仕方ない
俺も、アオという少女を迎えに森のデカい木を目指すことにした
・・・でも
あの山吹色の少女の寂しげな瞳と声が心に残った。
ヒメリはいい子