1、裏切り者の少年
誰だって傷つきたくない。
傷つかない方法を選べば、俺は誰も傷つけないと信じてた。
でも結局は誰かは癒されない。
癒されると思い込んだ事が、かえって人を傷つけてしまうからめんど臭いものだ。
でも又、顔を合わせた時に笑い会えれば、癒されるのかもしれない。
ほどほどの楽しさが有ればいい。
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ある少年は親友に裏切られた。
親友は少年の前からいなくなった。
少年の心は酷く傷つき何もかもが信じられなくなった。
少年は、人間不信になり、家族以外誰とも関わらなくなって、ただ空っぽの日々を過ごした。
しかし、家族も少年を裏切った。
両親は、少年と妹を残していなくった。
少年は、妹だけは、自分は裏切らないと誓った。
しかし少年は、妹を裏切った。
田舎の道路で少年はバイクに撥ねられたからだ。
バイクの運転手は岩に頭をぶつけ即死。
少年は下半身と左腕を引き裂かれ、地面に打ち付けられて死から逃れなれないだろう。
少年の右手を妹が握っている。
痛い、苦しい、辛い、寒い、眠い
力が無くなる感覚が脈動の度に強くなる。
妹を一人残していなくなろうとしている。
妹は懸命に少年の名を呼び、助けを求めたが、誰も救いの手を差し伸べなかった。
無理もない、田舎の山の中の一角。滅多に人も通らない。
少年は、妹が無事である事に安堵し、そして、妹を傷つけたことを酷く悔やんだ。
少年の血と涙でぐしゃぐしゃの妹の手が温かい。
大切な家族に看取られる人生、幸せだと思う。
嘘だ。
こんな形であっけなく消える人生、糞食らえだ。
空っぽだった人生だが、妹だけは心の支えだった。
妹を傷つけた人生なんて生きる価値も意味もない。
そもそも少年が撥ねられなけば、傷つかなければ、妹を泣かせず、傷つけずに済んだ。
「傷つか」なけば、少年は妹を裏切らずに未来を迎えられたのだ。
薄れていく意識、妹との最後の会話だろう。
震える唇から言葉を出そうと力を込める。最後でもこんな救いようのない懺悔の言葉を残す自分に嫌気がさしながら、
「・・・俺も、裏切り者で・・・ごめんな・・・」
「待って、死なな・・・」
妹の声が聞こえなくなり、少年は、彼女を言葉を最後まで聴き取ることが出来ず、
少年は。
柳 奈義は死んだ。