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巡る世界  作者: 東亭和子
7/12

 6日目


 翠の部屋に向かう途中で渉に声をかけられた。

「あいつ、まだ何もしてこないの?」

 不機嫌な声に凛は頷く。

「つまらない男!問題起こせば早く処刑できるのに!」

 処刑?

 渉の言葉に凛は驚く。

「処刑ってどういうことですか?」

「あいつの命はあと4日ということだよ。

 知らないで世話してたの?

 まったく兄上は甘いんだから」

 渉は驚いている凛を置き去りにして立ち去った。

 凛は動くことが出来ず、その後ろ姿を呆然と眺めた。


 処刑?

 あと4日?

 一体どういうことなのだろう。

 背中を冷たい汗が流れた。

 心臓が早鐘を打っている。

 凛はのろのろと翠の部屋に向かった。


 ノックも忘れて扉を開ける。

「何かあったの?」

 驚いた翠が凛に近寄る。

 凛は青ざめた顔で翠を見上げた。

「どうしたの?」

「…あと4日だって」

「ああ、そうだね」

「処刑ってどういうこと?!」

「あれ、知らなかった?

 あと4日で俺は処刑されるんだよ」

 まるで人事のように翠は言う。

 凛はそれを悲しいと思った。

「悲しい?」

 頷く凛の頬に翠の手が触れる。

 悲しい。

 その事実を受け止めたくないと思う程に。

「ありがとう」

 翠の優しい微笑に凛の胸は痛む。

 この人を失いたくないと初めて思った。

「さぁ、一緒にご飯を食べよう」

 その言葉にやっと凛は体を動かした。

 機械のように朝食を準備する。

 翠はいつもと変わらない。

 美味しそうに食事をしている。

 だが、凛は朝食の味を感じることはなかった。


 いつの間に自分の心は翠で満たされたのだろうか?

 たった6日間一緒にいただけだ。

 それなのに強烈に心に残る。

 支配されている。

 凛は自分の気持ちを自覚した。

 無意識に足は裏庭に向いていた。

「ご用でしょうか、お嬢様?」

 凛の背後に一人の男が立つ。

 男は凛の家の密偵で庭師として王宮に勤めている。

「調べてほしいことがあるの」

 凛はそう言うと男の耳に囁きかける。

「畏まりました」

 男はそう言うと木に紛れて消えていった。

 凛は静かに目を閉じる。

 これから起きることを考える。

 翠はどう動くだろう?

 凛には予想できなかった。


 緊張した面持ちで凛は愁の部屋に来た。

「翠王子は処刑されるの?」

 凛の問いかけに愁は頷く。

「…仕方ないんだ。止めるすべはない。

 それに翠がそれを望んでいる」

「何故?何故、知っていて私に世話をさせるの?」

 悲しい、心が苦しい。

 どうして?

「…それが翠の願いだからだよ。

 彼は僕の友人だ」

 愁の言葉に凛は呆然とする。

 友人?

 いつ二人は知り合ったの?

 友人ならどうして逃がさないの?

 そう思ったが、愁も苦しんだことに気づく。

 この優しい人が苦しまない訳がないわ。

 どうにもならない思いを抱えて凛は俯いた。


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