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5日目
朝、翠を起こしに行ったら、もう起きていた。
「やぁ、おはよう」
「おはようございます」
凛は頭を下げる。
翠は着替えも済ませていた。
いつ起きたのだろう?
今日は早いのですね、と凛が言うと、たくさん寝たからもう眠くない、と翠は言った。
少し話をして朝食の用意をする。
「一緒に食べてくれないの?
昨日は食べてくれたのに」
翠はそう言って凛を見る。
凛は眉をひそめた。
「昨日のは不可抗力です」
「そうなの?つまらないね。
じゃあ一緒にご飯食べるのと一緒にお風呂入るのどっちがいい?」
にこにこと翠が笑う。
「…二択ですか?」
「もちろん、どっちかだよ」
反応を見て楽しんでいるのだろう。
そうはいくか!と凛は思う。
たまには驚かせてみたい。
「では一緒にお風呂に入りましょうか?」
じっと翠を見つめてニコリと笑う。
その言葉に翠は「えっ!?」と動揺した。
それを見て凛は楽しそうに笑った。
「冗談ですよ。
食事の方にさせていただきます」
「…今のは反則だろう?」
翠は小声で呟くとふいとそっぽを向いた。
心なしか頬が赤い。
その様子が可愛くて凛は微笑んだ。
翠はため息をつく。
「はぁ、君って結構悪い女だね」
「まさか!翠様の方が悪い男ですよ!」
悪い男ね、と翠は笑う。
「まぁ、悪い気はしないけどね」
翠との会話は楽しい。
楽しくて忘れてしまいそうになる。
彼は捕われ人ということを。
「今日から一緒に食事をすることにしました」
凛の報告に愁は微笑んだ。
「そうか。喜んでいただろう?」
ええ、とても。凛はそう答えた。
翠はとても喜んでいた。
誰かと共に食事をすることは楽しいと。
凛もそれを楽しいと感じていた。
少しずつ芽生える感情。
それは翠へと注がれつつある。
心の底でそれが大きくなることを恐れてもいるが、喜んでもいる。
「ありがとう」
愁はそう言った。
凛は少し困ったように微笑んだ。