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Troika

cruel

作者: 森の人

背中の鞄の重さを感じながら歩く。


捨ててしまいたい。


でも捨てたくない。


唯一の餞別だから。


唯一の贈り物だから。


唯一の…形見のようなものだから。


あの人は私のことをcruelと呼んだ。


コードネームみたいなものだ。


最初は嬉しかった。


言葉の意味を知らなかったから。


響きが綺麗だったから。


だから嬉しかった。


意味を知った時、私は落ち込んだ。


変えて欲しいと抗議もした。


でもあの人は変えなかった。


それは背中のコレをもらった日だったのに。


私が旅立つ日だったのに。


別れを惜しんでではなく、泣いた。


あの人は別れが寂しくなくてよかったじゃないかと笑った。


それを見てまた泣いた。


つい最近、再会した。


私は自分のことを話した。


撃つ瞬間に指が震えることも、未だに慣れないことも。


するとあの人はやっぱり君はcruelだと言った。


笑ってなかった。


どうしてと聞いた。


むしろ逆だろうと抗議した。


あの人は言った。


それは標的を…相手を人と見てないからだと。


だから君は残酷だと。


意味がわからなかった。


どうしてとまた聞いた。


あの人は教えてくれた。


人として見ているから心が壊れるのだと。


それが人を殺すだけの機械(キラーマシン)なのだと。


でも君は違う。


人として見ていないから慣れない。


動物を殺すのを躊躇うのと変わらない。


よく言えば公平、悪く言えば…。


私は納得がいかなかった。


…でも何も言えなかった。


あの人が笑っていなかったから。


あの人が悲しそうな顔をしていたから。


結局私はcruelのままだ。


他人に対しても。


……自分に対しても。

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