No. 8 超展開
今回、ちょっと雑かもです。
そして時は動きだす。
戻ったのはいいが、唐突すぎて反応しづらい。
そしてキメラが突っ込んでくる。
「よっと」
スピカと一緒に避ける。
「スピカ、少し時間稼ぎを頼む」
「いきなりだね!」
「さっき出来るって言ってただろ?安定しろ、オレが詠唱する程度の時間だから」
サッサとリオンを呼び出して何とかしてもらおう。
そして、この森を抜ける。
「わかったよ。でも、本当に少ししか出来ないからね」
スピカは、杖(と、思わしきモノ)を構える。
しかし、オレから頼んどいて何だが、どうやって時間を稼ぐんだろうか?
「じゃあ、いくよ!」
スピカがそう言った瞬間、スピカの杖から大きな音が流れてくる。
「これがわたしの幻奏術だよ!」
なるほど、スピカのスキルか。
どうやら、音を作り出す魔術のようだ。
だが、スピカよ、言わせてもらおうか。
「な ん で デ ス メ タ な ん だ よ ! !」
スピカの杖から流れてきたのは、まごうことなくデスメタル。
しかも、メッチャ音デカイ。
てか、近くの木が揺れてる。
ああ、キメラさんが耳を抑えて苦しんでる。
時間を稼ぐどころかダメージ与えてるぞ。
ついでにオレの耳にもダメージが……。
味方に攻撃すんなよ!
なかなかに辛いが今のうちに頑張って詠唱しよう。
リオンが送ってくれた詠唱を口にする。
「『次元の扉よ今開け!我がもとに集いてチカラを貸せ!』」
……死にたい。
何だこれは。
てか、次元の扉って……。
また、つまらぬ黒歴史を量産してしまった。
死んだ魚の目になりながら唱えきると、オレの前に魔法陣が出現する。
魔法陣は、2、3度光り、その中心から、さっき会った白銀の美少女が現れた。
……何故か、ぶっ倒れた姿で。
「……」
何ともいえない空気が漂う。
スピカのデスメタはいつの間にか終わっており、こちらを気まずそうに見ている。
空気を読んだのか、キメラもこちらの様子を伺っている。
とりあえず、オレはこの重い空気の中、勇気を出してリオンに問いかける。
「……何やってんの、お前」
リオンは、フッ、と不敵な笑みを浮かべてこう言った。
「実は毎度のことながら、図書館から離れると存在が人間に戻ることを忘れていてね」
「それで?」
「人間に戻るとまず、腹が減るのだ。今回はまだマシな方だがな」
森に腹の鳴る音が木霊する。
……図書館で話した時のお前は何処に行ったんだよ。
脳内に残念美人という単語が出現する。
リオンは、図書館で会った時と違い、背中の翼が無くなっていた。
これが人間に戻るということか?
「まぁ、安心しろ。この状態でもあのキメラ程度瞬殺出来る」
全く安心できねぇ。
こいつ、何しに来たんだよ。
「えっと、シュウヤ?その娘誰?そもそも、何をしたの?」
「……オレにもわからん」
やっと再起動したスピカの質問に答えられず、目を背けるオレ。
何なのだコレは!
一体どうすればいいのだ!
「やれやれ、まずはキメラを倒すか」
空気を読む気が無いのか、リオンはノソノソと立ち上がって、キメラに右手を向ける。
その行動に、フリーズしてたキメラが動き出した。
が。
「燃えろ」
何処からか取り出した本を手に持ち、リオンがそれだけをつぶやく。
それだけで、キメラの全身が発火した。
「GAAAAAAAaaaaaaaaaaa!!!!」
断末魔の悲鳴をあげ、キメラが灰へと変わる。
宣言通り、瞬殺だった。
強いとか、そういうレベルじゃない。
「え、何?」
その証拠にスピカが状況を理解出来ずに ポカンとしてる。
いや、気持ちはわかる。
オレもよくわからん。
何だこの超展開は。
話しについていけない……。
「終わったぞ。私は早くこんなジメジメした場所から去りたいのだが」
何処かに本を仕舞ったリオンがそう言ってくる。
「あ、ああ、そうだな。ちょっと待ってくれ」
オレはスピカに駆け寄る。
「ほっとけばいいのに」
リオンの拗ねたようなつぶやきは聞かなかったことにする。
「スピカ、大丈夫か?」
肩に手を当て、揺さぶる。
しばらくして、スピカが現実に戻った。
「な、何!?何が起きたの!?説明!説明をプリーズ!?」
謎怪力によって揺さぶられる。
何かデジャブ!
オレは、スピカが落ち着くまでそのまま揺さぶられた。
おい、助けろよリオン。
・幻奏術
奏者限定スキル。幻の音を作り出せる。音には、特殊効果を付けることができる。作り出せる音は基本制限が無いため、一人でオーケストラとか出来る。