No. 2 ステータス
オレは疲れて変な夢でも見ているのだろうか?
だが、生憎と部活もアルバイトもしてないオレには疲れるようなことがない。
そして、夢にしてはリアルすぎる。
と、なると……。
「ゲームの世界、それか異世界にでも来たのか」
暫定的にそう結論付けることにする。
「……ハァ」
最悪である。
ラノベなんかで異世界行って喜ぶ連中がいるが、現実でそんな場面に遭遇したら鬱になるだけだ。
特に運動不足なゲーマー様が異世界に行ったところで何ができると?
普通に考えて何も出来ずに即死するだけである。
「そんなにヒドいステータスだったの?」
スピカは、オレが溜息をついた理由を上手い具合に勘違いしてくれたらしい。
「いや、正直基準がわからないんだが、これってどうなんだ?強いのか?」
そう言って、オレはスピカにステータスカードを差し出す。
「えっと、ね。ステータスは、レベル1なら少し高いほうかな?魔力はかなり高いね。クラスは……召喚士、か。で、スキルは……アレ?」
「どうかしたのか?」
「うーん、ちょっと、なんていうかね?わたしの友達に召喚士の娘がいるからちょっとだけ知ってるんだけど、強化召喚なんて初めて聞いたかなって」
つまり、謎の召喚術があったのか。
「まぁ、多分固有スキルだと思うけどね!固有スキル持ちは珍しいよ!」
つまり、オレはレアなのか。
「武装召喚の方は?」
「そっちは聞いたことあるよ。スキル名の通り、武装を召喚できるんだよ」
……まんまやん。
「他はあまり詳しくないけど、便利そうなスキル構成だね」
「ちなみにキミはどんな感じのステータスなんだ?」
「あ、そうだね。わたしだけ見るのは不公平だね」
そう言ってスピカはステータスカードを見せてくれた。
[ スピカ・デルタ・フォルティシモ ]
LV. 9
Class:奏者
HP:245/245
MP:220/220
ATK:55
DEF:24
MAT:97
MDE:61
STR:19
VIT:36
SPD:103
保有スキル
・幻奏術 LV. 4
・風魔術 LV. 2
・指揮 LV. 3
・絶対音感 LV. 3
・棒術 LV. 2
・体力回復+ LV. 1
……?
「……奏者ってクラスなのか?」
「あはは、良く言われるけど、一応クラスだよ。まぁ、わたしのステータスは少し特殊っていうか、ほとんど遺伝だから」
なるほど、つまりこいつもレアか。
てか、ステータス……。
レベルも関係してるだろうが、オレより普通に高い。
特にSPD……。
奏者とは戦闘職だったのか!
内心でアホなことを考えながら、ステータスカードをスピカに返す。
「それで、なんでキミはこんなとこにいたんだ?」
ついでと言っては何だが聞いてみる。
「ギルドの依頼を済ませた帰りだよ」
「ギルド?」
「うん、ギルド。あ、ギルドっていうのは、えっと冒険者に依頼とか出すところだよ」
「なるほど……」
思った通りの組織なんだな。
「それよりキミ……あ、シュウヤって呼んでいい?」
「いいよ、オレもスピカって呼ぶから」
「ありがと。それで、シュウヤはこれからどうするの?」
どうする、か。
うーん、そうだな。
「とりあえず、この世k……この近くの国の常識を学びたい。それと、召喚術について聞きたいかな」
「それなら、ひとまずわたしの家に来る?見たとこお金も持ってないみたいだから宿にも止まれないでしょ?」
「それはありがたいけど……いいのか?家の人とかに相談しなくて」
というか、無防備過ぎないか?
一応男だぞ、オレ。
「大丈夫だと思うよ。でも、しばらく執事みたいなことはさせられるかも」
もしかしてこの娘、貴族か?
でも、執事か。
まぁ、それくらいなら問題無いはずだ。
「それならよろしく頼む」
「こちらこそね」
とりあえず、安全性は確立できた……はずだ。
ある程度この世界のことを知れたら冒険者にでもなるのもいいかもしれない。
「それで、目的地までどれくらいかかるんだ?」
「今は中間地点だから、ここから5時間くらい歩けばつくよ」
……街につく前に、オレの貧弱な足腰が天に召されるかもしれん。
・召喚士
Classの一つ。別段、珍しいわけではないが、魔力消費が激しいことなどの理由で召喚士としてのLVを上げる人は少ないため、使い手はほとんどいない。あらかじめ使える召喚術は決まっており、呼び出せるモノも人によって変わるので、格差が出やすいClassでもある。
・奏者
Classの一つ。ただし、奏者は二種類あり、音楽家と戦闘職とでかなり異なる。戦闘職の方はかなり希少なClass。ちなみにスピカは戦闘職。