表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鎮魂歌  作者: enforcer
1/125

1

 肉と布、鉄とプラスチックが、グジャッと言う音を、辺りに奏でる。

 

 偶々、人が車にハネられ、死んだ。

 ただ、その車にハネられた人間が、わざわざ死ぬのを待っていたかと言えば、そうではない。 


 目線に合わせ、カメラを構え、自己を撮り、それをネットワークに映す。

 

 記録に残し、それを自分で眺めて楽しむという、過度のナルシシズムと言うわけではないが、反面、せめて自分を他人に認知して欲しいという願望を、容易にし、他人に自己を表すパフォーマンスとしては、実に容易く、素晴らしい文明の利器と呼べるだろう。

 

 そして、彼をハネてしまった車の持ち主はと言うと、突然現れたカメラを持った人物が、窓ガラスに罅を入れながら、車の後ろへと飛んでいくのを、思わず、見てしまっていた。

 

 カメラに集中していた故、偶々信号をみていなかった人。

 

 信号が青だから、歩行者は出てこないと高を括っていた運転手。

 

 ともあれ、人がいつ死ぬのか、それを人が知る由も無い。

 道路に転がる人だったモノが、遠くから聞こえるサイレンに気づくことも、その虚ろな目が、運転手の気まずそうな顔を見ることも、二度となかった。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ