委員かい?
キーンコーンカーンコーン…
いつもの通りに遥と登校し、朝練に行く遥を見送ってから
教室に入り、つい眠り込んでしまっていた俺は
HR開始のベルで目を覚ました。
「えー、今日は文化祭企画委員を選出する。
ウチのクラスだけまだ決まっていないので、この時間中に決めてしまおう」
担任浅井先生がそんな事を言っているのをぼーっと聞く。
あれ、こないだ決めてなかったっけ…?
「まずは一応、我こそは、という自推者を募集するが、どうだ?」
しーーーん…
まあ、そりゃ誰も居ないだろうな。
文化祭企画委員って、結構遅くまで残って準備したり
他校と連絡取ってお互いに協力したりして大変みたいだしな…
まあ、唯一魅力的なのは、ウチの学校と姉妹校である
名門女子高、西園学園高校とコミュニケーション図る時に
あっちのお嬢様達とお知り合いになれるチャンスが有るって事だが、
今まで長い歴史でコンタクトに成功したのは僅か数人って噂だしな。
なんつっても、噂では親の年収が一千万超なのと偏差値がウチの倍近くないと
入学できない超名門お嬢様校だからな…
まるで誰かに解説するかの様な思考回路でほけっと外を眺めながら
今週末の亜由美の件を考え出した俺は、先生と司会進行を交代した委員長の
「では、**君でいいと思う人は手を挙げて下さい」
という声に何も考えずに挙手していた。
「それでは、満場一致により当クラスの文化祭企画委員はショウくんに決定しました!」
パチパチパチパチ…
俺も一緒になって拍手しながら、なにか違和感を覚える。
…あれ?
「それではショウ君、前に出てきて抱負を一言語って下さい!」
委員長の分厚いメガネがキラっと光り、俺を見詰める。
…って、をい!?
「はあぁ!?なんで俺が!?」
がたーんと立ち上がり、思いっきり叫んだ俺に教室中が大爆笑に包まれた。
「ぎゃははははは!!なに言ってんだよショウ!お前自分で手ぇ挙げてたジャンか!!」
前の席の神谷が半分泣きながら爆笑している。
「しかも、拍手までしてただろ!!」
二つ隣の小池も大笑いだ。
おいおいおいおいおいおいおいおいぃっ!!
「ちょっと待ってクダサーイ!!
俺聞いてなかったんだ!無罪だ!不可能だ!
再選挙を要求する!!」
十分後、俺は委員長から渡された「文化祭企画委員会議スケジュール」表を
呆然と見詰めながら途方に暮れていた。
そういや、亜由美も企画委員になったって言ってたな…
いろんな意味で気まずいじゃないか、おい…
すでに今日の放課後から委員会出席かよ…
バイトにはなんとか間に合いそうだけど…
ちくしょう、頭痛ぇよマジで。
昼休み、遥と亜由美のクラスに行き、ドアから覗き込むと直ぐに亜由美が俺に気付いた。
一緒に弁当を食べている子にちょっとまっててね、と言ってこちらに掛けて来る。
「ショウくん!どうしたの?
遥ちゃんはちょっと出てるけど」
嬉しそうに微笑みながら俺を見詰める亜由美。
遥、居ないのか。どうしたんだ?
まあ、とりあえず話を進めておくか…
「ああ、お前文化祭企画委員だったよな?
実は、俺も企画委員にされちまってさあ…」
俺の言葉に亜由美が嬉しそうにパン!と手を打った。
「え!ホント!やったあ!一緒に仕事できるね!」
本当に嬉しそうに微笑む亜由美に、今週末の事を言い出すのが辛くなる。
だが、しない訳にはいかない!
俺は自分に気合いを入れ直して話を続けた。
「ああ、よろしくな。
後、今週末、お前の家にお邪魔したいんだけど…」
「え?どうしたの?もちろん、私は大丈夫だけど、一応まどかさんとパパに聞いてみるね!」
少し戸惑ったようだが、嬉しそうに答える。
遥も一緒に行くって事、言わない方が良いのかな…
俺が一瞬迷った時、うしろからドン!と勢い良く背中を叩かれた。
「どうしたのショウ?何か有ったの?」
元気な声に振り向くと、にぱっとアヒル口で笑った遥が立っていた。
これは、グッドチャンスだな。遥なら上手く合わせてくれるだろ。
「ああ、今週の土曜の夜、亜由美の家にお邪魔しようかと思って頼んでたんだ。
お前も一緒にどうだ?」
…ちょっとワザとらしいかな…
「え!そうね、まどかさんやおじさんにもしばらく会ってないしね!
ね、亜由美、良いかしら?」
上手く合わせてくれる遥だが、ちょっと無理矢理な感は否めないな…
「え、ええ。大丈夫だと思うわ。今日、まどかさんに聞いて見るね」
なんとなく不思議そうな顔をする亜由美。
「お、ヤベ、昼休み終っちまうな。じゃあ、また放課後委員会で会おうな!」
俺はわざとらしく時計を確認して逃げる様に走り出す。
ふと見ると遥が苦笑しながらウインクしている。
よし、フォローは任せたぜ遥!
俺も不器用にウインクして、急いで教室へと戻リ始めた。