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決心?

バイトが終わり、部屋に帰ると明かりが点いている。

「ただいま」

俺がカギを開けようとすると中から遥が飛び出てきた。

「おかえり、ショウ!」

大きな瞳を輝かせながら俺に抱きつく遥。

俺は遥を抱きしめながら部屋に入り、後ろ手で急いでドアを閉めた。

「ショウ。ん〜」

可愛い唇を突き出す遥。

俺はちゅっと軽くキスをする。

「もっと熱いのちょうだいよぉ…」

ほほをぷうっと膨らませ、アヒル口で拗ねた様に言う遥。

俺は苦笑してから、再び遥の唇に口付けた。


コンコン


「!」

「ぃゃ!」

五分ほどもキスをしたままになっていた俺たちは飛び上がるほど驚いた。

なんか、つい最近同じパターンやった様な気がするが…。

遥がそそくさと置くの奥の部屋に入っていく。

「はい、どちら様ですか?」

俺の声に、意外な人の声が答えた。

「こんばんは、ショウくん。まどかです。」

「まどかさん!?」

俺がドアを開けると、そこには亜由美の親父さんの再婚相手である

綺麗なおねえさんが微笑みながら立っていた。


「ごめんなさいね、こんな時間に…」

まどかさんが申し訳なさそうに言う。

「ご、ご無沙汰してます。亜由美も一緒ですか?」

まどかさんが微笑む。

「いいえ、私一人よ。亜由美は今日はもう寝てるわ。

 旦那が付いて来たがったけど、置いてきたの。

 遥ちゃんが来ているのにごめんなさいね。

 ちょっとお話したいんだけど、良いかしら?」


バレてれら…


奥の部屋から遥がバツ悪そうに顔を出して挨拶する。

「こんばんは、まどかさん」

「こんばんは、遥ちゃん。いつも亜由美がお世話になってます」

丁寧に挨拶して頭を下げるまどかさん。

「じゃああたし、一度帰ります」

「あ、良いのよ。いえ、むしろ遥ちゃんにも聞いてもらいたいの」

「「え…?」」

遥と俺は思わずハモってしまった。


まどかさんに上がってもらい、遥がお茶をいれる。

「ごめんなさいね、お構いなく」

まどかさんが持って来てくれたお菓子をお茶請けに出す。

「で、お話っていうのはなんでしょうか?」

俺は隣に遥が座り、お茶を啜るのを横目で見ながら聞いた。

「ええ、亜由美の事なんだけど…」


亜由美は最近、明るかったり落ち込んだりの波が激しいそうで、

まどかさんも親父さんも心配しているとの事だ。

まどかさんと亜由美は今ではなんでも話せる間柄になったそうで、

先日見兼ねたまどかさんが亜由美と真剣に話をした所、

とうとう悩みを告白してくれたと。

そしてその悩みというのは、やはり俺との事だったそうだ。


「亜由美は、ショウくんと遥ちゃんがお付き合いを始めた事には

 かなり前から気付いているの。だけど、ショウくんも遥ちゃんも、

 亜由美にとっては大切な人だから…」

俺たちは何と言っていいか解らず、黙ってしまった。

「ごめんなさいね、こんな話をしてしまって…

 でも、あなた達は亜由美の事を気にして、

 遠慮したお付き合いをしようとなんて思わないでほしいの。

 そんなの、あなた達にも亜由美にも不幸な事だから。

 私がショウくんにお願いしたい事っていうのは、

 あなた達がお付合いしている事を亜由美にハッキリと伝えて欲しい、

 と言う事なの」

「ええっ!?」

遥が驚きの声を上げる。

「でも、それじゃあ…」

俺も驚き、戸惑い勝ちに声を出す。

それじゃあ…なんて言えば良いのだろう…

「そうね、亜由美はとても傷付き、悲しむでしょう。

 でも、そこからあの子が立ち上がれれば、それは素敵な事よ。

 あなた達は堂々と幸せにして欲しいの。

 フォローは、母である私に任せて」

まどかさんが素敵な微笑を見せる。

「本当にごめんなさい。

 きっと、ショウくんには亜由美以上に辛い想いをさせてしまうわ…

 でも、貴方は男の子なんだから、頑張って欲しいの!」

まどかさんが真摯な瞳で俺を見詰める。

遥が、俺に手を伸ばしてぎゅっと手を握り締めた。

はっと見ると、遥が俺を涙の滲んだ瞳でじっと見詰めている。


「…解りました。

 じゃあ、今週末に俺が亜由美にちゃんと話します」

俺は肝を決めてまどかさんに言った。

「ありがとう、ショウくん。

 で、亜由美がその後どんな行動に出るか読めないから、

 出来れば家に来て、そこで話して欲しいの。

 そうすれば直ぐに私がフォロー出来るし…」

うん、確かに…最近はほとんど付き合いは無いみたいだが、

亜由美にはちょっと不良っぽい悪友も居たから、

もしショックを受けた亜由美がヤケになって彼らと遊びにでも出たら

何が起こるか解らないってのも有るし。

俺はまどかさんのお願いを承諾した。


「ね、まどかさん。あたしも行っていいですか?」

突然の遥の言葉に驚く俺とまどかさん。

「でも、遥ちゃんまで辛い想いを…」

戸惑いながら答えるまどかさんをしっかりと見詰め返す。

「あたしだって亜由美の友達です。

 あたしだけ逃げるなんてダメだもの!」

遥が微笑みながらハッキリと言った。

「…ありがとう、遥ちゃん。

 じゃあ、お願いするわ!週末の晩御飯はウチで食べて。

 あと、旦那には私が話しておくから心配しないで。

 旦那もショウくんの事を気に入ってるから、とても残念がると思うけど」

まどかさんが色っぽくウインクする。

ほけっと見とれた俺の腿を遥がぎゅっとつねった。

「…!」

声にならない叫びを上げて遥を見ると、三白眼になり俺を睨んでる。

「うふふ、仲が良いのね!」

まどかさんが楽しげに笑う。

「じゃあ、そろそろお暇するわ。ごめんなさいね遅くまで」

俺たちはまどかさんを空き地に停めた車まで送る。

まどかさんの車は、ミニ・メイフェアだった。

「わあ!ミニクーパー!」

遥が目を輝かす。

クーパーじゃないんだが、まあ女の子に説明しても解らないか…

「もう十年近く乗ってるの。ポンコツだけど馴染んじゃってね」

バルン!と独特の音を響かせ掛かるエンジン。

「じゃあ、週末にね。お待ちしてます」


まどかさんはぱふ、と可愛いホーンの音を残して帰っていった。



 

 

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