尋問
こんにちは、作者です。
大変お待たせしてしまいましたが更新再開させて頂きます。
まだ短期的で迅速な更新を行う事は難しいと思いますが、出来るだけ頻繁に更新出来る様に努力して行きます。
頂いた評価や感想への返信もまだ残っておりますが、少しずつお返しして行きますのでお時間を頂ければと思います。
それでは、どうぞお楽しみ下さい!
2009.9.3 羽沢 将吾
「さて、と……ショウ、今回の件なんだが」
俺のベッドの横の椅子に腰掛け、いつもとは違う真面目な顔で由香里先生が口を開く。
「ちょっと前に同じ様な事をした様な気が……デジャヴを感じるが、まあそれは置いといて、だ」
そう言えば、亜由美のオヤジさんにマグライトで殴られて入院してから
そんなに月日が経ってるワケじゃ無いのに、またしても同じ様な状態で病院に運ばれたんだよな、俺は。
「今回もキミは結構な重傷だ。
頚椎捻挫に全身打撲、脳には異常無かったとは言え、前回の挫傷から間もない状態だから
ヤバイと言えばヤバかったんだが……学校の屋上でぶっ倒れる前に一体何をしでかしたんだ?
医者が驚いていたぞ。制服を脱がしてみたら全身青アザに傷まみれだったとな」
俺は由香里先生の鋭い視線から目を逸らしながら、バイクで転倒した事を正直に言うべきか迷っていた。
今現在、病室内には俺と由香里先生の他には遥のお母さんが居て、やはり厳しい目で俺を睨んでいる。
遥や亜由美は学校で授業中、俺の担任の浅井先生は文化祭手前と言う事もあり忙しく、
保険医の由香里先生に俺の事は任せているらしい。
どうするかな……そりゃ正直に言った方が良いだろうが、バイクでコケた事を学校やおばさんに知られると
ヘタすれば免許を取り上げられてバイクに乗れなくなる可能性も有る。
そうなるとバイトにも影響が出るし、なによりもバイクに乗れない生活なんて考えられない。
よし、仕方ない!
「実は、ちょっとケンカをしまして……ボコボコにやられちまったんですよ」
俺は咄嗟に脳裏に浮かんだ言い訳を深く考えずに口に出した。
「何だって?一体どこの誰と?」
と、途端に厳しさを増した表情の由香里先生がぐい、と俺に詰め寄って声を上げる。
「い、いえ、どこの誰かは解らないんですが、ちょっと因縁を付けられまして」
予想以上に厳しい由香里先生の態度に少々ビビりながら、しどろもどろに返すと
「まさか、ウチの生徒じゃあるまいな?」
すうっと瞳を細めた由香里先生が俺の肩に手を掛けながら聞いて来た。
「い、いいえ!絶対に違います!」
由香里先生の迫力に飲まれながら、首をぶんぶかと振る俺……って!
「いってぇ!……くくぅ〜」
傷めた首を思いっきり振ってしまい、イヤ〜な感じの痛みに苦鳴を上げて突っ伏すと
「バカモノ!自分で自分を傷め付けるんじゃない!」
俺の頭をぐい、と掴んだ由香里先生の叫びが鼓膜を打った。
ふにゅ
「ひゃ、ひゃい……って」
今のやーらかい感触は……?
ギリギリとした首の痛みがようやく収まって来て、強く閉じた目を開けるとなにやら薄暗い。
それに、なんだか良い匂いと気持ち良い柔らかさに頭が包まれているんだが……
「あれ……?」
俺が状況を掴めずに間抜け声を上げると同時に、やーらかな感触から頭が解放され
「全く……もう少し落ち着きたまえよ、キミは」
優しげな声と共に、由香里先生の心配そうな顔が現れた。
もしかして、今のふにゅふにゅしたやーらかい感触は……?
「む、その顔なら大丈夫だな?では尋問を再開しよう」
俺の顔を見た由香里先生が一瞬苦笑し、すぐに先ほどと同じ真面目な表情になる。
もしかして俺、今物凄くだらしない顔してたんじゃないのか……?
思わず赤面する俺に向かい、由香里先生が再び厳しい声で質問を始めた。
「ショウ、キミはさっきケンカをしてボコボコにされた、と言ったな?
それにしてはおかしい点が幾つかある。ひとつはキミの怪我の様子だ。
ボコボコにされたにしては、顔がキレイ過ぎる。
例えキミが上手く避けたにしろ、体の怪我の酷さに比して顔に全く怪我が無いってのはおかしいだろう」
うぐっ!!
さすが由香里先生、鋭いぜ……。
だけど、これは万が一怪我を誰かに知られた時の為に言い訳を考えてある。
「あ、ああそれはですね、自分がバイクから降りてすぐに因縁付けられたので、
ヘルメットを被ったままだったんですよ。突然だったから脱ぐヒマも無かったし、
被ってる方がダメージも少ないだろうと思いまして」
俺の額に流れる冷や汗をタオルで拭いつつ、微妙に視線をずらして答える俺。
「ふむ……あと、怪我の状況がケンカや殴り合いで付くモノとは違っているようだが……
殴り合いで擦過傷が付くとは思えんのだがね?」
はうっ!!
ぐ、ぐぐ……これは、なんと答えるべきか……擦過傷、擦過傷……
そうだ!
「え、えーとですね、喧嘩した所が堤防で、殴られた拍子に土手から転がり落ちたんですよ!
コンクリートの土手だったから、そこで結構派手に滑っちまって……」
俺は、小学生の頃に遥達と土手で遊んでいて転がり落ちた時にあちこち擦り剥いたのを思い出して咄嗟に取り繕った。
うん、別におかしくは無い……よな?
転んで壊れたDTはバイト先に置かせてもらってあるし、バレるワケは無い……ハズだ。
「……なにやらムリが有る様な気もするが、まあ良い。
そのケンカの相手とやらの事は覚えているか?キミの言う事が本当なら、これは傷害事件だ。
警察に届ける事も考慮しなければならんな」
「はあっ!?」
け、警察ぅっ!?ジョーダンじゃない!
流石に焦った俺が絶句すると同時に、
「先生、ちょっと宜しいですか?」
と、おばさん……遥のお母さんが壁から体を離して、こちらに近寄りながら声を上げた。