決意
こんにちは、作者です。
長らく更新をお待たせしてしまい、申し訳有りませんでした。
出来る限り頻繁な更新を心掛けたいのですが、まだ生活上のドタバタが片付かずご迷惑をお掛けしております。
どうか暖かく見守って下さいます様お願い致します。
さて、皆様にお知らせです。
昨年度開催されました「春エロス2008」への自分の参加作品、
「アンダーエイジ・シスター」の続編
「アンダーエイジ・シスターII フラクタル・マインド」
を中篇作品として連載開始致しました。
この作品は、本年度も春エロス企画が開催されたら投稿しようと暖めていた作品ですが、ご一読頂ければ幸いです。
URLは、
http://ncode.syosetu.com/n9636g/
となります。
それでは、これからもどうぞよろしくお願い致します。
2009/5/26 羽沢 将吾
「ごめんな、遥……」
俺は、泣きじゃくる遥の髪を撫ぜてやりながら心の底から詫びる。
あの時、いくら疲れて気が立ってたとはいえ、こんなに俺の事を想ってくれる最愛の遥に何て酷い態度を取っちまったんだ……
俺は自分の器の小ささに唇を噛みながら、ひたすら遥の髪を撫ぜ続けた。
「んっく、ひっく……ごめんね、怪我してるのに。
あのね、ショウ、あたし……あたしね、考えたの。
このままじゃ、あたしはショウを悩ませて負担を掛けるばかりになっちゃう。
それに、こんなあたし、あたしらしくなくて、自分で自分が嫌いになりそう……」
「え……?」
少し落ち着いてきた遥が、抱きついていた俺から離れながら掠れた声で発した言葉を聞いた俺は、
急速に広がる嫌な胸騒ぎを感じて視線を遥の愛らしい顔に張り付かせる。
「あのね、あのね……あたしはショウが大好きだけど……
でもね、ショウの事ばかり考えて、ショウといつも一緒に居たくて、
ショウがあたし以外の娘と一緒に居たりすると胸が苦しくて、泣きたくなっちゃって……
香奈や沙里に八つ当たりしたり、部活の後輩にキツくあたっちゃったり……」
遥の大きな瞳から、ボロボロと涙が零れ落ちるのを、俺はどうする事も出来ずに見詰めている。
ちがうんだ!遥、そうじゃない!
俺が悪いんだ。お前が一番大切なのに、嫌われたくないとか、良い顔をしていたいとか、
そんな損得勘定みたいなもので動いてお前を悲しませている俺が全部悪いんだよ!
最愛の少女が零す涙を止めようと俺の思考回路が様々な文章を羅列する、が、
肝心の口が、舌が全く動かず言葉として発することが出来ない。
これでは、このままでは遥の口から最終的に紡ぎ出されるのは……
「ショウ、ひぐ、もう、こんなの、イヤだよぅ……
こんなあたしも、こんな関係ももうヤぁ……」
遥の顔が涙でグシャグシャになっている。
あの涙を、遥の悲しみと苦しみを止めなきゃ!
「遥、遥……」
だが、俺の口は最愛の少女の名前を二度発しただけで、それ以上の言葉が出て来ない!
なんでだ、なんでなんだ!!
くそっ!どうしたんだ俺!なんで口が動かないんだ!!
「遥!あのな、俺は」
よし、なんとか言葉を絞り出せる、が・・・・・・
そのまま遥を慰め、謝ろうとした俺だったが、俺の口からはやはりそれ以上の言葉が出て来ない。
少しだけ、俺の言葉を待つ雰囲気を感じさせた遥だったが、俺の口から言葉が
出てこないのを確認した後、ぶわ、と大粒の涙を更に溢れさせながら
「別れ……よ……」
と呟き掛けて、
「っ……ふ、ふえぇぇぇぇん……」
真っ赤に泣き腫らした顔を両手で覆って、すすり泣き出してしまった。
「ひぃーん……えーーん……」
まるで小さな子供の様に、肩を落として泣き続ける遥を呆然と見詰めながら、俺の中で爆発的な感情が渦巻く。
誰だ…・・・誰だ!俺の命よりも大切な遥をこんな風に泣かせているのは!
俺の精神が、今までに感じた事の無いほどの怒りを噴出させつつ軋む、が……
これは、この光景は、俺自身が招いた結果なんだ。
ぶっ倒れて病院に運ばれる前、俺は一体何をしていた?
遥とケンカした直後だってのに、呑気に亜由美の弁当を食わせてもらってたじゃないか!
週末には、亜由美にハッキリと俺と遥は付き合っていると言う積りだってのに……
亜由美が作って来てくれた弁当が勿体無いとか、そんなのは言い訳だ!
俺が、俺自身が……
俺は泣きじゃくる遥を見詰めながら、何一つ言葉を発せられずに呆然としている。
今、俺が何を言っても説得力も何も無い事だけは自覚できているから……
だが、このまま遥を泣かせておいて良いワケはない。
俺は、瞳を閉じて少し考えた後、遥の肩にそっと手を置きながら慎重に言葉を絞り出した。
「遥、お前をこんなに苦しめて……悲しませちまってすまない。
今、俺はお前を抱き締めて、心の底から謝りたい。
そしてこれからはお前以外の誰ともイチャついたりしないって誓いたい。
でも、そんなの説得力ゼロだよな……俺の今までの行動をみてれば。
だけど、一つだけ約束する。退院したら全てにケリをつける。
それから、もう一度お前に謝って、誓うよ。
お前だけを愛する、ってな……だから今は抱き締めない。キスもしない。
だから、もう一度チャンスをくれ。頼む……」
途中から声が擦れ、涙と鼻水がボロボロと溢れて来ているのを感じたが拭うこともせず、俺は遥に向って言い切った。
遥の華奢な体をぎゅっと抱き締め、零れている涙を拭い、愛らしい唇に口付けをしたいと言う
身を焦がすほどの熱い想いもすべて封じ込め、ただ淡々と、遥の肩に置いた掌にその思いを込めた。
「……うん」
と、遥の肩に置いた俺の手に、柔らかく暖かい手を重ねながら、遥が小さく呟いてくれる。
「……待ってて、くれ」
俯いたまま、何も言わずに頷く遥を確認した俺は、天井を見上げてから静かに瞼を閉じた。
明日から始めるべき、様々な事に思いを巡らせながら……