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嘘……

「大丈夫か、亜由美?」

俺が倒れていた自転車を起こしながら亜由美に声を掛けた瞬間、

「……ショウくん……ショウくん!!」

俺の背中にガバッと抱きついた亜由美が、声を押し殺して嗚咽し出した。

「亜由美……」

俺はどうして良いか解らずに、しばらく亜由美の熱い涙が制服越しに染み込んで来るのを感じていたが、

「亜由美、帰ろう」

俺の腹に回された亜由美の細い腕を優しく解いて振り返りながら言った。

「……ショウ、くん……」

亜由美の大きな瞳から、大粒の涙がポロポロと流れ出ている。

俺は無意識に、本当に無意識のその涙をキスで拭ってしまった。

「!あぅ……」

亜由美が小さく叫び、すっと瞳を閉じ、俺の背中に手を廻してぎゅっと抱き付いてくる。

そのまま、亜由美がすっと顔をズラし、いつの間にか俺の唇は亜由美のそれに重なっていた……

どれ位そのまま唇を重ねていただろうか、ガヤガヤと公園の出口に向って来るヤツらの気配に

我に返った俺達は、茂みの中に身を隠した。


「なによあんたら!たった一人に蹴散らされちゃって!情け無い!」

この声は、さっき俺に罵声を投げた茶髪の娘だな……

「そ、そんな事言ったってよ、アイツマジ強かったぜ」

「ああ、そう言えば亜由美が空手二段とか言ってたよな」

亜由美を背中に隠して、そっと様子を伺うと、亜由美を引っ叩いた秀雄ってヤツは

まだ気を失ったままらしく、男の一人が背負っている。

「なあ、高梨さんになんて言おうか……秀雄のヤツが今日、亜由美を紹介するって言っちまったんだろ?」

俺は、さっき秀雄ってヤツが言った言葉を思い出す。

高梨、ってのはこの辺りで有名な暴走族……カイザーの相談役だって言ってたな。

「そのまま言うしか無ぇだろ。亜由美の彼氏に邪魔された、ってな」

「そうだな、そうすれば俺たちは責められないだろ。秀雄もこの体たらくだし」

「なんにしろ、もう時間無ぇからこのまま行こうぜ」

チンピラどもが去ったのを確認した俺は、亜由美を自転車の後ろに乗せて亜由美の家へと走り出す。

「ショウくん……大好き」

自転車を漕ぐ俺の背中に顔を押し当てた亜由美が小さく呟くのを感じながら、俺は無心にペダルを漕いだ。

数分ほど一心不乱に自転車を漕ぎ、亜由美の家が見えてきた所で

プップー!

と、後ろから来た車に突然クラクションを鳴らされ

「うおっ!!」

驚いて振り向くと、コロッとした可愛らしいシルエットの車がスピードを落として近付いて来る。

「こら!自転車の二人乗りはいけないんだぞ!」

コロコロした可愛らしいシルエットの、ローバーミニ・メイフェアの窓から乗り出して

微笑みながら声を掛けて来たのは、亜由美の現在のお義母(かあ)さんである、まどかさんだった。

「「まどかさん!」」

俺と亜由美が声をハモらせながら叫んだ時、

「私もいるけれどな。二人とも、何か無かったか?」

と言いながら助手席からぬっと顔を出したのは……

「「由香里先生!」」

亜由美や遥のクラスの担任、由香里先生だ。

「とりあえず、ウチに行きましょ」

まどかさんがウインクしながらミニ・メイフェアを加速させ、俺はその後に続いて亜由美の家へと向った。



「と、言うわけで、ショウが飛び出して行った後に亜由美のお義母さんに連絡し、

 とりあえず学校に来てもらってから私も便乗してキミ達を探してたんだ。

 だが、結局見付けたのは、ついさっきになってしまったがな」

亜由美の家の応接間で、俺と亜由美が並んで座った

ソファとテーブルの前を行ったり来たりしながら

由香里先生が現在までの状況を説明してくれたが、

「で、何が有った?亜由美、キミの頬が腫れているのは叩かれたからだな?

 悪いようにはしないから、正直に話してくれたまえ。

 とりあえず、亜由美のお父さんや遥……若宮さんのお宅には内緒にするから」


とす、とソファに座り、まどかさんが出してくれた紅茶を静かに啜った由香里先生が

優しい調子で諭すように俺と亜由美に言って来る。


どうする、ここは正直に話した方が良いだろうか……

あの様子じゃ、またアイツらが亜由美を待ち伏せないとも限らないしな。

よし、由香里先生とまどかさんになら良いだろう!

「実は、さっき……」

俺が覚悟を決めて正直に話そうとした時。

「さっき、帰り道で中学校の頃に私に片思いしてた男の子が待ち伏せしてて、

 付き合ってくれって言われたんです!私がそれを断ったら、いきなり私の事引っ叩いて……

 その男子はそのまま直ぐにいなくなったけど、私が泣いてたらショウくんが来てくれて、

 それで私を送ってくれたんです」

亜由美がテーブルの下で俺の手をぎゅっと握りながら、俺の話を遮った。

そして、俺に哀願する様な視線を向けつつ、涙を流している。

亜由美……まどかさんに心配掛けたくないんだな……

俺が、自分はどうするべきか、迷いの中に思考回路を落とし掛けた瞬間、

「ふむ、ショウ、そうなのか?」

と由香里先生が俺をひた、と見詰めながら誰何して来た。


くっ……


俺が由香里先生から目を逸らしそうになった時、亜由美の指が俺の指にぎゅっと絡められる。

「……はい、そうです。俺が亜由美を見つけた時には、

 もう亜由美を引っ叩いたヤツはいませんでした」

俺は、迷いまくりながら、由香里先生に向って嘘を吐いてしまった……



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