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トラブル!

「なんとか言えよ、亜由美」

茂みから様子を伺う俺の耳に、荒い声で亜由美を責める声が飛び込んで来る。


……この声は、あの時俺に絡んできたチンピラだな。


「そうよ、最近全然付き合わなくなっちゃってさ。散々付き合ってあげた私達にそういう態度で良いワケ?」

娘の一人も、亜由美を睨みつけながら咎める様に声を荒げる。

「……ごめん。でも、私はもう夜遊びとかしない事にしたの。

 お父さんやまどかさんに心配掛けたくないから……」

「はぁ!?なんだよそりゃ!お前、そのまどかさんってのが気に入らなくて

 グレてやる、って俺たちにグチってたんじゃねぇかよ。

 今更何勝手な事言ってんだ!オヤジやまどかさんってのと仲直りすんのは勝手だけどよ、

 だからって俺たちと付き合えなくなるなんて勝手な事言ってんじゃねーよ!」

チンピラの言葉に、哀しげに俯いてしまう亜由美。

だが、チンピラの言う事にも一理有る、な……

俺は飛び出して行きたい衝動を必死で抑えながら、この場で最善の行動は何か、と必死で考えた。


「とにかく、今日は付き合ってもらうぜ。

 前話したことの有る、高梨さんがお前に会いたいって言ってんだ。

 高梨さんはカイザーの相談役やってる人で、逆らったらどうなるかお前も解ってるんだろ?」

俺の考えが纏まる前に、チンピラが放った言葉に驚いてしまう。

カイザーっていや、この辺で結構有名な暴走族じゃないか。

「……でも!でも、私……」

俯いていた亜由美が顔を上げながら、涙声で何か言おうとしている。

「うるせえ!グダグダ言ってねぇで行くぞ!」

と、チンピラが痺れを切らした様に怒鳴りながら、亜由美の腕を掴んでぐい、と引っ張った。

「きゃあ!痛いよ!」

つんのめる様にしながらよろけた亜由美がバタっと転ぶ。

「おら!わざとらしく転んでんじゃねえよ!さっさと立てよ!」

パンッ!

「あうっ!」

チンピラが癇癪を起こし、へたり込んだ亜由美の頬を引っ叩くのを見た俺の中で何かが弾けた。

「貴様ぁ!」

バッと茂みから飛び出した俺は、まだ亜由美の腕を掴んだままのチンピラに向かって突進する!

「おわ!?」

「だ、誰だ!」

突然現れた俺に驚いたチンピラが亜由美から手を離し、俺の方へ向き直った瞬間。

「せいっ!!」

ガッ!!

「ぎゃあ!」

俺のショルダーアタックがチンピラにヒットし、数メートル程チンピラが吹き飛んでぶっ倒れる。

「ショ、ショウくん!!」

「亜由美、大丈夫か?」

俺は亜由美の腕を取って立たせながら、不良たちを睨み付けた。


「お前!確かあの時の……」

突然現れた俺に驚いていた不良達だったが、一人の男がハッとした様に声を上げた時、

「てめええええ!ブッ殺してやらぁぁ!!」

俺に吹き飛ばされたチンピラが怒号を上げながら飛び掛って来た。

「ショウくん!危ない!」

亜由美が頬に両手を当てながら叫ぶのを聞きつつ、俺は体を後ろに引きながら

チンピラの突進を交わし、勢い余ったチンピラの背中をドン!と押す。

「うわっ!?」

自分の突進の勢いを殺しきれない所に俺の軽い突きを加えられたチンピラは、

そのまま凄まじい勢いで立ち木に激突して

「くぇ」

とか妙な悲鳴を上げて動かなくなった。

「ひ、秀雄!」

娘達の悲鳴と共に、気を失ったチンピラの名前を呼ぶ男の声に、俺もチンピラの名前を思い出す。

「てめえには関係無ぇだろ!」

一人だけ、悲鳴を上げずに俺を睨み付けた茶髪の娘の上げた怒声に

「あるね。俺の大切な亜由美を悲しませるヤツは許せないんだよ!」

俺はダン!と脚を地面に叩きつけながら怒鳴り返した。

「ショウ、くん……」

俺の後ろで亜由美が小さく、すこし涙を含んだ声で呟くのが聞こえたが

「あんた達、アイツをやっちまいなよ!」

と言う娘の声に応えるように三人の男が俺に向かってこようとするのに備え、呼吸を整える。

「おらあっ!」

次の瞬間、三人の男が一斉に俺に向かって飛び掛って来た。

「亜由美、下がってろ!」

俺は叫び様に、真正面の男に向かって飛び掛りながら蹴りを放つ。

「げえっ!」

拳を振り上げていた所にカウンターで俺の蹴りを入れられ、男がもんどりうって倒れるのを

確認してからその右に居る男の鳩尾に向かって自分から倒れ込む様な型で右肘を軽く打ち込む。

「ごはっ!」

狙い違わず俺の肘は男の鳩尾に突き刺さり、ゲロを吐き出しながらへたり込んだ男の後ろに回り込みながら

振り返ると、残ったもう一人は既に戦意喪失した様で、呆気に取られて立ち尽くしている。

「まだやるかい?」

俺は拳を目の高さに構えながら、立ち尽くす男と脅えた様に固まっている娘達に向かって言い放った。

「く……」

さっき、威勢良く俺に罵声を浴びせた茶髪娘が呻き、

「お、覚えてろよてめえ!カイザーの高梨さんを怒らせたらどうなるか思い知らせてやる!」

と再び罵声を張上げる。

だが、俺がそれに反応すること無く

「二度と亜由美に近付くな。もし今度亜由美に絡んだら、タダじゃ置かない」

と言いながら茶髪娘を睨み付けると

「ひ……」

と悲鳴を飲み込んだ娘がヘナヘナと崩れ落ちた。

少しの間を置き、もう誰も向かって来ない事を確認した俺が振り返ると、

涙を流しながら俺を見詰めている亜由美と目が合う。

「行こう、亜由美」

「う……うん」

俺は優しく声を掛けながら震えている亜由美の肩を抱き、公園の外へと歩き出した。




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