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葛藤……?

「それでは、本日の文化祭企画委員会を終了します。

 起立、礼!」

委員長の号令により、長めの委員会が終わると同時に

「ショウ、ちょっと良いか?」

と由香里先生から声が掛かる。

「はい?なんでしょう」

俺と一緒に教室に戻る積りだったらしい岬に先に帰りなよ、と声を掛けてから

俺は由香里先生に導かれるまま職員室へと足を踏み入れた。

「実はな、亜由美の事で話が有るんだ」

「亜由美の事、ですか?」

もしかして今週末の事だろうか……?

不審げな俺の様子に気付いたらしく、由香里先生が

「ああ、週末の事とは関係無い……事も無いかもしれんが」

と、妙に歯切れの悪い感じで話を始めた。


最近、亜由美の様子がおかしいのを気にした由香里先生が

何か有ったのか、と問い質してみた所、まずはやはり俺の事が出て来たそうだ。

だが、由香里先生が気になったのはもう一つ、

かつて亜由美がまどかさんに反発して夜遊びしたりしてちょいとグレ掛かっていた時、

少々ガラの悪い不良連中と付き合っていた事が有ったのだが、

その時の連中が、最近付き合わなくなった亜由美にしつこく絡み始めたと言うのだ……

「なんですって?あの連中が?」

俺の脳裏に、チャラチャラとした遊び人風の男の顔が過る。

あの野郎、なんて名前だったかな……?

「ん?キミもそいつらを知ってるのか?」

俺の顔を見ながら意外そうに聞いてくる由香里先生に、

「ええ、実は……」

俺は以前その中の一人のチンピラに亡くなった家族の事を馬鹿にされたのに腹を立て、

夜の公園であわや殴り合いになりそうになったが、亜由美の必死に制止で事なきを得た事を打ち明けた。

「何ィ?そんな事が有ったのか!」

俺の話を聞き終わった由香里先生の表情が見る見るウチに険しくなって来たのを見て、

俺は余計な事まで喋りすぎた事を後悔した。

「……ショウ、キミの亡くなったオヤジさんが古流武道の師範だったのは知っているし、

 君自身が空手二段、柔道二段、そして当然古流武道のかなりの遣い手だってのも知ってはいる。

 だが、そんな不良相手にケンカなんぞしたら勝っても碌な事にならんのだよ。

 キミの気持ちは良く解るが、以後は軽はずみな行動は謹んでくれ」

「……はい、すみませんでした」

じっと俺の瞳を見詰めながら厳しく叱る由香里先生の言葉に、俺は後悔しながら項垂れてしまう。

「うむ、解ってくれれば良い、が……

 話がズレたが、その連中が亜由美の帰り道で待ち伏せまでしている事があるらしい。

 だから、キミにしばらく亜由美のボディ・ガードを頼もうかと思ったんだがな。

 今の話を聞くと、逆に危ない事になりそうだな……」

くう……なんてこった……あの連中、亜由美に何かしやがったらタダじゃ置かないぜ。

「ショウ!さっきの話、理解してくれているだろうな?

 キミがカッカしたらダメだろうが!」

俺の顔色が変わったのを見て、由香里先生が再び厳しい声で叱咤してくる。だが……!

「だけど、このまま放って置く訳には行きませんよ!

 亜由美は俺の大切な幼馴染です!あんな奴等に傷付けられてたまるもんか!」

俺は、由香里先生の瞳をキッと見詰め返しながら吼えた。

「む……だが、だからと言ってキミが奴等とケンカをするのを許す訳には行かない。

 この件については、なにか対応策が無いか、慎重に考えてみよう」

「そんな悠長な事で良いんですか?

 とにかく、俺は直接亜由美に聞いてみます!」

「待て、ショウ!」

俺は由香里先生の制止を振り切り、急いで自転車置き場に向かって走る。

そして自転車に乗ると、亜由美の家に向かって大急ぎで走り出した。


必死で自転車を漕ぎながら、俺は様々な事を考えた。

そして、最近、遥との甘い毎日に溺れすぎていた自分の情けなさを思い叫び出したい様な衝動に駆られる。

「くそっ!亜由美は、俺の事を想ってくれて、辛い想いをしてるってのに……!

 その上、あんなチンピラ連中に付き纏われて……!」

昨夜、俺の前で儚く微笑んだ亜由美の寂しげな表情が俺の脳裏を過る。

「亜由美……」

俺は自分の情けなさと亜由美への、なんと表現してよいか解らない

胸を締め付けられる様な感情に身を焦がれそうになりながらひたすら自転車を漕ぎまくった。

亜由美の浸かっているバス亭を通り過ぎ、亜由美の家までの道を夕日に照らされながら走り、

亜由美の家に程近い公園の入り口を通り過ぎようとした時。

俺の視界の端に公園内に数人の人影が映った。

その中に、見覚えの有る制服を着た女の子の姿を見出した俺は急ブレーキで停止し、バッと振り返る。

「ビンゴ!」

そこには、数人の男女に囲まれて立ち尽くす亜由美の姿が有った。

まだ誰も俺に気付いては居ないが、あれは間違いなくあの時夜の公園で見掛けた連中だ。

どうやら、亜由美が連中に責められている様に見える……。

俺は自転車を降り、とりあえず茂みに身を隠しながら亜由美達の近くまで静かに近付き、聞き耳を立てた。



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