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団欒?

「ただいま〜」

「お邪魔します」

遥と俺が玄関に入ると、香奈と沙里が出迎えた。

「お帰りハル姉!」

「いらっしゃいお兄ちゃん」

香奈が遥に声を掛け、沙里が俺に声を掛ける。

そして、俺に抱き付こうとした香奈の首根っこを後ろから沙里が捕まえ、

遥の方に放り投げる。


「ほげぇ!」


妙な呻き声を上げながら遥に抱き付く香奈。

「お兄ちゃん、抱っこして」

沙里が可愛らしく言いながら俺の足に縋り付くので、

俺は苦笑しながら沙里を抱き上げた。

「沙里ちゃんひどいーーー!!」

香奈が口を尖らせて抗議するが沙里はしらんぷりだ。

「沙里、今のは酷いんじゃないの?」

遥が沙里に注意する、が沙里は遥をじろっと一瞥してから

ふん、と鼻を鳴らした。

「別にいいじゃない。だってハル姉はショウ兄ちゃんのお部屋でイチャついて来たんでしょ?

 今度は私がショウ兄ちゃんとイチャイチャする番だもん!」

沙里の言葉に遥が見る見る赤くなる。


「ななななんですってぇ!!あんたねえ、何よその言い草!

 いい加減にしないとお姉ちゃんも本気で怒るわよ!!」

顔中口にして怒鳴る遥。

しかし沙里はまったく動じず。

「ふん!だ。お兄ちゃんとこっそりとエッチな事してるくせに!

 私だってしちゃうんだから!」

言い様に、沙里が俺の唇にキスをした。


ガチン!


「きゃん!」

「痛っ!」

すごい勢いで歯と歯が激突して、悲鳴を上げる沙里と俺。

しかし、確かに俺と沙里はキスをしてしまった。

あわわわわ、とか言ってた遥がはっと我に返って叫んだ。


「なななななななんて事すんのよあんたはぁっ!!」

俺の腕の中で唇を押さえて涙を浮かべている沙里に遥が詰め寄る。


「べ〜だ!!」

「むきぃっ!!もう許さないんだから!!」

遥が沙里に掴み掛かる。

「お、おい!危ないって!」

「あ〜ん、私だけ仲間外れにしちゃ嫌〜♪」

状況把握が全く出来ていない香奈が遥のお尻にどーん!と体当たりしてくる。

「うわあっ!?」

「きゃあっ!?」

三人の女の子の加重に耐え切ず、俺は沙里を抱いたままひっくり返ってしまった。


どったん!ガタガタ!


「何何!?何の音!?…何やってんのあんた達!」

おばさんがお玉を持って台所から飛び出てくる。

「あ、お邪魔してます…」

三人姉妹に圧し掛かられたまま俺が挨拶する。

「…いらっしゃいショウくん…」

呆れた様に、おばさんがお玉をぶん、と一振りする。

コン!

「痛なあ!なんであたしが叩かれるのよ!」

遥が抗議の声を上げる。

「こういう時は年長者が悪いの!とっととご飯の支度手伝いなさい!」

アヒル口を尖らす遥。

「…納得いかな〜い…」

ぷっと吹き出す俺。

仕方ないなぁ…

俺は遥の頭を撫ぜてやる。

「うにゅ〜…」

妙な鳴き声を上げながら嬉しそうに目をつむる遥。

と、沙里が俺の手を取って自分の頭に乗せる。

「お兄ちゃん、私にもいい子いい子して」

「ちょっと沙里!私が撫ぜてもらってたのに!」

アヒル口を更に尖らせる遥。

「いい加減になさい!!」

「はい!ごめんなさい!」

おばさんの怒鳴り声に俺たちはバッと立ち上がって謝った。


まもなくおじさんも帰宅し、食事が始まる。

遥が作った唐揚げは抜群に旨く、それを褒めると得意そうに胸を張って喜んだ。

食事の後、じゃれ付いてくる沙里と香奈の相手をソファでしていると

洗い物を終えた遥も負けじとじゃれ付いてくる。

俺が三人の娘と狭いソファでじゃれているのを見たおじさんが、

「いいなあショウ。俺も混ぜてくれないか?」

と擦り寄ってくる。

しかし、遥と沙里はパッと離れてしまい、ドーっと涙を流すおじさん。

「パパも遊ぼ〜!」

香奈がおじさんにもじゃれ付くとおじさんがはっしと香奈を抱き締め、

「うんうん、香奈だけだよパパを愛してくれるのは。

 何か欲しい物が有ったら言ってごらん?」

と頬擦りしながら言う。

「え〜とねえ、魔法少女セットとミカちゃんの看護婦さんセット!」

ぴぴくうっ!!

耳をダンボの様にしてそれを聞き、ダッと戻ってくる遥。

「パパ〜♪あたし服が欲しいの〜♪」

遥が猫撫で声を出しながらおじさんにむぎゅっと抱き付く。

「今更遅いぞ遥?」

いじけた様に言うおじさんに、遥がさらにくっ付く。

むにゅっ…

わざとらしく、自慢の大きな胸をおじさんの腕に押し付けて頬にキスをする。

おじさんの顔がにへら、と溶けた。

「をを!?は、遥…立派に成長したな…」


何がだおっさん。


「やだ、パパ。誤解だよぉ…あたしがパパの事大好きなの解ってる癖に痛いっ!!」

その時ゴン、と言う鈍い音とともに遥の頭にタウンページが振り下ろされた。

「ふにゃ〜ん!!」

遥がとてっ、とひっくり返る。

そこには、鬼の様な顔をしたおばさんがタウンページを掴んで立っていた。

蒼くなって抱き合うおじさんと俺。


やべぇ、今のモロに角じゃんか…


「本 気 で 怒 る わ よ ?」


「ご、ごめんなさいママ…」

頭を抑えて蹲っていた遥が半泣きで謝る。

それを見ていた沙里がふん、と鼻で笑う。

「ハル姉、無様ね…物に吊られてパパに色気で迫るなんて、最っ低の女よね…

 ねえ、ショウ兄ちゃん、こんなバカ姉と付き合ってるとロクな事無いよ。

 私だったら絶対ショウ兄ちゃん一筋なんだから!

 それに、ハル姉なんて胸が大きいだけじゃない!

 私だって、もうBカップ位有るんだから!」


沙里が俺を見る目に物凄ぇ女を感じるんですけど…

ちょっと恐ぇよマジで…


ぱっかーん!!


「きゃん!」

沙里が悲鳴を上げる。

「あんたも!いい加減にしなさい!!」

おばさんが再びお玉で沙里の頭をどついた。

半泣きになった二人の娘とじゃれ付いてくる一人の娘を交互に見て、

「ショウ…大変だろうが家の娘をヨロシクな…」

と言いつつ俺の肩をポンポンと叩くおじさん。


何をヨロシクしろって言うんだろ…?

俺は天井を仰いで溜息を付いた。




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