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女王様…?

岬に手首を掴まれたまま建物の中に入り、

「おい、岬!待ってくれよ。

 靴をスリッパに履き替えないと!」

と叫んだ俺の言葉に岬がはっと手首を離す。

「ご、ごめんなさい……」

来客用スリッパに履き替え、受付窓口から訝しげな視線を送っている

女性職員の所に行き用件を告げると、この建物専用の入館許可証を渡された。

「用心深いこって……」

呟いた俺の横っ腹を岬が肘で突付きつつ

「それでは、失礼します」

と微笑んで歩き出す。

「失礼しまーす」

と俺も営業用スマイルを振り撒きながら岬の後を追った。


「もう!ショウくん余計な事言わないでよ!」

「へーへ、すんません」

岬に小言を言われながらエレベーターのドアの前に立つ。

「エレベーターの有る高校なんて聞いた事ないぜ」

半ば感心、半ば呆れながら呟く俺。

その時、チン、と音がしてエレベーターのドアが開いた。


「きゃーーー!!オトコよオトコ!!」

「ウソ!?きゃー!!ホントーー!!」

「マジで?マジでぇ?なんでココにオトコが居るのぉ!?」

あっという間に数人の女生徒に取り囲まれる俺。

「きゃあっ!!」

岬が一団に突き飛ばされ、悲鳴を上げながら廊下の壁に弾き飛ばされるのが見えた。

「岬!大丈夫か!?」

俺は叫びながら岬に駆け寄ろうとしたが、

キャーキャーワーワーと騒ぎながら俺を取り囲む

女生徒の壁に阻まれて身動きが取れない!

だあっ!!

うぜえっつーの!!

「お前ら……!!」

大声を上げ掛かったその時。

「こらあっ!!あなた達!!いい加減にしなさいっ!!」

凛、とした声が響き、一瞬にして静かになる女生徒(すずめ)共。

そして建物の入り口の方から、黄色いリボンで長い髪をポニーテールにした

キリッとした目付きの、いかにもと言った雰囲気の女生徒がすっと現れた。

切れ長の瞳は涼やかな知性の光を宿し、すらっとした鼻梁と小さな唇は

そんじょそこらの美人とはレベルの違う造形を見せる。

西園スペシャル、と他校生徒から呼ばれ、憧れの的となっている

高級なセーラー服を着こなしたそのプロポーションは完璧だ。

へえ、さすが西園。レベル激高な美女が居るな。


「大丈夫?ごめんなさいね」

壁に手をついて呆然と女生徒を見詰めていた岬の手を取りながら頭を下げる。

「貴女は、島津百合華(しまづゆりか)委員長ですね……?」

なぜか頬を染めながら呻く様な声で聞く岬に、にっこりと微笑みながら

「はい、私は西園学園生徒会長兼文化祭企画委員長の島津です。

 文化祭交流委員も兼ねてますけどね。

 貴女は文化祭交流委員の岬さんね。ようこそ、我が校へ」

岬を立たせると、今度は俺の方を向きながら声を掛けて来た。

「貴方は…」

「あ、始めまして。俺は……」

一応、胸と腕の許可証を強調しながら自己紹介する。

「そうですか、ようこそいらっしゃいました。

 私もこれから、委員会室へ向おうと思ってたの。ご一緒しましょう」

俺と岬に極上の微笑を投げた後、

「あなた達、こんな所で油売ってないで、委員会が終わったのなら

 早く帰宅なさいな。帰りにヘンな所に行っちゃダメよ?」

は〜い、と綺麗にハモり、ささーっと捌けて行く女生徒達。

「さ、行きましょ!」

ウインクしながら俺達に言うと、島津百合華はさっとエレベーターに乗り込んだ。



「それでは、本日の文化祭企画委員会を開催します。

 まず、姉妹校からいらしたお二人を紹介致します」

しーん、と静まった室内に島津の美しい声が響く。

廻りを見回すと、委員達がうっとりと島津の話に聞き惚れており、

よく見ると岬まで手を組んで「素敵……」とか呟きながらうっとりしている。

「それでは、自己紹介をお願いします!」

え?

ハッと思い壇上を見ると、島津がにこやかに微笑みながら俺を見ている。

自己紹介、か!俺は一瞬躊躇したが、ガタと立ち上がって無難に自己紹介をした。

続いて、岬がかなりつっかえながら自己紹介をすると、大きく拍手が起こる。

真っ赤な顔で座った岬に

「お前が動揺するとは思わなかったぜ」

と小声で話し掛けると

「そりゃ、いきなりじゃ緊張するわよ!でも、ショウくん全然平気っぽかったね」

意外そうな顔で俺に言う。

俺はちょっと照れながら、

「あ、ああ。ま、慣れってやつかな」

と岬に答えた。

「慣れ、って……?」

不思議そうな顔をする岬に

「ま、後で話すさ。今は会議に集中しようぜ」

とウインクし、俺は壇上で司会している島津の話に耳を傾けた。


「……各クラスの委員は、明日のホームルームで会議内容の報告をして下さい。

 それでは以上で、本日の企画委員会を終了します」

島津の声で会議が締められ、ガヤガヤと席を立つ生徒達。

会議中、岬がウチの委員会の現在の進行状況の報告と、

共同開催するイベントの提案、そして校門に飾るオブジェへの

西園学園の名前の使用デザインと許可を求めて承認された。

ちなみに俺はポケっと座っていただけだったが。


「岬さんと……ショウくん、で良いのかしら?」

「ああ、そう読んでもらって結構ですよ」

俺達が居るからか、中々部屋から出て行かない委員達の背中を押しながら

島津が微笑みながら近寄ってきて声を掛けてくる。

「そう!じゃあ、私の事も百合華、って読んでくださって結構よ」

その途端、

「きゃーーーー!!お姉様がお名前で呼ぶのを許可なさるなんて!!」

「しかもオトコに!!いやーーーー!!」

蜂の巣を突付いた様に大騒ぎになる女生徒共。

思わずドン引く俺と岬。

「おだまりっ!!早く帰りなさい!!」

島津の一喝でしーん、と静まり返り、なにやら渋々、

と言った感じだがぞろぞろと退室していく。


「お二人とも、もし時間が有ればお茶でもいかが?」

島津の誘いに、

「あ、俺はもう帰り…」と言い掛けた所で

「はい!!二人まとめて喜んで!!」

と言う岬の叫びに俺の言葉は掻き消された……



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