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プレイボーイ!?

キーンコーンカーンコーン……


授業がすべて終わり、部活に向かう生徒、帰宅する生徒がガヤガヤと廊下に溢れる。

「さあて、今日は岬と西園かぁ…」

大きく伸びをしながら待ち合わせ場所の自転車置き場へ向かう。

「それにしても、なあ…」

俺は歩きながら、さっきの由香里先生との会話を思い出していた。


「ひー、ひー……イヤ、悪かった。ちょっとツボにハマってしまってな」

顔を真っ赤にして、涙を流しながら笑っていた由香里先生がようやく落ち着いた。

「えへん!げほごほっ!!

 さて、この手紙の件だが、川浪はお前と亜里沙を賭けて決闘したい様な事を書いているが、

 もちろん受ける積りなど無いだろうな?」

斜め下からの色っぽい視線を俺に送りながら誰何する由香里先生にハッキリと答える。

「もちろんです。大体、涼のヤツ、亜里沙を物みたいに掛けるだなんてふざけてますよ。

 本気で好きなら亜里沙に正々堂々とアタックし続けろ、とビシッと言ってやります」

ふむふむと聞いていた由香里先生が満足そうに頷く。

「ああ、お前がそう言ってくれるなら安心だ。

 ま、任せるからよろしくな。だが、もし何か困ったことが出来たら

 遠慮せずにすぐに相談したまえよ」

「はい、ありがとうございます」


「涼のバカに、一体なんて言ってやろうか?」

回想を終えて思わず溜息をつく。

由香里先生に偉そうに言ったのは良いけど、良く考えると結構厄介だよな。

ああ、まったく、何で俺はこうも面倒な事に巻き込まれるんだろーか?

「面倒な事って、なあに?」

突然掛かった声に、

「わあ!びっくりした!!」

と思わず叫びつつ飛び上がる俺。

「きゃ!何よぉ!ビックリしたのはこっちよ!」

目の前には黒い瞳を見開いて驚く岬の顔が有った。

「…なんだ、岬かぁ…

 悪い悪い、ちょっと考え事しててさ」

いかんいかん、またしても口に出してたか。

「……?まあ、良いけど。とりあえず行きましょ!

 西園学園の場所、知ってるよね?」

「ああ、一応な。先生に見付からない様に、校門出るまでは自転車引いていこうぜ」

自転車の鍵を外し、岬と並んで歩き出す。

何気なく岬の横顔を見詰める。

うん、岬も可愛い、というか結構美人だよな。

なんだか大人っぽいし…

そんな事を考えながらほけ、と見詰めていたらふっと岬が俺の方を見た。

「やだ、そんなにジロジロ見ないでよ。

 若宮さんや南さんを見慣れてるショウくんから見たら、私なんて凄いブスでしょ?」

頬を赤く染めながら口を尖らせる岬に、

「い、いや、そんな事無いって。お前だって負けないくらいの美人だよ」

と思わずマジで答えてしまう。

「え……もう、ヤダぁ!ショウくんって結構プレイボーイなのね!」

かあ、と頬を紅潮させながら言う岬。


ぷ、ぷれいぼおい!?


「な、何言ってるんだ!俺はそんな積りじゃ……!」

慌てふためきながら叫ぶ俺。

その時、校門を通過する寸前の事。

「あらあ、ショウくんじゃな〜い?

 これから岬ちゃんと西園までデートなのぉ?」

地獄の底から響いて来た様な恐ろしい声を響かせつつ、

ゴゴゴゴゴゴゴ、という音さえ聞こえてきそうな雰囲気の(だいまじん)

俺達をついっと走りながら追い越して行った。

「な!!」

その後ろを十人ほどの弓道部員がファイト、ファイト、と声を上げつつ着いて来ている。


弓道部の連中、ロードワークに出る所だったのか!

なんて間の悪さだよ……


遠ざかっていく遥の背中から、怒りの紅いオーラが立ち上っている。

そして、最後尾を走っていた涼がこちらを振り向きつつ、くす、とほくそ笑んだ…


あ、あのガキぃぃっ!!


怒りに燃えながらふと横を見ると、岬がたまげた様にポカン、と口を開けて立ち尽くしている。

「お、おい岬、大丈夫か?」

俺の声にハッと我に返り、

「今の、若宮さんよね……まるで鬼みたいに見えたわ……」

と呆然と呟きつつぎゅっと両手で自分を抱き締めている。


すまん、岬…俺のせいで恐ろしい目に遭わせちまって…

俺は思わず岬に向かって頭を下げてしまった。



校門から少し離れた所から二人乗りで自転車を漕ぎ出す。

岬は俺の肩に手を置いて楽しそうに歓声を上げている。

「これならあっという間に着くね!」

ああ、と返事をしながら、俺は今夜なんと言って遥に責められるか、

またそれに対してどうやって上手い事収める事が出来るかを必死で考えている。

さっきの岬との会話を聞かれていたらかなり不利だな…

だが、あのタイミングならそうそうハッキリとは聞かれて無いと思うんだが…

「ちょっとショウくん!ストップストップ!!」

肩に置かれた岬の手に力が篭り、ハッと我に返った俺は急ブレーキを掛けて停車する。

「きゃあ!」

思わず前のめりになった岬が俺の背中に体を押し付けた…ら?


むにゅ


「うおう!」こ、この感触はぁ!?

「もー!西園の前通り過ぎちゃったよ!」

プリプリと怒りながら文句を言う岬に

「す、すまん。ちょっと考え事してて」

と言い訳しつつ、大きくなった部分を必死で鎮める。

「早く戻ろ!

 …なんでそんなヘンな格好で自転車漕ぐの?」

前屈みになっている俺を見て不審そうな声を上げる岬。

「あ、ああ、ちょっとな。とにかく戻るぜ!」

わざとらしく大声を上げ、ダッシュする。

「きゃ!」

と、岬が俺の背中にしがみ付いてきた!

むにゅっ

再びやーらかな感触が背中に走る……


……西園に着いても、しばらく動けないぞこりゃ。


今朝、遥と二度もしてきたのになあ……

俺は自分自身の若さってヤツを呪いながら、必死で数式や三バカトリオの間抜け面を頭の中で思い浮かべていた。



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