らぶらぶナイト?
「それにしても、クラスのヤロー共に見られなくて良かったぜ…」
家に帰り、改めて弁当箱を開けてみて思わず赤面する俺。
「浮気は許さないんだからね!…チューいっぱい…はおうっ!!」
そうだ…由香里先生と浅井先生には見られてるんだっけ…
「うごごごごごご!!」
頭を抱え、座布団で顔を隠して床をゴロゴロと転がる俺。
あああ、明日学校で二人の先生の顔見れねぇっつーの!!
五分ほど転がり、ちょっと気持ち悪くなってしまい布団に突っ伏す。
「…とりあえず、弁当食おう」
俺は遥の顔を思い浮かべて「いただきます!」と声を出してから弁当を食い始めた。
ムシャムシャぱくぱく…ゴックン!
「ご馳走様でした!」
弁当には、遥の愛情がたっぷりと詰まっていた。
コンコン
お?誰か来たぞ?
「はい、どちら様ですか?」
答えながらドアに向かう。
「あ、ショウくん、私よ」
「え?おばさん?」
ドアを開けると、そこには遥のおばさんがニコニコしながら立っていた。
「ね、ショウくん、今日は家でご飯食べさせて上げられないの。ごめんなさいね。
その代わりにコレ、持ってきたから」
おばさんが大きなバスケットとポットを俺に渡す。
「…なんですか、コレ?」
「うふふ、私が作ったアメリカンクラブハウスサンドウィッチよ。
ポットにはミルクティーが入ってるからね」
おお!おばさんの十八番、アメクラサンドだあっ!!
小学生の時、遠足とかで遥が持って来るコイツに憧れまくったっけなあ…
思わず遠い日の思い出に浸る俺。
そう言えば、バスケットから美味しそうなデミグラスソースの香りがぷんぷんしてきている。
「ありがとうございます!でも、どうしたの?今日何か有るの?」
「ええ、今日は香奈と沙里が林間学校で居ないのよ。
そうしたらさっき、お父さんから電話が掛かって来て、今夜は二人で食事に出ようって…」
頬を染めながら嬉しそうに微笑むおばさん。
うわあ…なんだかんだ言っても、相変らずラブラブだよなあ…
「なるほど!でも、それなら俺なんかに気を使わなくても良かったのに」
笑いながら言う俺に色っぽいウインクをして、
「何言ってるの!これには遥を預かってもらうお駄賃も含まれてるのよ?」
「え…?」
「今夜は遅くなるし、帰ってきてからも二人っきりになりたいの♪
だから、遥はショウくんの部屋に泊めてあげてね」
更に色っぽい流し目で俺を見る。
「あ…!は、はい!了解しました」
思わずビシ!と敬礼する俺。
「ふふふ、遥には置手紙してくから、部活が終って帰ってきたら
きっとキーキー文句言いながらショウくんの所へ来ると思うわ。
じゃあ、よろしくね〜!」
おばさんは手をヒラヒラしながら、半分スキップする様に帰って行った。
…俺と遥も、将来あんな風にいつまでも仲の良い夫婦になれるといいな…
そんな事を思いつつ、俺はバスケットとポットを持って部屋に戻った。
課題を終らせ、風呂を洗って水を入れて焚き付けた直後、
ドンドン!
「ショウ!居るでしょ?開けるわよ!」
と大声を出しながら遥が俺の部屋に入って来た。
「おかえり、遥」
俺は苦笑しながら、手と足を拭きつつ風呂場から出て行く。
「ねえ!聞いてよ!ママったら!!」
目をバッテンにし、口を尖らせ両手をぶんぶか振りながらキーキーと文句を並べる。
おばさんの言ってた通りだけど、まあこれは俺でも予想できるな。
俺は苦笑したまま遥の気が済むまで文句を黙って聞いていた。
「…って、あんまりだと思わない!?
も〜!ホンットスチャラカ主婦なんだからぁっ!!」
一息に言い終えて、ふうはあと息を荒げている遥に
「ほら、飲めよ」
とコップに入れたコーラを渡す。
「ありがと」
と言いながら受け取り、両手でコップを持ってングングと飲み干す遥。
ぷはあっ!けぷ。
「あ〜美味しかったぁ。ねえ、ご飯どうしようか?」
あれ?おばさんサンドイッチの事書いてかなかったのか。
道理で遥がプンスカする筈だよな。
「ああ、それなら心配無い。
さっそく食べようか」
ほえ?とか言いながら首を傾げる遥の前に、おばさん特製の
アメリカンクラブハウスサンドウィッチをずらっと並べる。
「わあ!これ、ママのクラブハウスサンドじゃない!
な〜んだ!ママってば何も書いてないんだもの!」
遥が涎を垂らしそうな表情でテーブルの上に広がったサンドイッチを見詰める。
「さ、喰おうぜ!こりゃ、三〜四人分以上有るな」
ミルクティーをカップに注ぎ、俺たちは「いただきます!」と声を上げて
サンドイッチにかぶり付いた。
部活を終えて帰って来た遥は、その華奢な体のどこに入るのかと
思わせる程の量をぱくぱくと平らげていく。
俺はさっき弁当を食ったばかりでも有るので、そんなに食が進まない。
あっという間に半分程の量を食べた遥が、
「ふい〜、やっと人心地がついたわよぅ」
と言いながらけぷ、と小さくゲップをした。
「ね、ショウ、なんだかあんまり食が進んで無いみたいだけど、具合でも悪いの?」
少し心配そうに聞いてくる遥に、俺は弁当の一件について聞かせた。
「えええ!そりゃヤバかったのね…ごめんね、ちょっと考え無さ過ぎだったね…」
しゅん、となり謝る遥の手を取り、引っ張って膝の上に乗せる。
「えへへ…」
にゅうん、としたアヒル口を見せながらちょこんと俺の膝の上に座り、むきゅっと抱き付く。
「ん〜…ショウの匂いがするよぅ…」
幸せそうに言いながら俺の首筋に鼻を付けてくんくんと匂いを嗅ぐ遥。
遥の体からも、甘い女の子の体臭が香って来て、ちょっとドキドキする。
「ねえ、私臭くない?部活で汗掻いてるから…」
少し離れようとする遥を、逆にぎゅっと抱き締める俺。
「バカだな、遥の匂いが臭い筈無いだろ…」
ふと見ると、遥が俺の顔をキラキラした瞳で見上げている。
俺はそっと、遥の愛らしいアヒル唇に自分のそれを重ねた。
「にゅうん…」
可愛らしい声で鳴きながら嬉しそうに瞳を閉じる遥。
俺は遥の軽い体をお姫様抱っこにして、布団まで連れて行く。
布団の上に遥を下ろし、その上に覆い被さるようにしてキスを続ける。
「は…ん…あう…ん…」
遥が少し喘ぎながら舌を絡めてくる。
五分ほどキスを楽しみ、遥が名残惜しげにそっと唇を離した。
「ね…どうせ汗掻くんだから、とりあえずしちゃお…」
頬を赤く染めながら、甘えるように呟く。
「ん、俺もしたかったんだ…」
普段だったら絶対言えない言葉を捻り出した自分に驚きながら、俺は再びキスをする。
今夜は、熱い夜になりそうだな…
きっと、おじさんとおばさんも。
俺は自分の考えた事にぷっと噴き出しながら、遥の服をそっと脱がせ始めた。