天国?
「さ、食事を続けましょ!」
おばさんの声で再びご飯を食べ始めるが、やはりどうもすっきりとはしない。
五分ほど会話も無くもくもくと食事をしていると、とたとたと階段を下りる音がして
リビングのドアがすいっと開いた。
「カナ、サリ…」
カナに手を引かれて真っ赤な目をしたサリが入ってくる。
「さ、ご飯を食べちゃいなさい。
デザートにチョコプディングが有るからね」
「はーい!」「…は〜い」
満面の笑顔で元気に返事する香奈と、ちょっと不貞腐れたような沙里。
ふと遥を見ると、苦笑しながら妹二人を見つめている。
今度、香奈になんかお礼しなきゃな…
俺も苦笑しつつ、食後のデザートのチョコプディングを思い浮かべてにんまりとした。
「なにヤらしい顔で笑ってんのよう」
遥がいつものアヒル口で俺に突っ込みを入れる。
「ああ、おばさんのチョコプディングが楽しみでニヤけちまったのさ」
俺の返事におばさんがにっこりと笑いながら
「うふふ、そう言ってくれると作った甲斐が有るわ。
ショウくんは甘党だから良いわよね。
お父さんも、お酒なんか飲むよりお菓子とコーヒーにすれば良いのに」
ひいっと悲鳴を上げて泣きそうな顔になるおじさんを見て遥と香奈が噴出す。
それにつられて、沙里も思わずくすっとなったが
俺と目が合った途端にふっと下を向いてしまった。
やっぱ、少し時間は必要か…
俺はそう思いながら最後の一口のご飯と肉じゃがをかき込んだ。
おばさん特性のチョコプディングとコーヒーが用意されたリビングのテーブルで
テレビを見ながら寛いでいると、沙里が俺の膝の上に乗ってきた。
遥を見ると、苦笑しながら知らない振りをしているので、
俺は沙里の頭を撫でてあげる。
「…ショウ兄ちゃん、ごめんなさい…」
呟く様に謝る沙里に
「気にするなよ。俺は沙里の事も大好きだよ」
と答えながら優しく抱きしめる。
「…もし、ハル姉に飽きたら私をお嫁さんにしてくれる?」
上を向いて俺の目を見ながら聞いて来る沙里。
一瞬迷ったが、
「俺が遥に飽きる事なんか無いから、その約束は出来ないな。
でも、もしそうなった時に、沙里が俺の事を好きでいてくれたら考えるよ」
と返すと、沙里は少し哀しげな、何とも言えない良い表情で微笑んでくれた。
「カナも抱っこ〜♪」
しみじみとした雰囲気をいい感じに破壊しながら口の周りにチョコプディングを
ペタペタに付けた香奈が沙里と俺の間にぐいっと割り込んでくる。
「私も抱っこ〜♪」
それを見た遥がむぎゅっとお尻を香奈と俺の間に割り込ませてくる。
何やってんですか遥は…
「ハル姉のおしり大きすぎ!」
沙里が口を尖らせながら文句を言う。
「へへ〜んだ、おしりまっ平らな沙里は羨ましいんでしょ〜!」
アヒル口でアカンベしながら沙里を挑発する。
「ふん!だ。おっぱいだっておしりだって大きければ良いってもんじゃないもん!
大きければ良いんなら、ママが最強じゃない!」
…確かに、おばさんの胸は遥から三割増し位の見た目だが…
「ふ〜んだ!あたしのおっぱいはまだまだ成長中だもんねーだ!
ママは99センチのGカップだけど、私はもう92のF有るんだもん!
それにママはウエストあんまり無いけどあたしはくびれてるもん!
更にあと五年もたてばあたしのおっぱいはママを抜いて
Hカップには成長するに決まってキャイン!」
バン!と良い音を立てておせんべいの入っていた金属製の箱で
ぶっ叩かれて悲鳴を上げつつひっくり返る遥。
その後ろにはゴゴゴ、とか擬音が見えそうな雰囲気でにこやかに微笑みながら
箱をペタペタと平手で打ちながら立っているおばさんが居た。
…とっても…怖いです…。
「遥、あなた来月のお小遣い半分カットだからね♪」
頭を抑えながらさーっと青くなる遥。
「マ、ママ!幾つになっても綺麗なあたしの大切なママ!
さっきのは失言なの!思っても居ない事をつい沙里の挑発に乗ってにょほゅっ!!」
バンバン!!
更に二発ぶっ叩かれ再びひっくり返る遥。
「うにゅ〜…」
半泣きになって俺にしがみついてくる。
「さ、そろそろ片付けましょ。
遥、洗い物と明日の朝食の仕込みやってね。
ショウくん、今夜は泊まって行けば?
遥、客室に布団敷いて」
「…はい、ママ…」
しくしくと泣きながら廊下に出て行く遥。
「ほら、沙里と香奈は歯を磨く!」
「は〜い」ハモりながら出て行くツインズ。
う〜む、おばさん最強だな…
「最強って、どういう意味かしら?」
にこやかに青筋立てているおばさんにヘッドロックされる俺。
「うえぇっ!声に出てましたかぁ!?」
思う様狼狽する俺の頭を小脇に抱え、グリグリとしてくる。
って、この、ホッペに感じる柔らかな感触はぁっ!?
「おばさんのおっぱいもなかなかでしょ?」
艶っぽいウインクをしながら俺を見下ろすおばさん。
「あのそのこのどの…」
思いっきりキョドる俺。
「ショウ!お前は母さんまで俺からもぎ取るのかぁぁっ!!」
おじさんの魂の叫びを聞きながら、俺は天国の様な感触を味わってニヤけてしまっていた。