熱愛!!
「こんばんはぁ!」
自動ドアが開き、元気な声で遥が店内に入ってきた。
「お、遥ちゃん、いらっしゃい!」
社長が満面の笑みで声を掛ける。
「あ、社長さん、いつもショウがお世話になってます!」
最高の笑顔で社長に微笑む遥。
鼻の下を伸ばし、にやけている社長を見て苦笑してしまう。
「ね、ショウ!今夜ご飯食べに来るでしょ?」
VFR750Fにワックスを掛け終わり、道具を片付けている俺に近付き聞いてくる。
「ああ、ご馳走になりに行くよ。
今夜のおかずはなんだい?」
遥がにーっとアヒル口を得意そうに尖らす。
「えへへ、今夜は肉じゃがだよ!私が作ったの!」
「お!マジか!お前の肉じゃが、メチャ美味くなってるよな、最近」
俺の言葉に嬉しそうに頬を染める遥。
「これから、ちょっとお使いして帰るから!また後でね」
それだけ言うと、遥は社長に挨拶して店を出て行った。
「ショウ、お前は幸せモンだぞ?
あんな可愛い彼女が、ご飯作って待っててくれるなんて」
俺の肩をどやしつけながら羨ましそうに言う。
「俺のカミさんも昔は可愛かったんだがなぁ…
今じゃあ、まるでビア樽みたいな体に」
「社長!!あとは中古のCBRを磨けばイイですか!」
俺は社長の言葉を遮って大声で叫ぶ。
「あ?ああ、まあ今日はもうイイや。
でな、ビア樽じゃなきゃあ子豚ちゃんみたいな体に」
「しゃちょーーーうう!!じゃあそろそろ表のバイク入れましょうかぁ!!」
社長!後ろー!後ろーーーー!!
俺は必死でアイコンタクトを図る。
「なんだよショウ!どうしたって言うんだ…あ?…あは、はは、は…」
社長はようやく気付いてくれた。
後ろで湯気を上げながら鬼の様な形相になっている奥さんに…
「お、俺の嫁さんもな、お前の遥ちゃんに負けない位胸がデカくて、
もう超セクシーなんだぜ!俺はもうまいっちんぐさ!!」
むぎゅ
「痛ててててて!!かーちゃん勘弁!!」
耳を摘まれ、悲鳴を上げる社長。
それを見て震え上がる俺。
「あ、ショウくん、表のバイクを入れちゃったら帰って良いからね」
微笑みながら奥さんが俺に声を掛ける。
「ショウ…助けてくれ…」
涙目の社長が俺を拝むが、もうどうしようもない。
俺は社長から目を逸らし、
「…表のバイク、入れてきますね…」
とだけ言ってささっと逃げ出した。
「薄情もの〜!!」
社長は耳を摘まれたまま、奥の事務所に連行されて行った。
DT50を飛ばして家に帰ると、電気が点いている。
「おかえり!ショウ!」
DTの排気音を聞いたのだろう、遥が飛び出してきて俺を迎えてくれた。
「ただいま、遥」
俺は抱きついてきた遥をぎゅっと抱き締めてから、メットとグローブを外す。
「早く!早くぅ!」
遥が俺の手を引っ張って部屋に駆け込む。
「おいおい、どうしたんだよ!何か有ったのか?」
玄関に入り、ドアを閉めてブーツを脱いでいると遥が背中に抱き付いてきた。
「もう!足りないの!全然!」
ハァ?何が足りないって?
「何が足りないんだ、遥?」
部屋に入ると、既に布団が敷いてある。
「えーいっ!!」
「のわわっ!?」
後ろから足を引っ掛けられ、布団に倒れこむ俺。
ばふっ
布団の上に仰向けに転がると、遥がガバ、と覆い被さってくる。
「な、なんだなんだ!?なんなんだ!?」
混乱している俺の目の前に、アヒル口全開の遥の顔が有る。
「足りないの!ぜんっぜん足りないの!!」
「あの、遥さん。意味が解んないんすけど…」
すーっと遥の顔が近付いてきて、俺の唇に遥のそれがふわっと重なった。
「ん…」
少し喘ぎながら遥が俺の口の中に自分の舌を差し込んでくる。
俺達はお互いの熱を確かめ合いながら、しばらく口付けをした。
すうっと俺から唇を離し、幸せそうに微笑む遥。
俺は堪らなく愛しくなり、ぎゅうっと抱き締める。
「あん…」
可愛い声を出しながら、遥も俺をぎゅっと抱き締める。
「なあ遥、何が足りないんだ?」
俺はさっきからの疑問を口にした。
「んふ、ショウが足りなかったんだモン」
遥が俺の首筋にキスをしながら呟く。
可愛い…
俺は堪らなくなり、遥を下にするように体を入れ替えた。
「あん!もう、何する積りなのぉ…?」
遥が右手の人差し指を自分で噛みながら、挑発するように俺を見上げる。
左右の腕に挟まれた豊かな胸が強調されて、とてもエロチックだ。
「お前がして欲しい事をするだけさ」
「…ショウは、したくないの?」
いじける様にアヒル口を尖らして聞いてくる。
「したいに決まってるだろ」
俺はそう言うと、遥の唇を再び奪った。
「あん…ひょう、だいひゅき…」
遥が喘ぎながら言う。
「俺もさ。愛してるよ、遥…」
そして、俺達はお互いを確かめ、愛し合った。
一時間後、一緒に風呂に入った後で遥の家に向かう。
「ただいまぁ!」
「こんばんは、お邪魔します」
俺と遥が玄関に入ると、トタトタと走り出てきたカナサリが俺を迎えてくれた。
「いらっしゃい、ショウ兄ちゃん!」
「お帰りハル姉〜!!」
ぴょん、と俺に抱き付く香奈。
「あーーー!カナ退いてぇ!!」
出遅れて悲鳴を上げながら香奈にしがみ付く沙里。
「まあまあ、おいで、沙里」
俺は二人を左右に抱き上げる。
むむ、さすがに小学五年生を二人持ち上げるのは結構キツいな。
「大丈夫?ショウ」
遥が不安そうな声で聞いてくる。
「ああ、これくらいどうって事無いよ」
ちょっとだけ、冷や汗を掻きつつ答える。
「ショウくん、いらっしゃい」
おばさんが包丁を拭きながら台所から現れた。
「あ、お邪魔します」
挨拶しながらリビングに入ると、おじさんが必殺仕事人を観ていた。
「お、ショウ、良く来たな。
…しかし、ウチの娘共は本当にショウが大好きだなぁ」
両手にカナサリを抱き上げ、背中に遥を張り付かせた俺をみておじさんがしみじみと言う。
「なあ、ショウ。お前は三人の中で誰が一番可愛いと思う?」
ピシっ!
空気が音を立てて固まる。
微動だにしない俺と遥と沙里。
「え〜、カナが一番だも〜ん♪」
一人、香奈だけが楽しげに答える。
「あ、そう言えば遥とショウの幼馴染の亜由美ちゃんも可愛いよなぁ!
じゃあ、亜由美ちゃんも含めて、誰が一番可愛いと思う痛いよ痛いよ母さん痛いよ!」
すーっと現れたおばさんに耳を抓り上げられて悲鳴を上げるおじさん。
おっさん…空気読めよ…
「さあ、食事にしましょ。
あなた、今日は晩酌のビール一本没収だから」
ギン!と睨まれて「…ハイ」と半泣きで答えるおじさん。
…社長といい、おじさんといい、なんで男ってのはこうも奥さんに弱いんだ…
「ショウ、行きましょ」
俺の背中に胸をむぎゅっと押し付けて囁く遥。
俺も将来、遥の尻に敷かれるんだろーか…?
ま、遥の可愛いお尻に敷かれるならそれも良いか。
「ああ、お前の肉じゃが楽しみだな」
俺は遥に微笑むと、カナサリを抱えたまま美味そうな料理が湯気を上げているテーブルに向かった。