家庭訪問?
こんばんは、作者の羽沢 将吾です。
いつもご愛読頂きましてありがとうございます。
自分の作品紹介や独り言、オリジナルショートストーリー等を掲載(予定)のブログをご紹介いたしますので、ご来訪頂ければ幸いです。
まだまだ何も整っていませんが、徐々に充実させて行く積りですので宜しくお願い致します。
アドレスは以下の通りです。
タグが使えないので直接リンク出来ず申し訳有りません。
http://blog.goo.ne.jp/syogo-hazawa
「さて、キミを残したのは他でもない…」
にやり、と色っぽい微笑を浮べながら俺を見詰める由香里先生。
「他でもない…?」
俺は何事かと身を乗り出す。
「ああ、他でも無い。
実は、芳野の事だ」
「芳野、って、…芳野先輩ですか?遥の元彼で剣道部主将の?」
「ああ、そうだ。あの芳野だ。
彼はな、遥にフラれてからかなり落ち込んでいてな…」
芳野先輩は遥にフラれ、めちゃくちゃ落ち込んでしまい
部活も勉強もメロメロになっちまって、
お家の人から学校に相談が来ているとの事。
また、遥は何度か芳野先輩の家にお邪魔していて
向こうの親御さんにも気に入られていたので、
突然、遥の話題に触れなくなった芳野先輩を見て親御さんは察し、
その件についても芳野先輩の担任と、遥の担任の由香里先生に問い合わせが有ったと。
「まあ、もちろん生徒同士の恋愛沙汰なんて、私達が口を出す事じゃないんだが…」
しかし、某国立大学推薦当確だった芳野先輩の成績がガタ落ちだと言う事で
先生方も放置する訳には行かなくなってきている。
「で、だ。芳野はまだキミと遥がラヴ。なのにはハッキリと感付いていない。
彼はただ単に自分が詰まらない事で遥を傷付けてしまって、
それで遥に愛想を付かされてしまった、と思っている。
更に幸いな事に、亜由美の事も有ってキミと遥は大っぴらにラヴ。していない。
…私としてはキミと遥に大っぴらにラヴ。してもらう事は吝かではないんだが、
とりあえず三年が学校に来なくなる三学期まで、キミと遥のラヴ。
を表に出さないで欲しいんだ。
もちろん、これは飽くまでも事情を知る我々教師の勝手なお願いなんだがな」
由香里先生はそこまで言うとひた、と黙って俺の目を見詰める。
…事情は理解したし、おそらく遥も理解するだろう。
しかし、週末の亜由美の事と合わせて、重ねて厄介な事になっちまったな…
だが、俺は俺の最愛の遥を護らなければならない。
「解りました。でも、遥にも話さないといけませんね」
由香里先生が頷く。
「ああ、もちろんだ。
それで、今週の土曜日にちょいとキミか遥の家へ家庭訪問して、
遥のご両親を交えてお話をしたいのだが…
まあ、もちろんキミ等の進路相談も兼ねて。
キミの担任の浅井先生には既に許可は取ってある」
浅井先生、由香里先生に惚れてるからな…
「でも、すんません!土曜日はダメなんです。
実は、かくかくしかじかで…」
俺は今週末の亜由美の件を説明した。
「そうか、そっちはケリ着けるのか…
それじゃあ日曜日の午前中はどうだ?
こう言う事は早くした方が良いからな。
とにかく、今日、遥と遥のご両親にお話してくれ。
私も明日、直接電話するから」
「解りました。じゃあ、明日もう一度相談しましょう」
由香里先生が俺の言葉に頷く。
「ああ。色々と大変だろうが頼む。
しかし、キミには遥が居るんだから大丈夫だな。
あ、後、キミを待っている亜由美には姉妹校交流の件で話してたと言って置きたまえ」
「はい!」
俺は力強く頷き、一礼して会議室を辞した。
自転車置き場に向かうと、俺の自転車の隣で亜由美が空を見ながら待っていた。
「あ、ショウくん!お疲れ様。
ね、どうしたの?」
小首を傾げながら聞いてくる亜由美に、由香里先生に教わったとおりに答える。
「ああ、姉妹校交流委員の件で注意事項を幾つか話してたんだ」
うふ、と可愛く笑う亜由美。
「そっか!そうよね、毎年毎年の頭痛のタネだもんね」
「そんなになのか?」
不思議そうに聞く俺に、亜由美がふうと溜息を付く。
「そうよ!だって、相手は西園学園よ?
この付近じゃ最高のお嬢様学校で、みんな美人ばっかだし。
もう男子なんか血眼になっちゃって…
でも、向こうは結構お高く止まっちゃってて上手くいったなんて話は殆ど聞かないけどね」
むう…って事は、嫌味な女子を相手にしなきゃならないって事か…
俺は腕を組みながらむう、と唸る。
「…でも。ショウくんみたいなタイプは珍しいから、意外と興味持たれるかもよ?」
亜由美が俺の顔を下から覗き込む。
俺の看病をする為に切ってしまった艶やかな髪も結構伸びてきて、さらっと流れてキラキラ光る。
ちょっとドキっとしてしまい、俺は赤くなった顔を見られない様に後ろを向いた。
と、こちらを見ている影を二つ見つけてしまう。
一人はグラウンドから、野球部のユニフォームを着た男。
もう一人は、校舎内、美術室から、ツインテールの娘。
二人とも、俺と目が合った瞬間にさっと身を翻して見えなくなってしまった。
「どうしたの、ショウくん?」
不思議そうに聞いてくる亜由美にぎぎいっと振り向いて答える。
「いや、なんでもない。さ、帰ろうか!」
不審気な亜由美を促して自転車に跨り、俺達は下校し始めた。
家に帰り、とりあえずごろっと横になる。
バイク雑誌をペラペラと捲りながらふと週末の事を考える。
亜里沙の原付試験の勉強に、亜由美へ俺と遥の事を伝える件。
それに、芳野先輩の件で由香里先生と二人纏めての面談…
なんて盛り沢山な週末だ…
さて、今日はバイク屋でバイトだな。
とりあえず行くか!
俺は着替えてからメットとグローブを持ち、DT50に乗ってバイトへと向かった。
「なあ、ショウ、お前小型受けて見たらどうだ?」
社長が試験場のコース図をヒラヒラさせながら聞いてくる。
「でも、教習代金なんて高くて出せませんし、どうせ教習受けるなら中型受けたほうが…」
戸惑いながら答える俺に、社長が笑う。
「違う違う、教習じゃなくて一発試験さ。
中型の一発は無理だろうが、小型なら十分行けるぞ、きっと。
一発試験なら、一回に掛かる試験代は五千円位だしな」
そうか、それなら…でも、五千円かあ…
「そうですね…でも、ちょっと無理ですよ。一発で受かるか解らないし」
「何言ってんだ!ウチの裏の駐車場で練習すれば大丈夫だって!
練習に使うバイクはお前のDTで十分だ」
う〜ん…俺は展示してあるホンダ・VFR750Fにワックスを掛けながら考え込んだ。
「よし、お前は熱心にやってくれてるから、もし小型受かったら
DTとコイツを追金無しで交換してやろう!」
社長は先週下取ったバイクのタンクをポンポンと叩きながら言った。
社長の手の下には、スズキ・GS125Eカタナがシルバーの車体を光らせている。
「えっ!ホントですか!?」
俺は思わず叫んでしまう。
125とは言え、親父の形見の750カタナの血統を受け継ぐバイク…
「ああ、本当だ。保険はDTのを持ち越せば良いし、
税金だって原付と年四百円しか違わないしな。
それに、コイツならお前の可愛い遥ちゃんとタンデム出来るぞ?」
遥とタンデム!
俺は条件反射で叫んでしまった。
「受けます!やります!!」
社長はニヤリ、と笑いながら答えた。
「そうか、よし、じゃあ日曜から特訓だ。
一ヶ月で試験チャレンジするぞ。試験日に学校サボる言い訳考えとけよ?」
「!大丈夫です、来月には創立記念日が有ります!」
「そうか、そりゃ丁度良い。ようし、ビシバシ行くから覚悟しとけ!」
「はい!」
俺は週末の事を一瞬忘れ、浮かれてしまった。