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東方兄妹記  作者: 面無し
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「須佐之男さん。ずいぶんと敵が弱いと思いませんか?」


「そうだな、これじゃあ一般人を潰すのがげんかいだろう」


 束錬が言った言葉に俺は頷いた。

 今回の戦績、圧倒的と言っても何も過言ではないだろう。現に、戦闘が開始されてから十分たった今、敵方は全滅しているのに対しこちらは全員が無傷だった。

 敵は強力だったかといえばそうでもない、確かに外見に意識を向けすぎていると戦いづらいものだが、攻撃も単調でその速度もそれなりだ。訓練したものならば十分に戦える強さだったという印象を受けた。こんなものを量産してどうするのかと思った程だ。


「なんだったんだろうな?」


 そんな疑問を俺はフェリーに聞いてみた。

 フェリーは少し思案し、指を一本立てながら言った。


「何かの術式で、敵を拘束するのが前提の兵器なんじゃない?」


多分当たりだろう。だが、疑問が残る。


「それなら別に、こいつらじゃなくても、拘束術を発動したやつが攻撃すればいいのに。どうしてこいつらなんだ?」


そうだ、拘束したら殺す。それだけの行為に何故別の兵器を用意したのだろうか。

その疑問に手を挙げたのはフェリーだった。


「たぶん、その拘束術には制限があるんじゃない?

今調べたら、ここの生物には時間を歪める術式に対する反対術式がかかってたわ。独特の形式で組まれてるから、全体にかかっているかも直ぐ分かったわ」


敵の死骸の一部を手に取りながら、フェリー続ける。


「その拘束術はきっと時間系なのよ。世界全体を遅延させるような術だと思うわ。

 そういう術の制限として、術者は世界に対して損傷を与えることができないんじゃないかしら。

 そして、その干渉ができない術者に変わって攻撃するのが、この兵器ってことじゃないかしら」


「筋は通ってるな」


 俺はフェリーの意見に頷き、それならやることがあると言った。

 まだあと一つ、その術式自身を処理して置かなければいけない。

 それを使用するであろう黒幕があの兄弟に倒された今、術式の本体を葬ってしまえば今回のようなことは起こせなくなるだろう。(まぁ偶然同じ術が開発される可能性はあるが、当面は大丈夫だ)


「そうね、その通りだわ、さっさと探して消しちゃいましょ」


 俺の意図をわかったのであろうエルンは背筋を伸ばしながら切り替えるようにそういった。

 みんながそれに頷いたのを確認して、俺は、ちょうど今気づいた最後の解決に必要な問題を提示した。


「じゃあ、どうやって探すかなんだが、どうしようか」


『あっ』


 手作業やらなんやら、地道な作業になったのは言うまでもないだろう。




     ****



 この城の土地、大地の穢れをどうやって浄化したのか。俺はそれが気になって仕方がなかった。

 体や物についた穢れは禊や祈祷で祓うことが可能だ。しかし、土地となれば話は違う。規模が大きすぎるがゆえにそれでは足りないのだ。

 数百人の人が祓ったとしてもここまでの浄化は不可能だし、神様がやった場合はこの範囲は大きすぎる。

 何か掃除機みたいに穢れを全て吸収するような何かがあるはずだ。

 まてよ、なら吸い込んだその穢れはどこに行くんだ? 長い時間をかけて浄化するのか、それとも放置するのか。

 この広い土地全体の穢れとなると相当の量になる。祓うのには何百年と必要になるから、祓っていても放置していても、どちらにしろ今でも相当量が残っているはずだ。

 危険じゃないか?

 俺は立ち上がった。能力を発動し、この付近で最も穢れのある地域を調べてみる。

 調べ終わり、出た結果に俺は焦った。王城の地下に、それは存在していた。それも、蛇の形をして。


「偶然にしちゃ出来過ぎてる」


 アレの対処は俺がしなければいけない。下手にみんながいじって穢れが暴発でもされたら厄介だ。

 急いで転移し、王城の地下へ飛ぶ。そこは狭い地下の一室だった。

 ガラス管が並ぶその部屋はあの銀髪少女の夢の中で見た光景そのものだ。


「隠し部屋の隠し部屋ってとこか。ご苦労なことだな」


 そう言いながら目的の蛇を目標に歩いて行く。

 立ち並ぶガラス管、だが、一つだけ特別扱いのように孤立した一本が進む先にはあった。


「あれだな」


 俺は歩く速度を早めた。

 ガラス管は曇りガラスのようになっていて、中の様子はわからない。

 管の下には何かの装置があるから、ここを操作すればいいはずだが、下手に触ることは出来ない。


「管ごと移動させて、俺の空間で開放するのが一番だな」


 そう言いながら、俺は別空間を作り、その扉を開けた。これなら、穢れが出てもそのまま空間を消滅させれば万事解決だ。

 管を転移させ、覚悟を決めてからそのガラスを砕く。

 中には、女の子がいた。


「は?」


 自分の能力に間違いはない。さっきまでたしかにこの装置にはあの蛇がいたはずだ。

 そして、この女の子。銀髪からしても、さっきの永琳もどきちゃんと同じ気配がする。まぁ、さっきの女の子に比べれば永琳に似ているかと言われるとそうでもないのだが。

 なんにしても、この子は蛇とは関係ない。さきほどこの管を持ってきた時に入れ替わったのだろう。

 女の子を連れて空間の外にでた。早めに蛇を潰そう。

 蛇をもう一度探知する。女の子とは反対側の端にいる。

 半ば走りながら蛇へと向かう。エルン達のことだ、もう兵器の方はかたが付いているはずだ。遅くなってエルンが見つけてしまったら大変なことになる。

 進んで進んで蛇の入っているはずの管が見えた。先程のものと同じく曇りガラスになっている。

 管の傍に行き、先程と同じく空間への扉を開けた。

 その瞬間、俺の背後にあった管の列が一部分だけ沈み込み、石の壁が開いた。


「あら、零」


 開いた石の壁からエルン一行が入ってくるのと、管のガラスが消滅するのは同時だった。

 エルンたちから目を放し、見えてしまったものが目に入った瞬間にはもう、部屋全体に穢れが漏れだしていた。



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