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東方兄妹記  作者: 面無し
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一家の娘は当然ながら

風邪引いて遅くなりました。申し訳ない。

「おやおや、これはまた物騒というか質が悪いというか、なんとも趣味の悪い絵面の夢だね」


侵入した白髪少女の夢の中。そこは無数の円筒形の筒が等間隔に並んだ薄暗い空間だった。円筒形の筒の中は時折泡のようなものが立ち上っている。ゾンビの出てくるゲームにありそうな実験室だ。

 しかも、よくよく見れば筒の中に小指大の人間が浮かんでるし。言葉にも出したが趣味の悪い。


「で、この夢を見てる張本人はどこなんだって話だね」


 まぁ、この筒の列を見れば予想がつくが、どうせこの筒の列の先にいるのだろう。

 こんなところにいるのはあまり気分は良くない。さっさと歩くことにする。



 予想通りといったところか。目前には白髪少女の入った筒がある。

 少女はうつろに俺を見つめて口を開けている。ずいぶんマヌケな顔だと思った。

 頭にある永琳の顔で彼女の絶対にしない顔をするものだから違和感がある。正直見ていて面白くはない。だからこそ、用事はさっさと済ませてしまおう。


「よう、君は返事できるタイプの夢かな?」


「はい」


 幸運だ。夢の浅い深いじゃまだ浅い方だったらしい。能力を使わないですむかもしれない。


「具体的に話せる?」


「いいえ」


 うん、予想通りイエス・ノーだけか。まぁそこまでは期待していない。これで十分だ。

 先程から疑問に思っていることを一つずつぶつけていこう。できるだけシンプルな質問のほうがいいだろう。はい、いいえで答えられない質問をしてしまったら困るのは自分だ。


「さてと、じゃあ、君は人間?」


「はい」


 よし、基本事項は問題ないらしい。外見通りこの子は人間のようだ。


「じゃあ次、君のご主人の出身地は地球?」


「いいえ」


 ビンゴ。今回の犯人は宇宙人だ。永琳もどきのこのこを見るに、月人だろう。おおかたつきでなにかしでかして地球に落とされたんだろう。地球では穢れのせいで月人の寿命は元々からかなり短くなる、元の寿命から見れば死刑と言ってもいいだろう。永琳の一部は何かした時に手に入れたんだろう。


「じゃあ、そのご主人ってこの城の地下にいるかな?」


「いいえ」


「じゃあ、月一族っていうのの城かな?」


「はい」


 オッケー、それならこの城はどうでもいい。ここにいる厄介なものはみんなに任せれば十分だろう。

 目覚めたらここの地下の掃除を呼白以外に頼んで月の城へゴーだ。




   ****



「おっと、ここが王の部屋ね……ずいぶん風通しの良いこと」


 特に苦もなくついてしまった中ボスの部屋の扉 (そんなものはなくなっていたが)をくぐった。

 状況は、凄惨というしかないだろう。被害者は一応無傷のまま倒れているが、それはあの子に治してもらっただけで、怪我はあったはずだ。

 そこかしこにまだ乾いてない血痕があるし、内装は柱もボロボロ瓦礫の破片が壁に突き刺さり、人を押しつぶしたことがわかる血のついた破片は数知れず……。

 呼白ちゃんには少し刺激が強い、入ってすぐに目隠しをさせてもらってよかった。


「エルンさん?」


「ごめんね、これは見せられないわ」


「そうですか」


 素直で聞き分けが良い、なんていい子。あの零と一緒にいる子とは思えないわね。

 さて、寝ている人数は三人王と副魔術師長、そして騎士団長。こいつらは拘束しておくくらいでいいだろう。魔術の使用を制限すれば抜けられないだろうし。


「さっ、武闘派はメインの地下に行くわよ。呼白ちゃんはこの部屋以外ならどこでも入っていいからね」


 魔術で部屋の扉を新たに作りながら、目隠しを外された呼白ちゃんに私はそういった。


「分かりました。いってらっしゃい」


 笑顔で私達を見送ってくれる彼女に全員頬が緩んだ。子供は可愛い。私もいつか欲しいものだ。

 っと、のんきに言ってられるのはここまでだ。


「さて、準備はいいかしら? 死ぬ覚悟は?」


「ありませんよ。愚問ですか主よ」


「帰らないと国が傾くので死ねませーん」


「右にほぼ同じく、家が消えます」


「死ぬ覚悟あったらこんな軽装備で来ないわよ」


「そうよねー」


 なんともしまらないものだ。まぁ、零が相手でないのだからこれでいいだろう。


「行くわよ」


「「「「おう!」」」」



     ****


「ここは……書庫かな?」


 エルンさんと離れてからしばらく、私は本棚の部屋に来た。

 英語は……私にはよくわからない(エルンさんは日本語ができるし)。でも大丈夫、こんな時のために翻訳の術式を教えてもらったんだし。


「えっと……『しきたりの魔術』『拷問術百選』『人心操作の法』……なんか読む気しないなぁ」


 なんだか嫌な内容のものばっかり。もっとこう……虹の火炎をだすやつとか、水の龍を出すやつとか、土の城を建てるやつとか、そういうのはないのかなぁ?


「何を探しているの?」


 突然背後から声がした。驚きでビクリと体を揺らした私は声も出せずにそのまま振り向きながら尻餅をついた。

 振り向いた先にいたのは白髪の女の子。私と同い年ぐらいで、全身黒い服を着ているのが特徴的だ。


「えっと……」


 私は目の前の子に聞かれたことの答えが見つからずに言葉に詰まる。

 女の子はそれを見て不思議そうに首を傾げてから、私に手を差し出してこういった。


「ここは今悪い人がいるから危ない」


 それ私ですとは言えなかった。そもそも殆どはお母さんのやったことだ。しかもあのメンバーの中で私なんて最弱どころか戦力外といっても無理じゃないのだ。

 私はおとなしく少女の手をつかむ。起き上がってみると、女の子は私より少し大きかった。


「ありがとう。……私ね、呼白っていうの」


「私は……」


 女の子は困ったように目を泳がせた。そして、しばらくした後、


「朔よ。よろしくね」


そう、答えてくれた。

 彼女の案内で城を抜けるまでの間。彼女は一緒について来てくれた。いざとなったら守ってくれるらしい。私と同じくらいなのに、袖から時々見える手は女の子の割には太くて、私なんかより強いんだなぁと思って少しカッコいいなぁなんて思っていた。


「朔ちゃんは城から逃げないの?」


「悪い人たちを倒さなくちゃ、さっきはやられたけど今度は負けるつもりはない」


 さっき負けたってお母さんにだよね。……次だとしたら束さん達、また負けちゃうよね。


「だめだよ。朔ちゃん。一回負けたんでしょ?」


「呼白は知らないけど、私はふつうじゃないから大丈夫」


 朔ちゃんは心配する私に大丈夫とでも言うように笑ってそういった。

 ふつうじゃないって多分異能持ちってこと。でもダメだよ、それくらいであの人たちは負けないもの。


「もしそれでも負けたら?」


「また挑む、ここにそういう人を入れないように命令された」


 当然というように朔ちゃんは言った。

 止めたい。多分、何度挑んでも結果は同じだろう。そして、最後は魔術で眠らされるだけだ。朔ちゃんは今回の黒幕側の人、お母さんがいる時点で黒幕の敗北は絶対だし、最後には朔ちゃんには何もなくなってしまう。戦う意味は……ないよね。


「ダメだよ、朔ちゃん。今日は私のお母さんがいるもの。朔ちゃんに命令を出してた人も絶対負ける。だから、朔ちゃんは全部なくすだけだよ」


 私は素直に全部話すことにした。隠し事は得意じゃないし、正直に話すこと以外に人に意見を変えて貰う方法なんて私はひとつしか知らないから。


「呼白? それは、あなたが悪い人たちの仲間だから出た言葉?」


「そうだよ。私は今日来た悪い人の娘だよ。

 言ってあげるよ。朔ちゃんは負けるの。朔ちゃんに命令してる人も負けるの。だから、命令を聞いて戦うなんて意味ないの。

 だから、いっちゃダメ。全部なくしたら朔ちゃんはきっと空っぽになっちゃうから。だから、朔ちゃんに自由になってもらうために、あの人達とは戦っちゃダメ」


 朔ちゃんは私の言葉をしっかり聞いていてくれた。そして、それを聞いて俯いて考えてくれた。

 しばらくして、俯いた顔を上げた朔ちゃんが言った。


「分かった」


「じゃあ」


「でも、ただじゃ聞けない。理由がいる」


 私の首もとにナイフがあった。身が固まる。戸惑った私は朔ちゃんを見て聞いた。


「朔ちゃん?」


「ただで聞いてはあげられない。ごめんね。そういうふうに私はできてるんだ」


 朔ちゃんは申し訳無さそうにそういった。

 そして、私の首からナイフを離して、少し距離をとってこういった。


「私を負かして、そして新しく命令して」


 そう言って彼女は武器を構えた。

 状況は、読めなかった。どうしてすぐに話しに乗れないのか、戦わないといけない理由はなんなのか、さっぱりわからない。『そういうふうにできている』なんて言われたって私の知識では追いつかない。

 ただ、朔ちゃんの言っていることが事実なら、彼女を倒せばいいわけだ。

 結論は早かった。じゃあ、そうしよう。彼女を倒そう。

 私も神谷一家の一員だ。戦うことは歓迎だ。殺さない程度に、倒せばいいわけだ。

 さっきのナイフの感触を思い出して、少し頬が緩んだ。


「いいよ朔ちゃん、いつでも、倒してあげる」


 少し微笑んで、私はそう答えていた。

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