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東方兄妹記  作者: 面無し
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侵入

「さてと、さっさと始めちゃいましょ。あんまり遅くしていると零に急かされるもの」


 そう言ってエルンさんは飲み干したカップをウィルさんの持つお盆に乗せ、自分はそそくさと本棚を漁り始めた。

 私達は特に用意するものがない、武器も何も私と束さんは転移の札があれば荷物から札は移動させ放題だし、須佐之男さんもいつでも剣を呼び出しできる。要するに、暇です。

 飲み干してしまったカップをお盆においてしまい、やることがなくなってしまったな私達は顔を見合わせた。エルンさんを手伝うにしてもこの屋敷では勝手が効かないし、なにをすることもできない。

 と、悩んでいる私達の前にウィルさんが一枚の大きな地図を渡してきた。


「これから行く王城の見取り図です。主は戦闘ができないという触れ込みなので、基本的な制圧は皆様方にしていただくことになると思います。ですので、敵が何処から攻めてきそうかなどをこれで確認していただくのが良いかと」


「おっ、ありがたいね」


「というか呼白ちゃんにも戦わせるのか?」


「どっちでもいいわよー」


 私のみを案じる束さんの声にエルンさんはそう答えた。


「戦闘といっても非殺傷でお願いするつもりだったから殺すことはないし、零の娘がそこら辺の衛兵に負けるわけないもの。さっき見せたあの生物も最初の制圧では出てこない予想だから全然大丈夫」


「最初の制圧……ということは二回目三回目があるんですか?」


「地下施設があるって噂……そこの制圧時は大人限定」


 エルンさんは大人の部分を強調してそういった。先ほど私には見せてもらえなかった物を見た二人の顔を思い出して知りたい気持ちもあったが、少し怖くて私は納得するように頷いた。

 地図に目を移してみる。王城というだけあって部屋がたくさんある……と思ったらお父さんの別荘のほうが部屋の数も家の大きさも勝ってた。意外と王様と言ってもすごい人出はないのかもしれない。

 男の人二人は地図を見ながら自分なりの感想を言っていく。


「迷路のように入り組んでるわけでもない。しかもこれ、頭のなかで地図を作ったら不自然につながる壁の中の一本道があるし。玉座が見える位置に高い塔があるし。出口の数は少なくて、火災が起きた時用のものも無いし。敵が分断できない、王の避難経路がわかりやすい、暗殺できる場所がある、放火されたら逃げにくい、こりゃあ攻めてくれって言ってるようなものじゃないか?」


「うーん、それだけ自分を防衛している魔術師に自信があるとかじゃないか? いくら何でもこれは……さすがに気づかないわけ無いだろうし、将軍とかの身分についてるやつから指摘があると思うんだが」


 二人の言葉を聞く限り、このお城はかなり攻め落としやすいみたい。罠の基本は不意打ちとお父さんが言っていたし、こんなにも一本道でつながっているようでは一網打尽にしますと言ってるのとおなじだ。

 お父さんならいいそうだ。この城なら呼白だけでも落とせるぞ、なんて。


「準備できたわ。行きましょうか」


 呆れたような目をした私達のもとにエルンさんが戻ってきた。そして、私達の表情を見て、言いたいことがわかったらしく苦笑した。


「言ったでしょう? 全ては証拠集めにかかる時間だったの」


「「「なるほど」」」


 私達は一句違わず同じ言葉を返していた。



     ****


 姫ちゃんに会いに行こうと能力で街を探索した時、不自然な座標登録を見つけた。

 俺と姫ちゃんの能力は効果がリンクするようにしてある。離れていても、言葉がなくとも連携が取れるようにだ。

 ここが登録されているということは何かあるのかと思いすぐ飛ぶと、小さく縮こまって震える男を発見した。なんだこいつ。


「おい、お前さん」


「ヒイイ!!」


 声をかけると男はビクリと体をのけぞらせて声を上げた。そんなに怖くしたつもりはなかったんだが。

 周りは血だらけだし、だいたい何があったかは想像がつくが、この男はどうしようか。

 俺はビクビクと震える男に思い切り顔を近づけて逃げられないようにしながら聞いた。


「もう一回洗いざらい吐いてもらえるよな?」


「は、はイイイ!!」





 しばらくして、罰だろうからと男をその場において俺は地上へ出ていた。

 目前には王城、そして、そこへ真っ直ぐ続く愛しい香りとその気配。まぁ若干の怒気も感じられるのが心配ではあるんだが。

 男の話した内容は姫ちゃんが怒るには十分な内容だったし、どうせ俺の考えているとおりなのだろう。城の連中はご愁傷様といったところだ。

 俺の隣の空間が裂けた。どっかの魔術師が帰ってきたらしい。

 裂け目から腕が伸ばされる。もがくように動いた腕が空を切った。出ように出られないらしい。

 仕方なく引っ張って出してやると、紫の頭髪のあの魔術師が尻もちとともに現れた。


「もうちょっとやさしく送り出したりってできないの?」


「うちの家族以外はこういう扱いだと思ってくれ」


「酷いわねぇ」


 フェリーは溜息を付きながら起き上がった。


「で、どうだった? 信用はできた?」


「今現在、人を殺してないっていうのは信用してあげる」


 それで十分だ。妖怪は人に恐れられなければいけないものだからな。今までも、これからも脅威でないっていうより好都合だろう。


「じゃ、今から俺に手を貸してね」


「ええ、いいわよ。ってなんで私の手を掴んでるの?」


 何を簡単なことを聞くのか。


「飛ぶからだよ」


「飛ぶ? 空を?」


「いや、空間を」


空間転移の技『転送』にて、瞬間移動する。ブレた景色は空間転移が終わると同時に晴れ、目前には分厚い金属で覆われた重厚な門が、腹に大穴を開けて待っていた。


「綺麗な破り方、さすが姫ちゃん」


 綺麗に繰り抜かれたもんの大穴を前に俺はそんな感嘆の言葉を口にした。

 そして、連れてきた連れに同意を取ろうと顔を向け、その連れが盛大にむせているのを見て一気に冷めた。


「うっゲホゲホっ」


「なにやってんだお前」


「何って、あんな乱暴な空間転移するからでしょう!?」


「慣れだよ慣れ」


「私の魔術のほうが絶対安心安全だわ」


 酷い言われようである。魔術なんかより妨害されにくいし絶対こっちのほうがいいのに。

 なんて口のようなことを考えている間に、フェリーは門へと目を移しその口を開ける。

 確認を取るように、震えた声が俺に問う。


「これってあなたの奥さんよね?」


「そうだよ。きれいな切り口だろう?」


 俺は自慢げに答えた。

 フェリーはそれに呆れたようにため息を付き、諦めたように頷いた。


「綺麗……そうね、これ以上ないほど綺麗だわ」


 周囲に目を向ける。当然ながら野次馬がこれでもかと集まっていた。

 正直見つかろうと見つかるまいとどうでもいいと思っていた俺はフェリーの手を引いて堂々と野次馬から出ていき、門をくぐり抜けた。

 なんだか予め知っていたとでも言いたそうなフェリーを横目に、俺は後ろの野次馬たちに手を振り、ついでと言ってはアレだが、野次馬が乱入しないように門の大穴を塞いでおいた。

 してやったりと思いながら堂々と城の中へ続く次の大きな扉を目指し歩いて行く。

 背後からは大きな大きなざわめきが聞こえていた。



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