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東方兄妹記  作者: 面無し
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黒竜

 「第二試合だ」零はそう言った。炎に焼かれ炭になった体を瞬時に再生し、更には燃え尽きた服まで再度作り直しながら、獲物を狩る狼のように目を光らせてそう言った。

 背筋に寒いものが走る。今まで見たこともないようなものを発見した時の喜びとそれが自身の人生を狂わすものだと知った時の恐怖を混ぜた時のような、そんな寒さ。

 思わず、笑みがこぼれた。未知を体験できることに。

 思わず、一歩下がった。恐怖が目の前に有ることに。

 だが、これ以上は下がれない。だって、零は海の上での力をまだいくらも見せていないのだから。


「そうよね、まだまだ先があるはずだわ」


 息を吸って目前の脅威を見つめる。彼の目がニンマリと笑う。

 ……それが合図だった。


「『クラレント』……炎弾」


 零が剣先をこちらに向けると、火球が出現してこちらを襲う。

 対処は先程と同じだ。炎熱を吸収する術を放ち、まずは巻き込む。


「炎術『フラムイーター』」

 

 私がそう唱えると私の前に上下に広がる炎の壁が出現する。そして、それは火球を吸収しながら零を挟むように迫る。

 彼の対処はおそらく水による消化と同時に反撃。


「『エクスカリバー』……『水波怒涛』」


 予想はあたっていた。零の言葉とともに彼の周囲から水が出現し私の火を飲み込んでいく。

 水には雷だ。木の力に金属の力で、雷そのものがなくとも代用できる。


「複合術式『ライトライン』!」


 私の火を飲み込み、迫る波に向けてそう言い放つ。瞬間、目前に現れた黒い塵が擦れ、雷を起こし、それは私の魔力によって零の方向へと方向を決める。

 雷の速度は音より速い。見てから避けるのは不可能……防ぐはず。


「いや、見る前から避け始めたなら話は別だろう?」


「え?」


 背後から突然聞こえた声に取り乱す。あわてて振り返ってみると、そこには先程まで前にいたはずの彼がいた。

 私の魔法が発電を完了し先ほどまで彼がいた座標めがけて飛んで行く。

 白く光った雷の閃光は、なぜ、どうして、と疑問を浮かべる私の眼前を照らし、彼の余裕を照らしだした。


「簡単な事だ。単純な移動でフェリーみたいな頭のいいやつに勝とうと思っても敵わないからな。スマンが今回は瞬間移動を使うことにしたんだ。

 フェリーの魔法にしてみると……転移魔法かな?」


そんな卑怯な魔法を持った覚えはないと言いたい気分だ。私の転移魔法はあんなに早く発動できる物じゃない。大掛かりな魔法陣と厄介な座標設定が必要な面倒なもの。そうホイホイ使われてたまるもんですか。

 でもまぁ対処法がないわけではない。要は何処に入っても避けられない攻撃をすればいいのだから。


「本当、強いのね。……これあげるわ、日術『サンライトブースト』」


 手に出現させた日色の玉、それを特に合図もなく零へと投げつけた。

 不意の攻撃で目を丸くした零の目の前で、輝く玉は……強烈な閃光とともに弾けた。


「めくらましっ!?」


 慌てて目を塞ぐ零を横目に私は零を探知するための結界を張り、目眩ましのお陰で精密射撃はしようとせずに近接で殴りに来るはずだと予想を付けて次の術を準備する。

 私のすぐ背後に結界が反応する。急いで振り向いて次の術を放った。


「鉱術『スティロハウンド』」


 放ったのは追尾型の術。座標追尾ではなく生体追尾だから瞬間移動しようと転移先まで追ってくる。

 また予想はあたっていて、拳を振り上げていた例は私の攻撃を見るとすぐさまその場から消え、直上から反応が出た。

 追尾は出したしさっきの目眩ましも有る、下手に動くことはできないはずだ。

 私は上に向けて避けられないような範囲攻撃を選択した。


「月術『ルナエクリプション』」


 発動したのは月食の術範囲内の空間を圧縮し、その場のものを壊さずに拘束する。

 これにより私より上方向の空間は塞がれる。もしこれを避けたなら、床に出るしか無い。

 零は追尾弾を一目見ると消え、私の背後に反応が出る。そっちは予想済みだ。もう術が出してある。


「避け続けたサービスよ。複合術『ファイブ・サークラ―』」


 『ファイブ・サークラー』は五行の術を炎術から土術、土術から鉱術へ、陽の方向にサイクルさせる術。それぞれの五行の力は、サイクルに従ってどんどん生み出され、強化されていく。消しても消してもまた強くなる厄介な術……どう対処する?

 私は期待で胸が膨らんだ。一応の予測だが、これならあの海上での攻撃を超えられる。

 そう、これなら、彼に勝てる攻撃のはずだ!


「よし、じゃあこれにしよう」


 零の静かな声が聞こえた。瞬間、私の術が消えていた。

 そして、目の前には一匹の竜。海上にいた金属のような鱗を持った漆黒の竜。


「どうして……」


 口から疑問がついて出た。

 竜は楽しそうにグフグフと笑い。一息つくといつもより太いが零のものとはっきり分かる声でしゃべりだした。


「今の竜の姿は俺の武器の中でも特に俺に特注したものを変化させて纏った状態だ」


「あの時の姿よね。でも、私の術は何処に?」


「その武器は他の生命体から切り離された生命力を吸収できる。まぁ、吸収のためには口を作る必要があるんだけどな」


「じゃ、じゃあ……まさか、私の魔法を食べたの?」


 私は驚愕で目を見開いていた。竜がご名答とでも言うように低く唸り答える。


「魔力は魔女が内に保つ力……生命力とは性質の同じ別の物質のようなものだよ」


 それを聞いてはっとする。


「じゃあ、その姿でいる限りは……」


「フェリーの魔法は通じない。瞬間移動は本物の反則をばれさせないための反則だ」


 竜が述べたのは王手の一言だった。

 私は両手をあげた。


「参ったわ。私の負けよ」


「うん、楽しかったよ七日の魔女さん」


 竜はその姿を崩しながら笑っていた。



      ****


「あのー、私に用事というのは……」


「はいお茶」


「あっ、どうも」


 おばあさんに私への用事を問いなおして十分ほど。

 テントの奥に連れられた私はなんとお茶まで出されてのんびりしていました。

 本題が聞きたいんですけどねぇ。

 速く話してくれないかな―なんて思いながらお茶を飲む……美味しい。


「美味しいかい?」


「はい、とても。それで、私に用事は……」


「はい、クッキー」


「あ、どうも」


 どうにもこのおばあさんは苦手です。なんだか全く読めない感じがします。

 黙視さんでもいればこんな読めないおばあさんも考え駄々漏れでわかりやすい人なんでしょうが、あいにく私にはそんなものないですしね。

 クッキーは普通のクッキーですね……美味しい。


「それで、用事は……」


「ああ、忘れてたよ。今話すからねぇ」


 おばあさんは間延びした声でそう言うと、私の前の椅子に座ってお茶を一口飲んでから話してくれた。


「実は、さっきお嬢ちゃん達の話を聞いてたんだけど、お嬢ちゃん、この街の赤い城の城主と知り合いなのかい?」


「ええ、まぁ」


 私が答えると、おばあさんは急に前かがみになって深刻な表情をしながら用事を言ってくれました。


「実わね、この国の魔術師長エルフェリーが国を乗っ取ろうとしているっていう話が出ているんだ。

 その手始めにここの城主を相手にするっていう話が流れていてさ。」


「は、はぁ」


 何やら物騒な話が出てきましたね。クーデターとは……魔法使いの待遇が良くないとかが原因でしょうか?

 でも、その話は何処から出たんでしょう?


「あの、信憑性は何処から……」


「ああ、これはこの国の魔術師団の副団長からの告げ口なんだ。

 この国は好待遇と高給を魔法使いたちに渡しているから、こんなことはないと思っていたのにって言ってたよ」


 エルフェリーという人は国の魔法使いの集団みたいなものの長で、副団長からのタレコミ……と。

 理由はよくわからないが、副団長という近くにいる人間の話だし正しいんじゃないかってことですか。

 私に話したのは最初に狙われるエルンさんの知り合いだからということでしょう。


「それで、私に何を……」


「エルフェリーさんが本当にそんなことを考えているのか調べて欲しいんだ。

 お嬢ちゃんはこの国に慣れてないようだったし、近くの国の人のようだったから、そういう人なら嗅ぎまわってもすぐに逃げられるんじゃないかと思ってね」


 まぁ確かに色々嗅ぎまわっても私ならどうとでもできますが……いいんでしょうか?

 兄さんなら……どうするんでしょうか……兄さんなら……受けるでしょうね、楽しそうだとか言って。

 兄さんがそういうのなら……私は同意見です!


「分かりました。お受けしますよ」


 にっこり笑顔で返事をする。この際細かいことは記にしないほうがいいでしょう。調べれば分かることですしね。


「本とかい!? ありがとうねぇ」


 そう言っておばあさんはクッキーとお茶を追加してくれた。

 ……美味しい。美味しいのですから、いいでしょう。私の中でお菓子より強いものは兄さんしか無いですから。

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