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東方兄妹記  作者: 面無し
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油断の因果応報

「ここは……城下町ってことで間違いないですよね」


 エルンさんのいる紅魔城から八百メートルほどの地点まで来ました。

 城下の都市は、城を中心として円形の城壁があり、その中に石造りの建物が城を囲むように建っている。道路は城から放射状に大きな道が伸びていて、それぞれが商店街として賑わっているらしい。

 この時代の都市としてはあまりに広い。兄さんがエルンさんと関わって、時代の錯誤でも起こってしまったのでしょうか。でも、これくらいなら人の存在には関わりが無いはですし、可愛いものでしょう。

 東側の城に続く道を歩く。かなり人が多い。百万都市なんて言われた江戸の日本橋だって目じゃないと思うほどに。しかたがないので、能力で地図を作り、家の裏の細い道を行くことにした。


「ふーむ、裏道に入ったはずなんですが、普通に賑わってますね」


「一般の人間という感じだな。悪いのがうろついてる用な感じではないし」


「城下町の政治は基本的に城主が握ってるんだろうし、城主が優秀ということか」


 建物の裏の細い道に入りました。明かりは少なく、薄暗くはありますが、服の破れている人がいたり、痩せた子供がいたり、怖い人が屯していたりなんていう裏通りのイメージとは真逆の光景に束錬さんと須佐之男さんは関心した様子でそう言った。


「姫さん。知り合いのエルンさんってどんな人? 城主だし、凄いの?」


「とってもすごい人ですよ。魔術もつかえますし、基本は明るい性格の人ですが、貴族のお嬢様みたいな清楚さと威厳を出すことの出来る人です。

 特徴は、日によって小さい女の子と普通の女の人の姿とが変わることですね」


「姿って急に変わるの?」


「はい。起きたら変わっていたとか普通にあるらしいです」


「大変そうな体だね」なんて言いながら呼白ちゃんは赤い城を眺めた。

 氷河期が終わるくらい以来に見た紅魔城は存在感がはっきりとしていて、王様でも目前にしたように圧倒される。塗装の紅が月日によって少し薄くなり、年季が伺えるせいでしょうか。

 窮屈な表街道から逃げてきた人の中を、観光気分で進んでいく。ふと、目の前にテントが見えました。そして、そこにはおばあさんが一人。

 裏通りは基本的に露店も含め、お店はいままでありませんでした。裏もそれなりに人がいるとはいえ、表のほうが圧倒的に人が多いからでしょう。なのに、あえてこの場所にあるということは何かあるのでしょうか。

 他の三人は特に店は気にしていない様子。まぁ、それもそうでしょう。大きな街ならばこういう店があっておかしいと言い切るなんてことは出来ませんし、何より私達がここを通るのは今回が始めてです。

 違和感はあるけれど、気にすることはないと思い前を横切ろうとしたとき。


「待ちなさいな、お嬢ちゃん」


 おばあさんに指差しで呼び止められた。足を止め、おばあさんの方を向く。おばあさんはなにか珍しいものでも見ているかのように私を眺めていた。

 他の三人が私に合わせて足を止める。急に話しかけてきたおばあさんと私の間を交互に見ていた。


「大丈夫ですから先に行っててください。呼白ちゃんがいればエルンさんには通じるはずです」


 困惑している三人に大丈夫だというつもりでそう声をかけた。


「大丈夫か? 男の俺でもついていたほうが……」


 須佐之男さんが気遣いの言葉をかけてくれる。ありがたいが、呼白ちゃんについてもらうことにしましょう。この中で一番弱いのは彼女ですし。


「私は兄さんの妹ですから大丈夫ですよ。呼白ちゃんをお願いします」


「そうか……じゃあ、呼白ちゃん、行こうか」


「あ、はい。じゃあお母さん。気を付けてね」


「はい。またあとで」


 呼白ちゃんに手を降って、彼女が二人に連れられるのを見送る。呼白ちゃんは心配そうに振り返りながら行くのが見えた。無事に、帰ることにしましょう。泣かれると困っちゃいますしね。


「それで、何でしょう?」


 私は少し挑戦的な含みを持たせて、おばあさんに答えた。


    ****


 今いる国はおそらく現代のヨーロッパにあたりのところにある。まぁ、別世界であることと、俺の介入もあるから、同じ歴史をたどっているとは限らないので、どの国とも違うだろうが。まぁ、歴史上の有名な人物が生まれなくなるほどの介入はしていないはずなので、そこら辺は大丈夫なはずだ。


「炎術『フラムジェイル』!」


 まぁ、都市の話なんていいだろう。今は……この四方八方の炎の囲いをどう抜けるかだ。

 フェリーの放った炎の魔術は、網上に広げられた火炎が相手を囲い、焼きつくすもの。しかも、もし相手が炎の攻撃を仕掛けていた場合、その炎も吸収して巨大化する。

 右手に炎の剣を携えた俺はため息をつく。さっき放った一撃がモロに吸収された。俺を囲む炎はあまりにも大きく、そして隙間がない。

 炎で出来た看守と網の監獄は、俺の十億度の炎を纏い迫る。身のこなしで避けることは……叶わないだろう。


「誤算だったな」


 そう言いながら観念して動きを止める。

 そう、完全に油断だった。吸収なんて吸収できない攻撃なら大丈夫だと考えたことも、能力を吸収する魔術がないなんて高をくくっていたことも。そして、戦っている前から彼女が作戦を立てているなんて考えなかったことも、その全てが完全に油断して相手を舐めて掛かった俺の間違いだった。

 眼前に炎が迫っていた。




 時間を戻そう。何故今オレがこんな炎の監獄に迫られているのか。まぁ、答えは単純にフェリーと手合わせをしているからなんだが、その経緯について話そうと思う。

 事の始まりは彼女の魔法の試験を俺が手伝うといったことからだ。


「いいの!?」


 俺の申し出に彼女は目を輝かせながら言った。まぁ、元々の目的が彼女の魔法を体験することなので問題はなかった。

 「早速準備するわね!」と言って彼女は部屋から飛び出し、最初に出会った円形のホールを魔術で改造し始めた。ノリノリの様子で改造を施した後には、おそらく俺の『流星の尾』を数発を圧縮発射しても貫けない超強化円形ホールになっていた。


「ささっ、遠慮なくいつでもかかって来て!」


 両手を広げてキラキラと目を輝かせ、俺に何か技を放てと言ってくる彼女に俺は微笑ましい物を感じながら、初手の武器を取り出す。


「『零式』」


 選んだ光学兵器の引き金を俺は容赦なく引いた。

 空色の光線が銃口から発射され、前が閃光により白く見えなくなる。

 フェリーはどうしたかと目を細めた直後、背後から殺気を受けた。

 意表を突かれながらも後ろを振り向くとフェリーが立っていて、彼女が前に掲げた手のひらにはさきほど俺が放ったはずの零式と同じ空色の光が周囲に金属の反射板のようなものを展開されて浮かんでいた。


「土術『クリスタルリフレクション』」


 閃光が放たれる。鏡面に反射して拡散しながら俺の体を焼いていった。


「『流星の尾』」


 焼かれていては埒が明かない。俺はもろとも吹き飛ばすために赤いビームを放った。尾よりも弱いエネルギーである青の閃光は赤に飲まれていき、フェリーへと迫った。

 そのとき、彼女が手を差し出したのが見え、次の瞬間、尾が跡形もなく消え失せていた。


「うっそ!?」


「お返し」


 驚く俺にフェリーが撃ってきたのは俺の放った『流星の尾』だった。

 驚愕に口を開けながらも、吸収の術でも使ったのかと結論を付け、ならば物理で攻撃しようと四剣の内から緑の刀身を持つエアを取出し、能力で刀身を伸ばしてビームごと切断する……はずだった。

 ビームは形を変えて手の形になると、剣を受け止めてしまったのだ。


「その剣の力もらうわね!」


 フェリーがそう叫ぶと彼女の作った大きな手を白く見えるほど強烈な風が覆っていく。

 そして、手を覆った風はその勢いのまま俺のエアを吹き飛ばすと、今度はその手が俺を掴まんと飛んできた。

 俺は落ち着いて、今度は炎剣のクラレントを取り出した。

 集めた風を一気に燃やして利用しようと考えたのだ。『百火龍鱗』も使ってクラレントの炎の威力を底上げし、風の腕を切りつける。一気に燃え上がった風をこちらの支配下に起き、周囲に展開した直後……今の状況になる。



 炎が俺に降りかかっていた。




 『油断』手加減という形でいつの戦闘でも俺はしている。今回もそうだ。全力を出す気はさらさら無いし、様子見みたいな感じで戦い始めた。

 ああ、それがまずかったんだろう。エルンの近くにいるのだし、せいぜい弟子たちと戦う時くらいの緊張感は持つべきだったのだ。

 それに、彼女が論理的に考える人間だというのを考えるのも怠っていた。尾都やら国下やら天やらなにやら、直感で適当に対処してくる奴らが俺の周りには多すぎたか。奴らと違って彼女の対応は的確かつ効率的だ。ゆえに、俺のその場しのぎなんて屁でもなかったのだろう。

 俺が馬鹿だった。だから、今のように焼かれることになるのだろう。

 五感は消えた。十億度という人類が持ちえる最高の炎は、俺の感覚という感覚を一瞬で持ち去っていった。

 ああ、久々だよ。久々に悔しくなった。

 霊力を強化し、一気に体についた炎を吹き飛ばした。

 体を強化する。底上げされた再生能力が五巻を再生させ、周囲を把握させてくれる。


「そこから立てるの……?」


「ああ、あたりまえだよ。俺は、規格外だからな」


 目を見開くフェリーを、炭化して焦げた顔を持ち上げながら睨みつける。


「第二試合だ。フェリー、今度は手加減ありでも……容赦なしだ」


 フェリーの顔が引きつるのが見えた。

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