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東方兄妹記  作者: 面無し
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リヴァイアサン

 船を支え手ながら、戦った三人に温かいお茶を出した。


「うまー」


「お……零さん、ありがとうございます」


「零がお茶を出してくれるなんてなんだか新鮮だなぁ」


 三者三様の反応を聞きながら姫ちゃんに手で合図をして支えるのを変わってもらう。


「そうかそうか、それは良かった」


 笑顔でそんなふうに話しながら、先程から気づいていた乱入者の方を気にかけながら言葉を続ける。


「まぁ、それはわびだと思ってくれ。今から結構しんどいから」


「「「は?」」」


 三人の素っ頓狂な声が聞こえる。俺はそれを無視して、姫ちゃんの支える船を蹴り飛ばした。


「やっぱ、零は零だったあああああ!!!」


「お父さんの馬鹿アアアアアアアアアア!!」


「熱ゃあああああああああああ!!??」


飛んで行く船から三人の悲鳴が聞こえる。俺はそれをニヤニヤと笑いながら手を振り見送りながら、さっきまで船を支えていた姫ちゃんの方に飛び、彼女の頭をなでた。


「じゃあ、後で合流するから」


「はい、エルンさんのところで待ってますから」


 姫ちゃんはそう言いながら船を追いかけていった。

 さて、俺はというと最後に残った客の相手をして、その後は少々陸の方にいる教会を調べるつもりだ。というのも全ては先程皆お先頭を鑑賞している間に能力で見つけた情報なのだが、教会にいる僧侶……牧師の中には法術というものをつかえる奴がいるらしい(魔法と原理は同じらしいが、魔女のものとは違うということをイメージさせるために法術とよんでいるんだとか)。そして、その法術士の中に何やら超強い奴がいるらしいので、そいつと合ってみよう思ったというわけだ。


 残った客だが、俺が引き受けるのはそいつが強すぎるからだ。名前は確か……


「――――――ッッ!!!!!」


「リヴァイアサンで合ってるかい?」


 耳をつんざくような声にならない雄叫びとともに姿を出した鎧の化け物に俺は聞いた。


「――――ッッ!!!」


 叫びの答えが返ってくる。


「そう、話はいらないってか。いいとも、戦ろうぜ」


 その雄叫びに俺は不敵な笑顔で答えた。


    ****



「――――ッッ!!」


「怖い怖い、体が真っ二つになるところだ」


 化け物に食いちぎられた片腕を再生させながら軽く言う。

 目の前の化け物だが、おそらくは先言ったリヴァイアサンで概ね間違いないはずだ。海中にいる怪物『渦巻くもの』という意味の名前を冠する奴は、陸上の怪物であるベヒモスと二頭一対、もしくは空も含めて三頭一対として知られている。

 こいつがここにいる理由は、バハムートがここにいたからだ。バハムートはベヒモスをアラビア語に直して呼ばれたものだ。ベヒモスと同一存在である彼に引かれたというなら説明はつく。

 ただ、ベヒモスは陸上の怪物だ。おそらく、イスラムのバハムートとキリストのベヒモスは同一存在でありながら別個体として存在しているんんじゃないだろうか。同姓同名の別人みたいなものか。

 相手として不足はない、まぁ十全かといえばそうではないのだが。と、そんなことを考えながら体に強化を施していく。武器が通じないとされているんだし、武器なしでやってみようと思う。


「『激魂歌』『暴君』一千倍『猛虎出草』」


 技名を言いながら頭で戦い方を考える。霊力であいつのからを貫くのが一番いいだろうな。鎧の仲間でも硬いからだとはいかないだろうし。もしも飽きたら、その時は肉体改造で奴と同じようなモンスターにでもなってみようか。

 はてさて、準備ができたところでご丁寧にも待ってくれていたリヴァイアサンに手を振る。

 待ってくれていた奴は待ちわびたとでも言うように飛び出し、俺にもう一度食らい付こうとしてきた。

 俺は軽く一息ついて拳を引き、タイミングを合わせて先程俺の腕を食いちぎったその顔面を横殴りにして吹き飛ばした。


「ささっ、ここからは一筋縄じゃいかないよ。ま、せいぜい頑張りな」


「――――ッ!!!」


 化け物は雄叫びを上げ、勢い良く体をくゆらせたかと思うと、俺の真横には奴のデカイ巨体が。

 落ち着いてそれを受け止め、殴りつけて海へと叩きつける。追撃に顔面に蹴りもお見舞いしてやった。

 飛び落ちる化け物に当たって海が大きな飛沫を上げる。追撃はせずに波立つ水面を眺めて様子見をすることにした。すると、水面から細い高圧の水流がでて俺の下半身を軽く切断していった。


「おおう速いね、気づかなかったよ」


 落ちていく下半身を眺めながら、また、切れた下半身を再生させながら呟いた。この分だとおおよそダメージは殆ど無いと見ていいだろう。ガキの身体能力では、さすがに鎧を貫けなかったらしい。これでも約十万倍にまで引き上げたのだがガキは所詮ガキといったところだろうか。

 では、今度は霊力で浸透させてみようか。そう思いながら水面まで転移し、大きく足を叩きつけて水を吹き飛ばす。すると、水の衝撃を避けた怪物は俺の正面から襲ってきた。

 襲われるのは想定内だ。笑顔を崩さすに手に霊力を込める。そして、ヤツの顎に振るうと同時に能力を発動する。


「衝撃浸透の技『深浸透過』」


 顎にヒットした拳の衝撃が、鎧を超えて柔らかな肉体を襲う。奴が大きく吹き飛ぶ前にもう一つ拳を用意する。


「もう一発、オマケだ」


 二発目にも霊力を込めて大きく放った。奴は大きく上空へと飛んで行く。

 飛んで行く大きな陰苦しげに吠えるのが聞こえる。不敵を崩さす言う。


「どうだい? さっきのとは比べられないだろう?」


「――――!!!!」


 怪物が咆哮を上げながら着水するのを眺めながら今回のは単純だったななどと考える。おそらくはあれは知性がないし、このまま逃げるはずだ。バハムートならば知性があるしこうは行かなかった気がするが、まぁアレでもいいだろう。

 と、転移しようとした瞬間。海面から先程とは比べ物にならないほど大きなあの怪物が大顎を開けて飛び出してきた。さっきのはバハムートみたいな分身だったらしい。


「おおう、これはこれは、食われるフラグ?」


 のんきにそんなことを呟いた俺を気にせず、顎は閉じた。



    ****



「「零!!!」」

「お父さん!!!」


 追いついた神姫さんが映しだした零の戦闘。彼が飲み込まれる瞬間を見た彼の娘と男二人がそう叫んだ。無理もないだろう、あの不敵で余裕のある彼が一瞬にして飲まれたのだから。私自身頭では冷静ながらも、目の前の状況に息を呑んでいた。

 だが、この状況で一番命の心配をしそうな彼の嫁は全く慌てていなかった。それどころか、


「兄さんたら遊びすぎですよ」


などという始末。

 当然これを聞いた三人は驚愕を顔に記して彼女の方を見たが、彼女は慌てず「そのままみてればわかりますよ」と微笑んだ。

 目を戦闘風景に戻してみる。海上ではリヴァイアサンという怪物が悠々と泳いでいる。何処に彼が大丈夫な要素があるのかと思った。が、その時、怪物が唸った。


「――――!!!???」


 苦しそうに体を捻り、怪物が吼える。しばらくして、ひときは大きな咆哮とともに水流が口から出され、その水流の中から空中へと黒いものが飛び出した。

 黒いものは空中でピタリと静止した。形は卵のようで、鱗のようなものに覆われ、そして、その周りを囲むように剣が四つ浮かんでいる。


「あれは、零の剣だ」


 須佐之男がそう言って呟いた。瞬間、四つの剣が黒いものに飲み込まれ、それが光ったかと思うと、そこには一匹の漆黒の竜が顕現していた。

 金属質を思わせる鱗を持ち、その上でスリムな体躯を持つその飛竜。彼は青、赤、緑、茶色の水晶をその背に乗せて、首を震わせたかと思うと、吼えた。


「――――!!!!」


 瞬間、リヴァイアサンの周囲が地獄と化した。集の海水が円形に一気に蒸発し、嵐が怪物の巨大な体躯を掬いあげ、その周りを今度は黒い水が覆い、その黒い水が一気に獄炎に変わった。

 怪物が声を上げる。漆黒の竜はそれを見ながら首をもたげたかと思うと、その口から巨大な赤い光を収束させ放った。そばで見なくても分かる。これは、当たれば私でも……危ない。

 光は怪物を直撃した。強烈な光のエネルギーは怪物の巨大な体躯を意図も簡単に蹂躙し、吹き飛ばしていく。

 飲み込まれた怪物が見えなくなってしばらく。澄んだ空に残っていたのは不敵な笑みを浮かべる男が一人。


「加減はした。またやろう」


 彼はいつもの余裕を見せてそういった。


「じゃあ、また一ヶ月後くらいに、愛しのマイハニー!」


 そして、嫁への一言は投げキッスのおまけまで付けて。


「ダーリン! 私は、いつまでも待ってますから!」


 そしてときめく彼女を見て、ため息を付いた。

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