人魚戦
ばはむーとが現れて三時間ほどたった。未だに出てこないあの夫婦を尻目に俺達は今から行くであろう土地の宗教をばはむーとから学んだりしていた。
「つまり、今から行く土地のによると、世界はあんたを含むたくさんの動物に支えられてるってことかい?」
「ああ、その通りだ。私の体は海を私の鼻腔に置けば、砂粒のようになるというぐらいに大きいとされている。それのせいかしら無いが、現に私の今ここにある体は小さく切り離した分身のようなもので、本体は別の空間に浮かんでいる。支えている物が今ここにある世界であるのかは全くわからんがね」
「これより大きいのが本物の体……お父さん自重って知らなさそうだよね」
「流石俺を倒した男……と言ったって限度があると思うんだがなぁ」
少女と大和の国の神は呆れたように首を振った。が、その表情は何処か楽しそうで、彼等もやはりあの二人はこうでなければと考えていたりするところがあるのかもしれない。俺自身も、あの二人の規格外には毎回驚くが、そうでなければあの二人でないとも考える。とんでもないくらいがあの二人はちょうどいいのだろう。
さて、一段落したので目的地へと移動を始めることにする。ばはむーとの巨体は派手に動くと目立つらしいので今回は金魚くらいの端末を俺が作った水球の中に作ってもらった。端末といえどばはむーとの分身らしいので彼の力をすべて引き出したり出来るらしい。此処から先の妖怪で厄介なのは人魚やくらーけんという烏賊の妖怪らしい。前者は能力が強力で、須佐之男さんはともかく、俺や呼白ちゃんは防げないだろうとのこと。後者は、そもそもの巨体が強力で、ばはむーとが出てきた時のようにな体制で挑まなければ敗北必至だそうだ。ばはむーとの力は規模が大きいそうらしく援護は早々出来ないらしい。が、嵐に巻き込まれて死ぬなんてことは無くしてもらえるそうなので、それを有難く頂戴しておくことにした。
「じゃあ、このまま何もなければいいがな」
「ああ、悪いがそれは無理だと思う」
息をついたところをばはむーとの一言が壊した。聞けば、ばはむーとという自然の化身扱いされている物が近くに出現したことによって、周囲の妖怪どもが引き寄せられるらしい。「私が強力な妖怪ならば別なんだろうが、あいにく私の区分は妖怪ではなく神もしくは世界の化身でね」彼の肉を欠片でも食った妖怪はもれなく強力になれるらしいから、それのせい集まってくるらしい。そこらへんは人間が人魚を食べると不老不死になるのと同じだろう。
そんなわけで、今はまた呼白ちゃんを結界で守りながらの進行になっている。なにか来たらばはむーとが教えてくれるらしいので、そこら辺を期待して待つことにしよう。
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「バハムートが出てきた時の二人の顔……面白すぎ」
「兄さんも人が悪いですね。でも、面白かったことは認めちゃいます」
「助っ人はいざとなった時だけでいいよね?」
「はい、呼白ちゃんもそろそろ大丈夫でしょう」
なんて会話を皆からは見えないようにした空間の中で交わす。イチャコラなんて実際は一時間半程度で終わっていて、今まで出てこなかったのは見ているのが面白かったので見学していただけの話だ。
この後の戦闘は、束錬があれだけの霊力をこれまででどれほど扱えるようになっているのか、そして、須佐之男が本拠地の二本から離れてどれほどまでなら力が出せるのかしているのかを測るためにこんなことをしていると言っていい。
彼らが弱くても困ることはないが、一緒に戦えると楽しい。だから、今回は見学させてもらう。
「さて、姫ちゃんの黒髪でも楽しみながら鑑賞しますかねぇ」
「あっ、じゃあ私は兄さんの二の腕を楽しませてもらいます」
二人でソファに腰掛けながら外を眺めながらニヤつく。
早速来客のようだ。お二人さんがんばれよ。
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「来たぞ、人魚の群れだ。歌に気をつけなさい」
ばはむーとがそう言いったのと水面から彼等、いや、彼女等が飛び出してきたのはそう間がなかった。水色の髪と妖艶な笑顔を振りまきながら彼女たちは船の周りを飛び交い、歌を奏で始めた。
歌を聞いた途端、ぐらりと視界が揺れた。隣にいた須佐之男さんが慌てたように天叢雲剣を振るうと、揺れは収まってくれた。結界内の呼白ちゃんにも影響はない。
これがさっき聞いた人魚の歌というやつらしい。精神に訴えかける魔法の歌。ずいぶん厄介ではある。が、零と一緒に旅できるようにと準備してきた俺にはどうってことはない。
「ありがとうございます、須佐之男さん。じゃあ、反撃開始ですね」
「おうとも!」
先程、歌の影響を相殺してもらったお礼をして、俺は懐から札を取り出した。
ばはむーとによれば。彼女たちの歌は魔法や魔術の類らしい。なら、彼女たちの歌を防ぐのなら一番簡単な方法は耳をふさぐことだ。まぁ音が聞こえないので敵の一を察しにくくなる。が、それは問題ない。
俺は札に霊力を込め術を発動する。すべての音を吸収する無音の空間を広げる術を。
術が発動した直後から、周囲の音が消えていく。そして、聞こえなくなったことで歌の影響は消えた。
須佐之男さんと顔を見合わせて頷き合う。さっきも言ったが音が聞こえなければ周囲の状況は察知しにくい。が、俺達は察知しなくとも、適当に撃っても当たる攻撃が有る。零も得意な広範囲の攻撃が。
須佐之男さんが剣を掲げる。それに合わせるように俺も次の札を懐から取り出し霊力を込めた。
「ここは良い。海は嵐が来るところだから雨天も雷天もいつも以上に使い放題だ」
「ここは広くて強力な力を持つものしかいない。俺の霊力に当てられたりする心配をしないでいいわけだ」
お互いの声は聞こえないが、俺達は目を合わせながらそんな台詞を吐いた。
そして、歌が聞こえないならと飛びかかってきた人魚たちを横目に見ながら、須佐之男さんは剣を振り下ろし、俺は霊力の光を放つ札を空へ放った。
雷撃の白と霊力の青、二つの閃光が視界を駆け抜け、周囲の空気を揺らした。
俺の発動した術は周囲に俺の霊力を流し、霊力に当たった敵に衝撃が入るもの。そして、須佐之男さんの雷天は海に当たればそのまま周囲に帯電するもの。
上空の敵は俺の術を避けるすべはなく、海中の敵は須佐之男さんの雷を避けられない。二人同時にはなった攻撃は、上手くかみ合わさって敵にとって不可避の攻撃を作り上げた。それを、五秒。
五秒後、その短い時間の攻撃で周囲の人魚たちの制圧は完了していた。
周囲に貼っていた無音の空間を解除する。
「やりましたね、須佐之男さん」
「ああ、まぁこの程度なら無問題だ」
自慢でもするかのように鼻息を一つ吹いていると、ばはむーとの慌てたような声が届いた。
「まだだ、次が来るぞ!」
その声に身構えたのと、強烈な妖力と殺気が襲ってきたのはほぼ同時だった。身を裂くような強い威圧感が周囲を抜けていったかと思えば、先ほどのばはむーとよろしく海面が盛り上がり、中から巨大な烏賊が現れた。
「クラーケンだ。巨大な烏賊が噂に噂を重ねて更に大きく妖怪化したものだ!」
ばはむーとの説明が耳に届く。妖怪とは人の心から成り立つもの。噂の中で船よりも何倍も大きいなどとされていたら、ここまで巨大であったりしてもおかしくはない。
「さぁて、二戦目ですよ須佐之男さん。次の手用意出来てますか?」
「大丈夫だよ束錬くん。これでも武を振るうものだからね、十は用意したよ」
巨大な陰をよそ目に二人で結界の中の呼白ちゃんに振り向く。
「そっちは大丈夫?」
「は、はい! 大丈夫です!」
「それじゃ、もう少し頑張って」
「須佐之男さんも、たばさんも、気をつけて……!」
その言葉に手をふって答える。そして、殺気を放ちながら巨大な烏賊にむけて台詞を放つ。
「「二戦目と……行こうか」」
どうも、作者です。宣伝します。
ただいま作者の新作である『東方白記録』をやってます。
一応兄妹記のアフターなので、俺なんかのクオリティで良ければ読んでやってください。
主人公は記憶喪失の白髪少年。
なんかチートな能力持っていたのでそれを使いながら世界を歩く。
記憶の所在はどこえやら、いつか戻ると信じてふらふらします。
ノリは兄妹記と同じなので、良かったら読んでください(二回目)
それでは、感想や質問等などありましたらよろしくお願い致します。




