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東方兄妹記  作者: 面無し
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救出副産物『氷精』

「ふむ、それなら一応可能か」


「だろ!? じゃあ、さっさとやってくれ!」


「おう、分かってるが準備がだな……」


 三人に急かされる中、俺は淡雪を助けるための準備に急いでいた。

 先程俺の空間をどうやったのかこじ開けた三人が話した淡雪を助ける作戦は、十分淡雪を助けることが出来るものだった。

 まず、外側からの汚れによるダメージを俺が直す。

 いままでは、この後のなくなってしまった妖力が足りなくなってしまうのが問題だった。俺が増幅させたのでは量が多すぎる。しかし、他から供給したのでは少なすぎる。この問題を解決したのが三人が作ってくれた作戦だ。

 今回は、妖力の供給源として火華と紫を採用し、そして、二人と淡雪の間にネージュを咬ませて、ネージュに対して妖力の増幅を行う。

 この作戦で大事なのは、ネージュが妖精であること、そして、火華と紫が妖怪であることのふたつ。

 火華と紫に関してはゆわずもがなだ。二人が妖怪でなければ、淡雪に妖力は供給できない。機械で言えば動力になるのがこの二人だ。

 ネージュは機械で言えば動作をするのがこの娘だ。この娘で大事なのは妖精であること、厳密に言えば、人の意志などというチャチなものでなく、自然という不動のものでできた存在であるということだ。

 ネージュという妖精の中であれば、妖怪の妖力を俺が増幅しようと、弾けてしまうことはない。だって、彼女を支えているのは先ほど逃げていった蛇と同じ世界が生み出した力なのだから。

 後は簡単だ。ネージュの中で増幅した妖力を、淡雪の体から漏れ出る妖力よりも量が多く、それでいて、流れだす妖力を止めることが出来るだけの適切な分だけ淡雪に供給していく。

 人数がいるからこそできた作戦だな、と思いながら準備を完成させる。


「よし、準備完了だ配置についてくれ」


 俺が声をかけると、三人は待ってましたというようにすぐ配置についた。

 彼女らに急かされない内にさっさと能力を発動してしまおう。


「一定範囲に通路を築く技『陣通力』」


 まずは、淡雪以外に対して妖力の通る通路を作る。

 開着終わったところで、火華と紫にはその通路に妖力を流してもらう。

 流れる妖力の紫の光は、水路を満たすように通路を通り、ネージュへと流れ着く。

 流れ着いたところで、俺は次の技を発動させた。


「妖力を増幅する技『妖器大成』」


 力は相当抑えたが、ネージュの体から増幅された妖力が飛び出し、周囲に風を吹かせる。こんなものを淡雪に移していたらと想像すると、寒気がする。

 増幅した妖力が安定したのを確認してから、もう一度能力を使って淡雪とネージュの間に通路を作る。今度は、一工夫として、通路の途中にコックの役割をするものを付けた。

 コックを付けたのはネージュからは増幅された大量妖力が常にこの通路に漏れだしてくるからだ。

 このコックを操作する作業は姫ちゃんと呼白の二人が担当する。俺は、淡雪の治療と、妖力の増幅、そして、淡雪から出る妖力を集めてリサイクルすることの三つだ。

 最後の作業を担当する二人に声をかける。


「姫ちゃん、呼白、準備はいいかい?」


「いつでもいいですよ兄さん」

「お父さん、こっちも大丈夫」


「おっけい、じゃあ、作業にかかるぜ!」


『おう!』


 淡雪救出作戦が、今、決行された。



     ****


 作戦を決行してから一時間ほど、無事に淡雪は助けることができた。

 ネージュという妖精を使う手段は思いつかなかった。焦って彼等を忘れていたのか、それとも、本当に思いつかなかったのか。

 おそらくは後者だろう。何十億歳といい年しておきながら恥ずかしいものだ。

 因みに、今回のこの作戦の発案者は呼白らしい。我が娘ながらよく出来た子だ。父としては鼻高々である。

 さて、作戦が終わったのはいい、特に問題もなかった。が、問題はなかったが、想定外のことは起きた。

 俺の作った通路、それに残った妖力と、わずかに流れだしてしまった自然の力がリンクして、新しく妖精が産まれてしまった。しかも、普通の妖精ではないものが。

 ただいま淡雪の家の庭で姫ちゃんと呼白、それから火華とネージュの四人に相手をしてもらっている。

 時折聞こえてくるはしゃぐ声は、作戦が終わって気の抜けた所に聞くと、どうにも力が抜けてしまう。姫ちゃんを除く外の三人は、作戦の後なのにずいぶん元気だった。姫ちゃんと顔を合わせて、子どもとは恐ろしいものだと顔を見合わせたっけ。

 さて、そんなことはいいだろう。今決めないといけないことを話さないといけない。俺は、黙ったままの皆に向けて一言問うてみる。


「どうしようか?」


「どうするもなにも、出来たからには世話するしか無いでしょうね」


 紫がテーブルに顎を乗せ、溜息とともにそういった。妖力を消費して疲れているのだろう、ずいぶん気だるそうな声だ。

 次に、世話をする人を決めないといけない。


「誰が引きとるんだ?」


「あー事の発端は僕だし、この家かな」


 今度は淡雪が答えた。妖力を供給される側であったために、この中では一番体力が残っているだろう。彼も、どこか眠たそうで眠たそうに目が半分閉じている。

 最後に、生まれた彼女のことを調べないといけない。


「あの子って、妖精……で、いいんだよな?」


「一応のところはその認識で大丈夫よ。

 ただ、あなたの通路に残っていた妖力と混ざってたし、厳密に言えば妖怪と妖精のハーフってところかしらね。あーでも、どっちかって言うと妖精寄りの方だと思うわ」


 紫がそう言った。

 と、いうことは、特別力の強い妖精ってところか。


「まぁ、それならここにいても問題ないか」


「妖怪でも問題ないけどね、僕が妖怪だし」


「ああ、そういえば」


 だらけた三人の声が外の声と気分が真逆なためか、家の中が静かずいぶん静かに感じる。

 三人で目を合わせて「このまま寝てしまおう」と目配せして頷きあった。


『おやすみー』


 間延びした三人の声が部屋に響く。その声を聞きながら、俺は決めとかなきゃいけないことを一つ思い出した。


「あ、そうだー、あのこのなまえーなににするー?」


「あーそれはねー、あわゆきにーまかせるわー」


「まかされたー、でもー、じつはー、もうきまってるんだよねー」


「なにー?」


「氷精のー『チルノ』っていうのにするー」


「えいごで『冷気』っていみだったきがするわー」


「そっかーじゃあそれでいいやー」


 間延びした会話が続き、そんなことをしている内に、俺達は眠っていた。

 チルノ……いいと思うよ。じゃあ、おやすみ。



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