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東方兄妹記  作者: 面無し
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蛇と柱

「いやー、強くなっててビビったわ」


「あら、びびってた割には楽しそうだったわよね?」


「そりゃ、強敵と戦えたら楽しいでしょ」


「手加減されまくりで強敵って言われるのは微妙な気分ね」


「いやいや、お前は結構強いはずだぞ」


「その自信はさっき崩れたけどね」


「あちゃー」


 そんなことを言いながら空中をゆっくり飛びながら淡雪の家に移動する。

淡雪の家からは出て行った時と同じで三人の声が響いていて、

たぶん、呼白はそろそろあの三人に混じってゲームしてて、

姫ちゃんは四人でも眺めてニコニコしてんだろう。


「いい天気だ」


 そう、空に呟いた。




 次の瞬間だった。




 空に、真っ黒な柱が立ち上がっていた。

淡雪の家を大きな黒い柱が包み込んでいる。

 ヤバイ、単純に、それだけを理解した。


「急ぐぞ!」


「ええ!」


 それを飛ぶ速度を上げる。

 同時に正体を見極める技『真目査定』にて黒い柱を調べてみる。

真っ黒な柱は一見してみれば濃度の濃すぎる妖力にも見える。

が、能力で調べたところ全く違うものだった。

 あれは、ただの穢れの塊だ。


「兄さん!」


「姫ちゃん!」


 空中に姫ちゃんが現れた。酷く慌てていて、息も切らして現れた。

 何かに当たったのか洋服がところどころ破けてしまっている。


「何があった!?」


 飛ぶ速度を緩めずに姫ちゃんにそう聞いた。


「灰色の蛇です! おそらくミジャグジ様の残骸です!」


「ミジャグジまがいの残りカスでできることか!?

いや、その前になんで残りカスが残ってるんだ!?」


「わかりません! それよりも今は対処です!」


 二人で叫び合っている所に紫が口を入れる。


「他の皆は!?」


「呼白ちゃんとネージュちゃん、それから火華ちゃんは別空間です!

ただ、能力初動が遅れて淡雪さんがあの柱にいます!」


 柱の中、ということは穢れをそのまま受けたってことか。

……ヤバイな。俺の封印がモロに外れることになるぞ。

 そう思いながら、俺は柱を目指した。


    ****


 いつかの都市で受けた隕石。と、それについていた穢れ。

後になって俺の方で汚れが何なのか色々と能力で調べてみた。

あれは、死の産物らしい。簡単に言えば不幸の塊だ。

あの隕石の穢れは、あれ自体が死を振りまくものだったからだ。

 あれは生物や物体、その他に対して災厄を招く。

受けすぎれば、その存在にとって死がどんどん近くなっていく。

普通は術の媒介さえ生きていれば寿命がないはずの術式も、

穢れを受けすぎればその死として消滅してしまう。

 今回の問題は二つ。俺の封印が消滅しかねないのと、

淡雪自身も消えてしまいかねないことだ。

 淡雪の存在は人間がいれば基本的に不滅だが、

それは『基本的に』であり、特例がいくつかある。

今回の穢れも、その一つだ。

 封印が外れたにしろ、淡雪が消えるにしろ、

どちらも淡雪が消えてしまう結末に変わりがない。

 急がないと。


「姫ちゃん、ミジャグジの残りカスは?」


「穢れの反応で探って見てるんですが、

目の前の柱の反応が大きすぎて割り出せないんです」


「紫、生体反応から探してくれないか?」


「とっくにやってるわ。でも、普通の蛇以外の反応なんて一つもない」


「ミジャグジが神だし、生物としての反応では割り出せないか。

神様として反応させるのは……無理だな。残りカスでは神様じゃない」


 柱に近づいていくにつれ、柱から発せられる禍々しさが襲ってきた。

多くの穢れはそこにあるだけでも危険だ。災厄が振りまかれる。

助け出すためにも、まずは柱から対処しないといけない。


「紫、穢れを浄化する術はつかえるか?」


「あの穢れを祓うような高度術式は使えないわよ」


「基礎術式でだって構わない。こんな時こそチートの出番だ」


 『激魂歌』を発動し霊力を一気に増大させる。

そして、紫が出した術式札に霊力を全て流し込み、

それを柱へと転移させて発動した。

 青い閃光が発動と同時に空を駆けた。

そして、目の前の柱は一気に消し去り、淡雪の家が出現する。


「よし行くぞ」


 そう言って淡雪の家に行こうとしたその時、

目の前にまたしても柱が立ち上がってそれを塞がれた。


「嘘っ!?」


 紫が目を白黒させながらそう叫んだ。

 どういう仕組なのか、今のところ俺にもわからない。

が、浄化しても塞がれてしまうのならばこの先は奴が限られる。


「この場合は……姫ちゃん、紫、蛇の捜索頼んでいいかい?」


「えっでも」


「分かりました。紫さん、行きますよ」


「えっ、いいの!?」


「大丈夫ですよ、兄さんですから」


 そう言って姫ちゃんは俺に軽くくちづけして、地面へと降りていった。

 紫はいつものとは少し違う俺達を交互に見た後、何かに頷いて、地面に降りた。

 さて、まぁ女神とイチャイチャする時間もないほど今の状況はヤバイ。

さっさと行かないと本当に淡雪が消えてしまいかねないからな。

 「さてと」と屈伸をしながら気を切り替える。


「まずは侵入からだ」


 柱に近づき、表面に触れる。

触れたところから指が黒く変色する。次の瞬間には崩れ落ちた。

 手を離してみてみると、崩れた断面が腐っている。なんと物騒な。

 進入する方法を考えないといけない。簡単かつ確実なものを。

 まず、浴びるのを少なくする手段としては『激魂歌』で十分だろう。

増幅した霊力を球状に放出して穢れを押しのけることにしよう。

 次に、どうしても浴びてしまう穢れへの対策として、

身代わり人形に全て流し込むことにしよう。

この濃さだと押しのけても不幸が見舞うくらいには受けるが、

人形があればそれを何とか回避できるはずだ。

 まぁ、人形一体につき十分てところか。十分だろう。

 俺は空間倉庫を開いてそこから紙製の人形を取り出す。

諏訪子の神社にいた時に教わったものだ。知識はあって損しない。

 人形を持ち、霊力を増幅・放出しながら柱に触れる。

今度は問題なく中に入ることができた。


「探索開始と行こうか」


 まずは、淡雪がいるであろう氷の家からだな。



     ****


「姫ちゃん、いいの?」


「構いません、心配であることに変わりないですが、

兄さんが私の引き止めに応じることはないでしょうし、

私も、兄さんそうしたいと言うのであればその意思を優先します」


 柱の外周、柱からの穢れによって薄暗くなった森で私はそう言った。

 彼にはあまり無茶をさせたくない。出来るなら戦ってほしくない。

でも、彼はそれを了としないことを、私はよくわかっています。

だからこそ無理には止めないし、止めようとも思いません。


「茶番は?」


「今の状況でそれをするほど馬鹿じゃありません」


「そうよね」


「さて、どうやって探しましょうか」


 蛇を探すための話に話題を切り替える。

森の中を探しながら、紫さんと意見を出していく。

生物でもなく、神様でもない。かと言っておそらく妖怪でもない。

そんな物体をどうやって見つけてみるか……簡単な事です。


「無理に探すんじゃなくて、会えるようにしちゃいましょうか」


「探さずに会う? えっと、具体的にはどうやって?」


「私に、偶々偶然灰色の蛇に会えるだけの幸運をつけます」


「ふんふん」


「終わりです」


 紫さんは私の言葉を聞いて首を傾げた。

私はおかしなことを言いました? おかしくはないですよね?

 首を傾げた紫さんは数秒向き合った後、納得したように頷いた。


「ああ、エルンみたいに会えない未来を潰すってことね」


「うーん、若干違いますが、結果は同じになりますね」


 今回は私が白蛇に会える確率を最大限に引き上げるのだ。

そうすれば、偶々偶然に白蛇に絶対に会えるようになる。


「じゃあ、早くした方がいいわ。もたもたしている時間はないもの」


「ですね。『必然の偶然』」


 私は能力で自分に幸運をつけた。

私は今からあらゆる幸運に見舞われる。

そう、例え柱の穢れを受けていようが私は幸運になる。

でも、直接触ると幸運でもそのまま死にかけるでしょうが。


「あっ蛇」


 技をかけて数秒後、紫さんが私の背後を指す。

振り向くと、淡雪さんの家で見たのと同じ灰色の蛇が一匹。

真っ黒な目を持つそれは、大きさは小指程度と迫力がない、

しかし、迫力はないのに、押しつぶしてくるような圧力があった。

これは、厄介だ。


「紫さん。覚悟はいいですか?」


「これは、仕方ないわよね」


 小指大の蛇に、ここまで警戒して戦闘するのは初めてだ。


「できれば、お手柔らかにおねがいしますよ」


 私は蛇に向けてそう言った。

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