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東方兄妹記  作者: 面無し
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暇つぶしはバトル

 淡雪を安定化させたから数日が経った。今のところは問題ない。

が、先日感じた寒気は気のせいではない。何かある気がする。

だから、気は抜かないよう気をつけておこう。

と、そんなことを思いながら、安楽椅子にて息をついた。

 我が妻子は今紫と一緒に探検中だ。俺は淡雪と火華のためにここにいる。

今のところは俺が作ったオセロを三人で遊んでいる最中だ。

戦績は淡雪がトップで、他の二人は拮抗してるようだ。


「あー、また淡雪の勝ちかー!」


「ふふん、だめだめね火華」


「そういうお前も淡雪に勝ててないじゃないか」


「いいもん、あたいは火華に勝ったし」


「俺もお前に勝ったぞ」


 そう言い合う二人の声を聞き、二人は成績が同じだよ。

と、勝手に心のなかで突っ込んでみる。淡雪以外は本当に子供だ。

ああ、そうか、淡雪が冷静で大人すぎるのもあるんだろう。

 まぁ、一応の心配はあるが、今のところとんでもなく暇だ。

正直に言えば姫ちゃんのアルバムを眺めるだけでもいいのだが、

偶には別のことをしてみるのもいいかもしれない。

 こういう時はバトルが一番だ。が、あいにく相手がいない。

淡雪や火華はひょっとした調子で安定が解けてしまうと困る。

できればそこそこのやつと戦いたいところだ。


「暇そうね」


「紫か。姫ちゃんはどうした?」


 空中に紫のスキマが現れ、そこから彼女の声が聞こえてきた。

あいつは今姫ちゃんと探検中のはずだ、なぜかけてくるのか。


「ああ、あの二人は目の前で水遊び中よ」


「わかった。カメラを十つほど送る」


「相変わらず嫁に目がないのね、

水着写真くらい、くらいたくさん持ってるじゃないの」


「今一瞬の姫ちゃんは今だけじゃないか」


 何を言うのかと思いながら紫に返すと、

スキマの向こうから呆れるような溜息が聞こえた。

俺は何処に溜息を付くところがあるのかと首を傾げる。

姫ちゃんを写真に収める権利をもらえるのだから飛んで喜ぶところだ。


「はいはい、わかったわ。好きなだけ撮っといてあげるわよ」


「ああ、頼むよ。あっそうだ、ついでも頼んでいいかな?」


 呆れ口調ながらも承諾した紫に、ついでの用事を頼んでみた。

紫はそれを嫌がったが、何度も頼むと「仕方ないわねぇ、手加減してよ?」

しぶしぶながら了承してくれた。

 さてと、じゃあ俺も準備しなければいけない。

だって、準備せずに挑んで負けたら、弟子どもに悪いからな。


     ****


「ただいま帰りましたー」


「おかえり、我が愛しい妻子よ!」


「兄さん!」


 帰ってきた二人に腕を広げると、姫ちゃんがそこに大きく飛び込んできた。

その体を抱きしめ、頭を撫で、姫ちゃん分を存分に補給した。


「……熱いね」


「熱いわね」


 俺の抱擁を受けず紫の後ろに隠れた呼白と、

彼女の頭に手をおいた紫がそんなことを言ったが、

今の俺達にはそんなものは関係ない今は姫ちゃんが優先である。


「姫ちゃん、愛してるぜ」


「兄さん、私も、私も兄さんを愛しています!」


 ああ、この時よ止まれ。今この時が一番美しい!

 そう心のなかで叫んでいると、紫が俺の方を叩いた。


「零、約束はどうするの?」


「おう、もちろんやるが、後でな」


 紫はため息を付いて呼白を連れて淡雪の方へ向かっていった。

 俺に抱かれた姫ちゃんが疑問符を浮かべた顔で俺を見る。


「約束って何ですか?」


「ああ、紫と一戦やるんだよ、暇だからね」


 そういう俺に姫ちゃんがいつもの心配そうな顔を浮かべる。


「ダメです。怪我します」


「しないさ、俺だからね」


 すねたような顔をして俺を止めようとする姫ちゃんの頭を撫でる。


「でも…」


「それ以上言うな姫ちゃん。言いたいことはわかってる。

でもね、俺は決めたんだ。紫と戦うことを」


 笑顔でそう言うと、姫ちゃんが俺の胸に顔を埋めてこう言った。


「兄さん……行ってらっしゃい」


 やはり、姫ちゃんは世界でもっとも美しい。

 君のために、返ってくると約束しよう。

その美しき顔が笑顔で染まるように。


「行ってくる」


 キメ顔でそう言い姫ちゃんを放した瞬間目の前にスキマが現れた。

紫が顔を出し、いつにもまして露骨に湿気た目でこちらを見る。


「三流ドラマでやってそうな三文芝居をやらないでよ」


 湿気た目と同じくらい、言葉も湿気た調子だ。

 それにしても、どう考えても一流なのに三流とは酷い。

キャストに姫ちゃんが居るのだから一流以外にあるわけがないのに。

 文句を視線に乗せて紫に発信してみると、彼女はため息を付いて引っ込んだ。

「さっさと来なさい」とだけ言って残して。


「じゃあ行ってくるよ」


「はい、行ってらっしゃい兄さん」


 うあ流されたのではしかたがない。

 途中工程を飛ばして姫ちゃんと唇を重ねる。

しばらく楽しんでから、『間穴泉』にて紫のところへ移動した。



     ****


 紫が待っていたのは淡雪家の上空だ。

傘を広げ、フワフワと浮きながらこちらを見て微笑している。


「三流ラブドラマは終わった?」


 何処が三流なのか、吹き飛ばすぞ?

そういう意志を込めて紫を睨みつけてみる。


「もう、そんな目で見ないでよ。わかったわ一流よ、一流」


「それでいいんだ」


「それで、制限とかその辺はどうするの?

いくら私でも、あなたの弟子と同じじゃ勝負にならないわよ?」


「ああ、それぐらいわかってるさ。

大丈夫、今回は可愛く全強化一回にしといてやるさ」


「遺書を書くことにしましょう」


 そう言って、紫はスキマから筆と紙を取り出す。

 死なせるわけがないのに何を言うのか。俺はそんなに酷くない。


「書かなくていいよ。どうせ後で蘇らせるから」


「潔く死なせてくれない当たり余計に質が悪いわよ。

それに、強化じゃなくて論外化の間違いじゃないの?」


 ムスッとした顔で紫が文句をいう。そこまでチートだろうか。

能力のフル活用を制限している分大分甘いと思う。


「そんなことはない。霊力に制限がつくのに」


「総量が大妖怪数千匹の妖力より多いのに制限もなにもないわよ」


「攻撃だって分裂しないのに」


「一発で隕石一発と同じなんだから分裂しなくても十分よ」


「永久追尾もなくなるし」


「霊力を爆発させれば周囲一帯浄土じゃない」


「ほら、時間も止まらないし」


「止まっていようが止まっていまいが、

音速を超える速度で襲ってくるのを止められるわけ無いじゃない」


「スキマを破壊する力とか使えないし」


「音速の敵がスキマに入ってくるのを止められるわけ無いじゃない」


 俺の制限がチートであるという紫の主張が通って行く。

全く反論できないからどうしようもない。が、できないと俺が死ぬ。


「この制限じゃダメか?」


「ダメよ。もっと甘くして頂戴」


 その後の十分に及ぶ交渉の結果、俺が折れることになった。

 制限は、身体能力の強化は紫と同じくらいまで、

移動速度は新幹線並まで、霊力強化は大妖怪並まで、

能力使用は『間穴泉』と現代兵器召喚のものだけ使用可能。

という五つになった。ずいぶん甘いと思う。

が、紫曰く、もっと甘くしてもいいとのこと、

大妖怪と言っても差し支えなくなった奴が何を言うのか。


「ま、仕方ない。やるしかないか」


「ええ、仕方ないわ。やっちゃいましょう」


「ま、頑張ってくれよ?」


「ええ、死なないように頑張るわ」


 厄介な能力を持つ大妖怪とはどんなものなのか。

非常に楽しみな限りである。

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