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東方兄妹記  作者: 面無し
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素っ裸はマズいだろう

「んー? ほらほらもっと本気出していいんだぜ?」


「さっきからやってるさ! いい加減捕まれよ!」


 溶けた木々の道を、ふわりふわりと空中移動しながら移動する俺。

目の前の女の子は先程の開始宣言から一度も俺を攻撃できていない。

 というのも、彼女の攻撃が直接触れる以外にないのが原因なのだ。


「やだよ。触れられるとさすがの俺もどうなるかわからんからね。

というか、さっきから一張羅の真っ黒コートがゼリーっぽくなってるんだよね」


 移動してる途中でちぎれたりしないか心配だ。

触れられたりしたら水みたいになってしまうだろう。

 姫ちゃんお手製の真っ黒コート、おじゃんにするのは避けたい。

空間倉庫にでも突っ込んでおこうか。


「うーん、どうしようか」


「隙あり!」


 コートのことで悩み、空中で止まった俺に女の子が飛びかかってくる。

 まぁ、そんなふうに止まっただけで隙であるわけ無いので普通に躱した。

が、残念なことに俺の鼻先に彼女の指先がかする。……俺の鼻が溶け落ちた。


「うぇ!?」


「あ、溶けた」


 痛みはないが、鼻の骨が一瞬見えたのでちょっとショッキングだ。

が、すぐに再生し、回復したところを見ると、対応できない力じゃないらしい。


「あー、戻った戻った」


「お前、今溶けなかったか?」


「ああ、一応溶けたよ。すぐに戻ったけどな。

というか、固形物に触りたいんじゃなかったのか?」


「………おお!」


 思い出したように手を打つ素っ裸幼女。

 固形物に触るのがこれがやっとの二回目で、楽しみだと言っていたのに、

その触れそうな固形物を溶かしにかかるとは、意外と抜けてる。


「まぁ、まずはとかそうとするお前の力を引っ込めろ」


「え? 俺の力? …ってどうやって引っ込めるんだ?」


 不思議そうに首を傾げる女の子。制御が全く出来ていないらしい。

 少し考えてみるが、俺には能力の扱い方を教えることはできない。

俺自身の能力はなんとなく、言ってみれば勘で扱っているからだ。

 それに、マズい教え方をして、ここらへん一体を溶かされるのも困る。


「うーん、どうやって引っ込めるといったものか。

ほら、溶けにくくしたり溶けやすくしたりするのは出来るんだよな?」


「多分出来るよ。近くに来ても触らない限りは溶けなくしたりするんだろ?」


「そうそう」


「できるできる。それは意外と簡単だったぜ」


 それができるんだったら一旦淡雪のところに行くのもありか?

 いや、それだと万が一のことがある。妖精は消えても再生するらしいが、

溶けても再生してくれるとは限らない。呼白や姫ちゃんなんてもっての外だ。

 淡雪だけを強制的にこっちに連れてくるか。同じ妖怪なんだし、

力の使い方も教えることができるかもしれない。


「わかった。じゃあちょっと知り合いを呼ぶよ」


 『間穴泉』を使って淡雪の頭上と手元とをつなげる。

 そして、手を突っ込んで、淡雪の頭を引っ張りだした。

すこし抵抗された気もするが気にすることはない。


「よう、淡雪。さっきぶりだな」


「ずいぶんと乱暴な呼び寄せ方をするね。

しかも紫みたいな芸当もできるなんて、まさしく万能だね」


「そりゃどうも」


 目の前のあなから引きずり出された淡雪に女の子は目を白黒させていた。

 淡雪はそんな彼女の方に顔を向けて微笑んだ。


「やあ、初めまして。僕は淡雪って言います」


「お、おう。初めまして。俺の名前は……無いな」


 女の子は思い出した様に呟いた。

 そういえば自己紹介もなしに遊んだからそういうことを考えてなかった。

 女の子が困惑顔でこちらに向く。


「どうしようか? あ、そうそう、お前の名前何?」


 疑問とともにそんなことを言いって、彼女は俺のことを指さした。

 「ああ」と俺は言って、俺は返事を続ける。


「ああ、俺は零だ。それから、どうしようってお前……どうしようか?」


「いや、僕の方に振らないでくれるかい?」


 思わず顔を向けて振ってしまった言葉に、淡雪は真剣に考え始めた。

うーん、と悩む幼い男の子。そっちの趣味の人なら食いつきそうである。

 さて、しばらくして、淡雪は思いついたらしく、手を打った。


「じゃあさ、僕がつけてあげるよ。君の名前」


「淡雪が?」


「うん、そうだな……火華ひのかちゃんなんてどうかな?」


「俺の名前か……いいな、それ気に入ったぞ」


「それは良かった」


 淡雪と、晴れて名前がついた火華が笑い合う。

 俺はいいことを思いついたのでこの場面を写真にとった。

そして、すぐにカメラを隠し、火華に力の使い方を教えるように言った。

 淡雪は快く承諾してくれ、その後三分後にはオン・オフできる妖怪が誕生した。


    ****


「僕驚いたよ、だって引っ張りだされたら素っ裸の女の子がいるんだもの」


「お前全然驚いたように見えなかったんだが?」


「え? そうかな? 意外と驚いたほうなんだけど」


 全く驚いていないように見えたぞ。

落ち着いているからなのか知らんが、淡雪は表情の変化が小さい気がする。

 小説によくいる無表情ってわけじゃないが、それでも変化が小さい。

まぁ、微笑むとか、少し歪む程度のだから、普通に判別できるが、

時々本当に変化が小さすぎる時があるから困る。


「凍結の妖怪ってのは表情も凍結しかかってるのか?」


「いやいや、そんなことはないはず……あ、着替えたんだ」


「おう! どうだ、似合うか?」


 先程火華に避けられたワンピースをもう一度渡した。

サイズはさっき調整したから全く問題なかったようだ。

 赤い髪が黒い布地に生えて非常によろしい。

そういうのが好きな人なら即、某怪盗のダイブをするだろう。


「うんうん、似合う似合う」


「よく似あってるよ、可愛い」


「へへへ、そうか!」


 火華は輝く笑顔でそう言った。口調以外は普通の女の子である。


「あ、そうだ。零、これ作ったのお前か?」


 彼女は自分の口の中に手を入れると小さな何かを取り出した。

 というか、なぜそんな所に仕舞っていたのか、汚いといえば汚い。

あとから聞いたが、入れ物が溶けてしまうので仕方なくそこに入れてたそうだ。

 入れようと思ったかばんや包が溶けるのだから仕方ないだろう。

 彼女は、口の中から取り出した何かを目の前に差し出す。

淡雪と覗いてみると、小さなガラス片のようなもの。


「なにこれ」


「氷だ。俺が触っても溶けないし、冷たくもない」


「ああ、これはおそらく僕のだね」


 覗いていた淡雪がそう答えた。

 淡雪は氷結特化の能力のはずだ。

だから、彼女が触れても溶けなかったのだろう。


「じゃあ、あの氷の家も淡雪のか?」


「うん、そうだよ」


 火華は長年憧れていたものを見つけたように目をキラキラさせた。


「おじゃましていいか? 力も引っ込められるし行っていいよな?」


「いや、その……やっぱり三分での突貫だし、もう少し様子を……」


 淡雪がそう言いかけた瞬間、火華の表情が寂しそうなものに変わる。

 それを見た淡雪は結構心に来たらしく「少し待って」と言って悩み始めた。

 そして、悩んだ末に、俺の服を引っ張ってこう告げた。


「零、君の能力で何とかしてくれるかい?」


「ずいぶんと面倒なこと言ってくれるね」


 まぁできないことではないんだが、

固形物が触れても大丈夫なら触れることで能力を封印しちまえばいい。


「だが承諾した。能力付きの物品を創る技『異器創造』」


 手のひらの中に、装備者の能力を封印する指輪を制作する。

材質は銀で、壊れると厄介なので、防腐、と強度強化の力もつけた。


「火華、これつけたら入れてくれるってよ」


「本当か!? わかった、つける!」


 火華は俺の手の上に乗った指輪をすぐに取って自分につけた。


「これで、入れてくれるよな、淡雪!」


「うん、いいとも」


 その後、彼女の案内のため淡雪だけ先に帰ることになった。

淡雪の後ろをはしゃぎながらついていく火華は、外見相応にはしゃいでいて、

長年の夢がかない嬉しいようで、少しだけ涙をためていた。


「さてと」


 気を取り直して姫ちゃんを迎えに行こうとして気づく。

 さっきの、素っ裸の女の子が姿を晒すというのは教育敵にどうなのだろうか。

一応姫ちゃんならなんとかしてくれているだろうが、

それでも父親としてはそれはもう大変心配なところである。

愛娘にはまだまだ純粋な少女でいて欲しいというのが俺の本音である。

そう、「お父さんとお風呂入る」なんて言ってくれそうな純粋な子がいい。

まぁ、俺の心配なんて杞憂になるかもしれない、愛する嫁がついてるからだ。

 でも、一応心配なので、確認のために姫ちゃんの元へ行く。


「ハロー」


「あ、兄さん、どうもです」


「ねー姫さん、まだですか?」


 呼白は姫ちゃんに目隠しをされていた。そうするのが無難なところだろう。


「もういいですよ、呼白ちゃん」


「はーい」


 姫ちゃんの手が外れ、呼白が目をこする。

 イリョスとユンは……さっきの光景を見て何やらこそこそ話中。

まぁ、妖精だし大したことにはならんだろう。


「さて、ふたりとも、帰ろうか」


「「はーい」」


 さて、淡雪の家が修羅場になってないことを祈ろう。

女の子を連れて帰るなんて大胆なことをしたもんだ。


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