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東方兄妹記  作者: 面無し
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日雲のコンビ

 食事が終わると、今度は淡雪が国を案内してくれることになった。

 といっても、淡雪いわく、この国で建造物は淡雪の家のみで、

妖精たちは木に穴を開けたりして暮らしているそうだ。


「確か向こうは日が照ってたし日の妖精が……

ああ、そういえば今日は雲の子のところなんだったか」


 俺たち一家の前を淡雪が進む。

 淡雪は先程から何かを忘れていたり、

道を間違えてしまったり、かなり天然が入っているらしい。

 今も、日の妖精の所に来てみたが、

今日は雲の妖精のところなのを今思い出したらしい。

 今のところネージュ以外の妖精と会えたのは上空での一度だけだ。

 まだ先は長そうなので、できてしまった疑問を聞くことにした。


「なぁ淡雪、妖精って本当に木の穴に住んでるのか?

ネージュの大きさからして済むのは難しいと思うんだが」


「彼等は自分の大きさを変えられるんだ。

ネージュもやろうと思えばドングリくらいの大きさになれる。

詳しいことは知らなけど、自然はただそこに存在するものだから、

その権化である妖精たちも、大きさの大小は関係ないんじゃないかな?」


 淡雪は振り返らずにそういった。

 妖精は自然の権化故に大きさは関係ない。

そういう淡雪の推論はおおかた当たってるんじゃないかと思う。

 なぜなら、俺にはそれに対する反論が見つけられないからだ。

紫のように俺は頭が良くないし無理に反論する必要もないだろう。


「能力関係なく伸びたり縮んだりできるってずいぶん便利だよなぁ」


 考えることをやめた俺の口からはそんな感想しか出なかった。

 ドングリほどなら現代でなら換気扇あたりから不法侵入し放題である。

 ずいぶん便利だ。いや、別に犯罪し放題とかは抜きにしてもだ。

高いところのものを取るのに台にのらなくていいというのは便利だと思う。

 まぁ、妖精の場合は大きくなっても身長は小さいからそうも言えないが。


「ああそうだ、時偶に小型妖怪が出るから気をつけてね」


 俺の前を行く淡雪が急にそういった。

 淡雪の家から出発してもう結構経っている。

 淡雪は本当に物忘れが激しいことがわかった。

 今頃かとも思ったがそれは突っ込まないでおこう。


「っと、ん?」


 左方から草をかき分ける音が聞こえた。

 会話でフラグを立ててしまったせいで出てきたのかもしれない。

 まぁ出てきたところで全く問題はない。


「兄さん、左から来ますよ」


「あいあい」


 姫ちゃんも気づいたようで俺に耳打ちしてきた。

 万一もあるので呼白を右方へ寄せて、音の主を待つことにした。


「待ってふたりとも、僕が対処するよ。

客人に手間は取らせたくないからね」


 が、淡雪は振り向かずにそういった。

 俺としては手間をかけてくれても問題ないのだが。

彼がそうしたいのなら断る理由もないしいいだろう。


「じゃあ、頼もうかな」


 俺は淡雪にそう返事した。

 彼は振り向かないままに頷いた。

 左方の音はどんどん大きくなる。結構大きいようだ。

そう思っていると、大型犬くらいの影が、俺に向かって飛んできた。


「凍れ」


 影が飛び出してこちらで姿がしっかり見える前に、

しっかり張られた弦のような真っ直ぐなそこ声が響いた。

 瞬間、飛びくる影が空中で静止する。

 そして、目の前の淡雪がその影を指すと、

彼の指先から氷が飛び出し、黒い影を粉々に砕いてしまった。

 この飛び出してから倒すまで、まさに流れるような早さだった。


「すげぇ」


「そう? それはありがとう。

紫の話に聞く最強反則人間にそう言われるとは光栄だよ」


  俺が声を上げると、今まで振り向かなかった淡雪が振り向き。

得意そうに、また、嬉しそうにそういった。

 振り向かなかったことが少し腑に落ちないが、

格好良かったので今追求することはやめておこう。

人と仲良くするなら、隠し事は話してくれるまで待つことだ。

それがあまりにも重要でないならね。


   ****


「ああ、ここだここだ」


 戦闘の淡雪がそういった。

そして、その言葉のすぐ後に彼が見えなくなった。


「「「え!?」」」


 俺達は素っ頓狂な声を上げ、先程まで淡雪がいたところまで慌てて移動する。

すると、急に視界が霧に包まれ、何も見えなくなってしまった。

 慌ててはいけない、こういう時こそ能力の出番だ。

 周囲の土地を把握する技『周観掌握』で周囲を調べたところ、

先ほどまでの森で、ここは円形に木が生えていない場所らしい。

円の大きさは小さく直径五メートルほどだ。

 ただ、不思議すぎる。何処がと言うと、


「霧って壁みたいに発生するものか?」


 ある地点からいきなり濃霧に包まれるなんておかしい。

俺なら不可能じゃないが、自然現象としてはありえないことだ。


「兄さん、淡雪さんがいなくなっちゃいましたね」


「探すのもむりだよね」


 俺の背後で姫ちゃんと呼白の声が聴こえる。

この濃霧で、彼女の姿も確認することができない。


「まぁ、まずははぐれないように全員で手を繋ごうか」


「分かりました。呼白ちゃん、手を伸ばしてください」


「あ、うん」


 まずは姫ちゃんと呼白が手をつなぐまで待った。

呼白は姫ちゃんの後ろにいるから、姫ちゃんとつないだ後だとやりにくい。


「兄さん、つなげましたよ」


「おっけー」


 俺はそう言って後方に手を伸ばして姫ちゃんを探る。

彼女の方を掴めたので、そのまま手を移動させて手を掴んだ。


「淡雪ー」


 一応名前を呼んでみるが、返事はない。

 俺は姫ちゃんの手を引いて彼女と呼白を抱き寄せた。

 この状況、何かに嵌められたのは間違いない。

まずは周囲をわかりやすくすることが先決だろうな。

 気象を操る技『気象予告』を発動しよう。

本日は、霧一つ無い透けるような晴天の一日になるでしょう。


「え? うわわ!」


 霧が底にあったのが嘘のように消えていった。

すると、前方に淡雪が見え、その隣で一人の少女が口を開けて驚いていた。

 外見は普通の妖精。髪は灰色で服は青。綿菓子みたいな帽子を被っている。


「おそらくだけど、その子雲の妖精?」


「ああうん、そうだよ。

その反応ってことは僕の返事は届かなかったみたいだね」


 何かの細工で俺たちに淡雪の声は聞こえなかったようだ。

まぁ何にしても別に殺そうとするものじゃなかったんだしいいだろう。


「まぁいいさ。それで、ここに来たのは何故?」


「ああ、日の妖精がここにいるんだ。

彼女に頼めば空から一望させてくれるからね」


 淡雪はそういうが、今のところ目の前には二人しかいない。

そう思っていると、不意に淡雪の隣に又女の子が出てきた。

 赤い髪にオレンジの服。熱血そうな雰囲気の女の子だ。


「あんたが、淡雪の言ってた零だね!

アタシはおひさまの妖精だよ!」


 なんとまあ急に現れたから驚いた。


「君もなにかやってたのか」


 淡雪のその発言からして、細工をされたようだ。


「ちょっとアタシを見えなくしただけ」


「そういうのはほどほどにしないといけないよ?」


「はーい」


 目の前で太陽のような笑顔を見せている彼女が、

どういう能力を持っているのかを俺は知らない。

 どうやって見せてくれるのか楽しみだ。


      ****


 溶ける。あらゆるものが、俺の前から溶けていく。

 固形物を口に入れた記憶は全くない。全て飲みものだ。

 俺の歩く道は水面のように波紋が立つ。

 木は触れるだけでドロドロとした変なものになった。

 そう、人の言葉で言えば、俺は融解の妖怪らしい。

溶岩のようなやつだと言った爺さんもいた気がする。

 俺が通ったせいで俺を妖怪とした人たちは溶けて逝った。

俺を溶岩と例えた爺さんも俺が触れれば溶けてしまった。

 生まれたのはいつかよくわからない。いつの間にかそこにいた。

しばらくそこらをふらふらしていたが、

ふと、生きる目的が欲しくなって『溶けないものを探すこと』が目的になっただけだ。

 木は無理、大地も無理、岩も無理、鉄も無理、青銅も無理、氷も無理、

目についた新しいもの全てを触ってみたけれど、どれも水のように溶けてしまった。

 この頃は目につく新しものもなくなったけれど、俺はそれでも探す。

 半分諦めたけれど、それがないと液体に浮き沈みするしかやることがない。

今は半分暇つぶしも兼ねてそれは今日も溶けないものを探している。

 

「あ」


 そしてある時、不思議な氷を見つけた。

 俺が触れても溶けない氷だ。一見して普通の氷が俺には宝に見えた。

 触れてみてわかったことがある。

これは普通の氷じゃなくて、何かに手を加えられてできたものだということだ。

水と同じ温度の氷なんてありえない。それはこれまでの見てきて知っている。

溶けた氷は冷たくて、水は普通。この氷は……冷たくない。

 そして、手を加えられたということは、加えた奴が居るってことだ。


「やった」


 俺の目的は『氷を作ったやつを見つけること』になった。

 そして、この間やっと、見つけた。氷で出来た家を。

 近いうちにまた来ることにしようこの家の主は知らないけれど、

できれば友だちになれることを願って。


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