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東方兄妹記  作者: 面無し
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三者、それぞれに行動する

 ジジイの防壁はたしかに強力だった。

『矛盾』並と天が言うのも無理は無いくらいに。

調べてみたところ、本当に『矛盾』と同じく物理特化の防壁だった。

 これはしめたものだ。なぜなら、物理特化と魔法特化は両立できない。

 故に、物理特化の防壁を崩すのは簡単だ。


「術式展開の技『術具媒介』」


 魔法で打てばすぐ崩れる。

 俺は空間倉庫からの出口をジジイの結界の周囲に出現させ、

そこから弾丸を打つことで、ジジイがこちらの行動を阻害できないようにした。

 そして、ジジイが防いでいる間に、術はしっかりとジジイの足元に展開された。


「さて、術式展開完了。集中爆撃術式、発動」


 指を鳴らし、術式を発動させる。

 上空から火の玉が一つだけ落下してくる。 

魔法攻撃は、その攻撃に含まれた霊力等の総量が影響しているらしい。

 今回は、霊力爆撃だから、霊力以外は全くない純粋魔法の攻撃だ。


「砕け散れ」


 ジジイが展開している結界の頂点に、火の玉が落ちる。

それだけで、先程まで弾丸でびくともしなかった結界が砕けた。

 目の前のジジイの顔が驚愕に染まる。

 そして、次の瞬間に奴は弾丸と爆風の風雨に飲み込まれていった。


「安心しなよジジイ、無用な殺しはしない主義だ。

死後三十分くらいで回復するようにしてやるよ」


 爆風の雨を止め、弾丸の風を止めると、人間だった何かがあった。

人型であるとしか言いようがないほどにボロボロの体はグロい。

 自分の体で見慣れていない頃であれば、今頃吐いていただろう。

 まぁ、さっき人の話を聞かなかったお仕置きとでも考えてくれ、

お仕置きにしてはすごくひどすぎるお仕置きだとは思うがな。


「ま、三十分後までは一足早い死後の世界でも満喫してな」


 俺は姫ちゃん達が飛んでいった方向に足をすすめた。

 そして、ぽつんと立つ岩製の椅子と、その周りで倒れる男達を見つけた。

 近づくと、姫ちゃんがいつも使っているシャンプーの香りがした。


「さっきまでここにいたってことか」


 姫ちゃんのことだから男どもに勝っただろう。椅子を作ったのはその後だ。

 天たちと別れたならここにいるはずだし、一緒なら妖力が少しは残ってるはず。

天たちがいないことも含めて考えると、姫ちゃんは連れ去られたか。


「ふむ、いい度胸じゃないか」


 わが女神を連れ去ったことを後悔させてやろう。


    ****


「う……ん?」


 周りから聞こえるさわぎ声で私は目を覚ました。

ざわざわとした声が寝起きの耳にはとても耳障りだった。

 そして、自分の状況を確かめよう周りを見た。


「ああ、なるほど」


 私は絶賛拘束状態のようだ。

 木製の檻が私を包み、柵には札がいくつも貼り付けられている。

そして、檻の前には大きく看板が付けられていた。裏からなので内容は見えない。

が、見物人の多いことからそこに書かれているのは碌でもないことだろうと思う。


「兄さんが来るまで大丈夫というのは甘かったでしょうか」


 天さんのような大妖怪が居るんですし、出てこないと予想したが、

出てきた人がいたからこういう状況なのだろう。予想は外れたようだ。


「まっていれば兄さんが来ますし、大丈夫でしょう」


 いざとなればやられたふりでもして逃げればいいだろう。

 そう思い、兄さんが来るまでどうしようかと悩んでいると、

檻の前に一人の少女が出てきた。


「お前がお父様の捕まえてきた妖怪ね!」


 ひと目で質の良さそうな生地の服をまとった銀髪の少女。

その服は現代の胴着と袴と同じものであり、男の子のような印象も受ける。

格好から察すれば豪族の仲間、そして、私の父ということからすると、

彼の父親は陰陽師か何かなのだろう。


「あなたは今から処刑されるの、気分はどう?」


 外見的には先程の厩戸ちゃんとそう変わらない少女。

その子が処刑の気分を聞いて来るとは……教育がなってませんね。

誰でしょうか、こんないたいけな少女に野蛮な言葉を教えたのは。


「気分ですか? そうですね、椅子でもほしい気分です」


 ここは平然と答えましょう。

この子の年頃ならば面白くないことには怒るはずだ。


「……怖くないの? あなた死ぬのよ?」


 聞く前に、少ししかめっ面になりかけ、すぐに表情を戻して再度私に質問を重ねた。


「怖くありませんよ、死にませんから」


 もう一度平然として答える。

 平然とした私に彼女はしかめっ面になった。

そして、先程はすぐ戻したその顔を、今度は戻さずにこちらに近づく。


「嘘ね。国の陰陽師長にかかれば、あなたなんてすぐ死ぬわ」


 少女はしかめっ面に笑みを混ぜてそういった。

 そして、言った後は小馬鹿にしたような表情を浮かべて私を見る。

嫌味を言ってやったり! とでも思ったのだろうか、子供らしい。


「死にませんよ、兄さんがいますから」


 そんな彼女にまた平然と返す。


「………」


 彼女は全く動じない私を睨んだ。

しかし、子供の睨みごときでは怯むことなどできない。

 私はその視線に笑顔で返し、もう一度繰り返す。


「死にませんよ、妖怪ではなく只の人間ですけど、

それでも、私は死にませんよ。私には兄さんが居るので」


「……もういい!」


 少女はどこかに去って行ってしまった。

 さて、彼女のことは気になるが、ここで下手に動く訳にはいかない。

 仕方ないが、ここで兄さんが何とかしてくれるのを待つしかないだろう。

……とそんなことを思ったそばから、兄さんが来た。

カモフラージュのためか天さんに化けて、高速でこっちに飛んできている。

 兄さんの完璧なカモフラージュです。私以外の人にはまずばれないだろう。


「さすが兄さん、今日も素敵ですね」


 空を飛ぶ愛しの夫を見ながら私はそう呟いた。


     *****


「ねぇ天さん」


 俺の背中に乗る呼白が俺を呼んだ。

 厩戸は眺めが珍しいのだろう。目を輝かせながら地上に見惚れている。


「どうした?」


「この後はどこに行くんですか?」


「あーそうか」


 そういえば特に決めていなかった。

 透明化の術なんかを使えれば楽ができていいのだが、

あいにく専門じゃないから術式を組み立てるのに時間が掛かる。


「んー厩戸もいるからなぁ

知り合いがいれば匿ってもらえばいいが……

ここ、祭ってる神様が同じなだけで厳密には大和の国とは別なんだよなぁ」


 祭ってる神様は同じだから一応戦争後の条件の通り零が探索するのは自由だ。

だが、問題があるとすれば零の容姿を誰も知らないというのが問題だ。

 あそこで門番を素通りしたのも正解だと俺は思う。

なぜなら、そうでなければ零は零だと判断されず、そのまま捕まっていただろう。

……いや、厳密には捕まりかけるだろう……だな。

 まぁそこから色々考えると、


「最初は神社から行こうかね」


「どうしてですか?」


「祭ってる神が同じなら、ここの神社には天照の依代があるはずなんだ。

じゃあそれを使えば、天照を大和の国から呼び出せる」


「じゃあ今の状況をお話して」


「なんとかしてもらおうってことさ」


 そうと決まれば話は速い。

さっさと急いで神社に向かうとしようか。


「厩戸ちゃん、ここの神社ってどこにある?」


「神社? んーとね、あっち」


 彼女が指さしたのは国の中でも一番大きな建物。

……もしかして、神社と王様の家は一体型になってる?


「厩戸ちゃん、あのすごく大きな建物のことかな?」


 できれば違うと言ってくれ!


「そうだよ」


 世界は残酷だということを改めて知ったよ。

 仕方ない、警備はどうにかして突っ切るとして、

俺にひっついている二人の少女の安全を第一に考えなければ、

 片方は傷つければ先生に殺されるじゃ済まないし、

もう片方も傷つけたら後からこの国から何を言われるか分かったもんじゃない。


「……術式の専門家でもいて欲しいなぁ」


 知り合いにはとんでもない専門家が一人いるが、

そんな奴は今どこにいるのか全くの検討がつかない。

俺も国下よりは使えるだろうが……助太刀がほしいところだな。


「ねぇお兄ちゃん、隠れられればいいんだよね?」


 腕の中の厩戸が急にそう言った。


「ああ、そうだけど」


「じゃあこれ使って、今作ったの」


 彼女は手に御札を持っている。

少し調べてみると、基礎のものだが、隠蔽術の札だった。


「どこでこんなのの作り方習ったの?」


「うーんと、前に妖怪退治のおじさんのを見せてもらったの!」


 見ただけで作れるとか……実は十七でしたとかじゃないのか?

そんな芸当できるのは尾都くらいしか知らねえよコンチクショウ!

 隠蔽術の基礎って人間なら三ヶ月は勉強するって聞いたぞ!?

 そうか、これが天才の力か……


「呼白ちゃん、この子すごくない?」


 背中で厩戸の発言を聞いていた呼白ちゃんに話しかける。


「そうですね、私なんて爆撃術しか教わってないのに……」


「誰に教わったの?」


「おと…零さんです」


 先生……あなたなんという高威力なものを教えてるんですか!

というか呼白ちゃんもなんでその歳で爆撃術なんて使えるの!?

大人でも難しい術だって前に聞いたよ!?

先生の周りには毎回すごいのが居るな……俺みたいな凡々妖怪じゃ無理だわ。


「仕方ない、凡々妖怪は年の功でこの基礎術式をなんやらしますよっと!」


 基礎術式でも発動時の妖力や霊力が多ければ高い効果が望める。

高位術式と基礎術式では同じ力を引き出すときの妖力量が違うのだ。

 今回は中級妖怪三匹分でも突っ込めば十分だろう。


「さて、いきますか、ふたりともしっかり捕まってなよ!」


 翼を広げて一際大きな建物へと飛ぶ。

 視界の端に人だかりを見つけたが、無視した。

俺と同色の翼が見えた気もするが、きっと気のせいだ。

……そう、きっと気のせいだ。


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