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東方兄妹記  作者: 面無し
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超人の卵

音速飛行機に乗ってしばらくして、目の前の紫炎の道標が途絶えた。

目的地に来たようだ。下を覗いてみるとデカイデカイ、大きな一国がそこにあった。


「でけーな、さすが聖徳太子が生まれるところだ」


 ステルス装備はこういう時に役に立つ、国民に見つかると不都合だからだ。

 空から降りてきて神様だとか悪魔だとかにされることもあるかもしれない。

そんなことは不本意だ、本当に見えなくてよかったと思う。


「天」


 俺は後部の座席に縛り付けた弟子を呼んだ。


「なに!? 何の問題起こしたの!?」


 何を慌ててるんだこのやろう、問題は後でに決まってんだろう。

 それより前に、お前にはやってもらうことがある。


「問題は後。お前、今からここ降りてあの国襲撃しろ」


「はい!?」

「兄さん!?」

『主!?』

「お父さん!?」


 突然の言葉に全員が驚きの声を上げ、

ジャックにいたっては慌てすぎて体内の紫炎が、ぽんっという音を立てた。


「ああ、心配するな、殺せとかそんなんじゃない、

この飛行機停泊するのにステルス状態だと先頭が見えないからやりにくいんだ。

だから、気を引いてくれるだけで構わない、お前なら怪我しないだろ」


 このセリフには俺が育てたとも言える天への信頼があった。

それが伝わったのかはしらない、だが、天は何も言わずに出入口のスペースに入った。

 少しして、出入口の音ととともに黒い大妖怪が飛行機を追い越していった。


「というかあいつ、この飛行機より早くなったんだな」


 すこし、そんな意味のないことを思った。


    *****


「よし、ここらへんでいいか」


 国の上空三千メートル付近。

おそらく普通の人間では気づくことのできない高さに俺はいた。


「まったく、先生も面倒なことを言うなぁ」


 本当に面倒だ、簡単すぎて作業にしかならない。

しかもこの後にはまだ先生の無茶ぶりが残っている。前に振られたのは何だったっけ? 

都市の兵器を暴走させちゃったから自力で止めろとかそんなんだったか、

あの時は途中で国下と尾都が入ってくれなかったら死んでたな。


「ま、今回も死なない程度に頑張りますか」


 ああも期待の目で見られたのなら答えないわけにもいかないですしね。

面倒な先生を保つと本当に苦労する。姫さんはよくあんなのと夫婦になったな。


「せーのっ」


 それなりの速度で一気に急降下する、

音速じゃないのは衝撃波で周りの人間が死んでしまうかもしれないからだ。

今の速度でも十分風圧がすごいだろうが、所詮はその程度だ。


「ヘイ! 全国民の皆さんこんにちわ~!」


 そう叫びながら人が多い広場のようなところに勢い良く降り立つ。

手加減してたとはいえ、予想通り風圧で何人か吹き飛んだようだ。

 急に現れた妖怪に周囲の人間がワイワイと騒ぎ出す。

このまま妖怪退治屋の一個団体でも来てくれたらなら、

国民は避難し、先生は飛行機をおろして終わりになるだろう。


「まぁ国下を見よう見まねで妖力圧縮してるから、

妖力の規模で見れば今の俺は中級妖怪くらいなんだよねー」


 因みに国下が圧縮すると有情無情レベルにまで圧縮できるらしい。

小さいけど国が一個吹き飛ぶくらいの力が出るとか言ってたな、怪力すぎだろ。

 まぁそんな事はいい、という訳で、俺の妖力は中級だ。

故に、出てきてくれたのはご近所の妖怪退治屋5軒程度、楽すぎてあくびが出る。


「ふぁ~あ」


「妖怪、貴様何しにここに来た!」


 何しにって妖怪が来る理由なんか普通に考えてわかるだろうが。

妖怪退治屋の中でもここの近辺は脳筋系のやつしかいないのかよ………


「普通に考えろ、この国で騒ぎを起こしに来たに決まってるだろう」


「そんなことはさせん! 皆の者、行くぞ!」


『うおおおおお!!』


 暑っ、筋肉ばっかでいかにも熱血してますってかんじだな、おい!

この国の有名なやつとかはいないのか……仕方ない、妖力開放で呼ぶか。


「衝撃に耐えなよお前ら、俺は国下みたいに上手く開放できないんでな」


 俺の妖力開放に合わせて、周囲の風が鳴く。

巨大な俺の妖力を載せた風はこの国の端まで届くはずだ。

そして、妖力の本体である俺からは、妖力の光柱が一瞬だけ立ち上った。


「さっさとこいよ雑魚ども、飛ばされたいやつからかかってきな!」


  ****


 派手に撒き散らされた妖気を感じながら俺たちは飛行機を降りた。

 能力で機体を隠す、透過効果でも付加すれば見つからないだろう。


「さてと、優秀な弟子が気を引いてくれてる間に国に侵入しますか」


「見つかっちゃうと大変ですからね」


 呼白を間に入れて三人で手をつなぐ。ジャックは俺達の前についた。

 四人……いや、三人と一体で国を目指し歩いていると、木で作られた柵が見えた。

ところどころに入り口があり、その全てに門番が居るようだ。


「ありゃ、門番は離れてくれないのか」


「まぁ離れれば新手が来るかもしれないですからね」


「どうするの、零さん」


 大丈夫、そこら辺は今考えたから。こっちには導きの妖怪が居るんだぜ?

人手は使ってなんぼだからね、好きなだけ使わせてもらおう。


「ジャック」


『承知した』


 名前を呼ぶと、俺の使い魔は目的を察してくれたようだ。

 彼は妖力を拡散させ、周囲の水分を霧に変える。

元々彼が潜むような環境にここを作り替えたようだ。

視界は最悪、まさしく一寸先も見えないほどの霧といったところだ。

 霧の向こうで兵士たちの警戒の声が聞こえる。

が、これだけ見えていないのならば後はどうとでもできる。


「さて、じゃあ素通りさせてもらおうか」


「大丈夫なの?」


 呼白は俺自身の無茶苦茶にまだ慣れないからだろう。

少し不安そうにそう聞いてきた。

 俺はその頭に手を載せて大丈夫サムズアップする。


「俺だぜ? これぐらい大丈夫だ」


 そう言って四人で門へと近づく。

霧で周りが見えない兵士たちに感づかれないように、足音に細工をさせてもらった。

おそらく門番たちには四方八方から足音が聞こえているだろう。

慌てた声で門番たちが何やら叫んでいる。

 俺達はそれを無視して国への侵入に成功した。


「な、大丈夫だろ」


「慌ててましたね、軍を呼ばなきゃいいですが……」


「大丈夫だよ姫ちゃん、いま来てる服は毛皮の服、

国に入ってしまえばどっからどう見てもそこらの農民だよ」


 門から入ることには成功した。後はジャックをどうにかしないといけない。

 かぼちゃを連れた農民なんてどうあがいたって怪しまれてしまう。


「ジャックは、一旦帰ってもらうか」


『承知した』


 目の前に紫炎が浮かぶ、彼の火はこの霧でもよく見えた。

目の前の黄色いランプが消える。同時に周囲の霧も晴れた。

 急に霧が出たり晴れたりとして、周囲の住民は不思議そうな顔をしている。

そして、その住民たちの間を縫うように移動する身分の高そうな一段がひとつ。

 彼らの向かう先は天がいる方向のようだ。

まぁあれだけ派手に妖力をまき散らしたのだから仕方ないだろう。

 しかし、あいつを心配する気持ちはわかない。だって負けるはずないし。


「さて、さっきの奴らは向こうから来た」


「じゃあ向こうに聖徳太子さんがいるんですね」


「可愛い子だといいな」


 三人で手をつなぎながら一弾が来た方向へと歩く。

 しばらく歩くと農民の家よりも圧倒的に大きな建物の群れを見つけた。

おそらくはこれらが豪族と呼ばれる貴族たちの家屋だろう。

 そしてその奥に、もうひときわ大きな家が見える。

あそこはおそらく天皇の家、現代で言う皇居。

たぶん聖徳太子のあの近所に住んでるはず!


「という訳で人名で周囲を探ってみようか」


 目の前で指を縦に切る。切られたところから空間に切れ目が入り、

検索用の地図と人名を入れる欄がついた、パソコンのウィンドウのようなものが現れた。

 人名検索の技『待ち人探し』やり方は簡単だ。このウィンドウで範囲を設定し、

後は名前欄に探したい奴の人名を入れるだけで終了だ。


「さて、聖徳太子の本名は何だったか………」


「姫さん、聖徳太子ってどんな人何ですか?」


「一度に十人の話を聞いたとか、厠……おトイレで産まれたとか」


「トイレって……随分すごい産まれ方だね」


 二人は何かを話しているが、俺に反応できる余裕が無い。

果たして聖徳太子の本名は何だったか、高校卒業なんて何億年前だったか、

そんな前に教えられた知識なんて覚えている方がすごいと俺は思うのである。

 が、そんな俺の頭にも神が降りてきた。


「思い出した! 厩戸皇子だ!」


「ん? お兄さん、私がどうかしたの?」


 隣に立つ五歳くらいの少女が俺に聞いてくる。

随分と豪華な服を身にまとい、キラキラと光る好奇心の目をこちらに向けている。


「ああ、俺はね、今厩戸っていう人を探してるんだよ」


「うん、それ私だよ。お兄さん私に何か用?」


 たまげた。思考回路が一秒と少しほど止まってしまった。

こんないたいけな少女が聖徳太子だなんて思わなかった。しかも女の子。

 少女は変わらず好奇心に満ちた目を輝かせ俺に質問をする。


「お兄さん、そのへんてこなものは何ですか?」


「……ああ、これか、これは人を探す時に使うものだよ」


「へー! 使っていいですか?」


「あ、うん」


 ウィンドウの前を譲ると。少女は俺のいた位置に立つ。

少女では届かない高さにある窓を俺は能力でそのまま彼女の目線まで下げてあげた。


「わー」


 少女は目の前の窓を好き勝手に操作している。

が、操作が間違ってないのがすごい。なんで動かし方がわかるのか。

……超人だから仕方ないか。


「あれ? 兄さん、その子誰ですか?」


「あ、可愛いー! ちっちゃいね」


「ああ、この子が聖徳太子」


『……はい?』


 我が家の女性が同時にハモる。

あっさり見つかったことにも驚きがあったようだ。

 正直俺も探すことすらしないで出てくるとは思わなかった。

 だがしかし、見つけてしまったからにはしょうがない。

友好を深めるために今日は好きなだけお話をしようではないか!


「そういうわけだよお二人さん、仲良くやろう」


「は、はい。それはいいですけど」


「ねーねー何やってるの?」


 呼白が真っ先に聖徳太子に話しかけた。

子供には子どもということか、先人の知恵は役に立つね。


「あのねー、これを使うとね、布都が居るところがわかるんだよ!」


「そうなの? お姉ちゃんも使わせて」


「うん、いいよ!」


 ふむ、小さい子同士はやはり仲良く慣れるようだ。

我が家の愛娘は楽しそうに聖徳太子と語り合っている。

 そしてそんな中、俺の足元に一本の羽が刺さった。


「ん? 黒い羽……天か?」


 羽を手に取り眺めると、中程で折れて風が起きた。

その風は少量の妖力を含んでおり、その妖力には音が乗せてあった。


「先生、そろそろ片付けたんでそっちに行きますね」


 そう流れた弟子の声は人仕事終えた後のようで清々しいようだった。

 そして、ふと気づく、さっきあいつは俺のことを先生と呼んでいたことを。


「ちゃんと先生と思ってくれてたんだな」


 口から笑いが漏れた。弟子から初めて呼ばれた先生は悪くなかった。


「ねぇお兄さん」


 目の前の超人少女が口を開く。

いたいけな少女はまたも好奇心を溢れさせた目で俺を見つめこういった。


「妖怪さんも連れて本当に私に何のようなの?」


「……君は頭がいいんだね」


「えへへ」


 少女は笑う。少量の妖力を感じ取り、それが溢れでた先を感知し、

それを持っていた人間との関係を即座に言い当てる。

 まさしく超人。日本における最高峰の天才の卵が、目の前で無邪気に笑っていた。







次回はPV十万記念の話を描かせていただきます。

コラボ企画ですので、使わせていただくキャラを崩さないように頑張りたいと思います。


それでは、次回もよろしくお願い致します。

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