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東方兄妹記  作者: 面無し
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男達の話

 これは、女達が話ている間にあった、男達のお話。


「なぁ零、いい天気だなぁ」


 道端に寝転がった零、創、天、国下、高矢の内、国下が零に向かってそういった。

 今日の空は雲ひとつない快晴で、道端に寝転がるととても気持ちがいい。

 零は今日のこの天気を予測し、いい気持ちで土手に寝ていた。

しばらくして国下と創がそれを見つけ隣に寝転がり、次に天と高矢が見つけて寝転がったのだった。


「そうだな」


 零はうとうとしながら空を見てそう言った。

 前回と変わらず自分と本気でやりあえる人物が一人、

技術でなら自分に勝てる人間が一人、そして、手塩にかけて育てた弟子が二人。

 自分が仲良くなる奴は強かったり強くなれる奴ばっかだなぁ、と零はそんなことをフワフワと思っていた。

 そして、ふと思ったことを口に出す。


「天と国下って俺と別れた後何してたんだ?」


 弟子の二人と別れた後、零は彼らと連絡をとってはいなかった。

零であればともかく、二人は連絡手段を持ち得なかったこともあるが、

零の方から連絡することもなかった。

 彼らがどのようにして強くなったか、零はそれにふと興味が出たのだ。


「何って、各地を移動しながら乱戦してたぜ」


「同じくー」


 二人はそういった。因みに、彼らの相手は中級の上位から、

大妖怪の中でも特に強いやつまでが殆どである。

彼らの妖力の強さは出会った妖怪たちとの戦闘によるところが大きいだろう。

 零はそうかと軽く頷いた。


「零は何をしてたんだ?」


 国下から零へ、先程零がした質問が返ってくる。零は今まであった出来事を思い出してみた。

エルン、幽香、紫と会ったこと、黙視という新しい弟子ができたこと、強力な龍と戦ったこと。

 零は見てきた記憶を思い返して、それを一言でまとめた。


「楽しく過ごしてたよ」


「なんじゃそりゃ」


 零の短い返答に天が笑いながらツッコミを入れた。

しかし、二人はそれで満足したようで、零に追求はしなかった。

 誰も言葉を出さずに少し時間が過ぎた。

自分が感じる風に何かを感じ取ったかのように零と創が起き上がった。


「「「どうした?」」」


 他の三人が不思議そうに体を起こした。

零と創は立ち上がり、綺麗にハモりながら一言、


「姫ちゃんにシャッターチャンスが巡ってくる気がする」

「ねーちゃんにシャッターチャンスが来る気がする」


そう言った。彼らの目には愛しい嫁の最高の一瞬を感じたという確信があった。

 創と零はお互いを見て頷くと、零は空間にいくつも穴を開け、

創はビデオカメラと普通のフィルムカメラをこれまたいくつも創りだす。

そして目にも止まらない速さでそれらを設置し終えた。

 二人は能力を使い四人に分身すると、カメラの位置に移動してサムズアップ。


『準備完了、いつでもいける!』


 まさに流れるような動作での設置だった。

嫁に対する愛がそうさせるのかよくわからない。

 しかし、今の二人の目はチャンスを今か今かと待ち構える狩人の目になっていた。

 見守る三人はこの常人が見ればあぜんとする光景にもなんのその、

平和だねなどと言いながら二人を眺めている。


「「………」」


 あるとき零と創がその目を見開き叫んだ。


『今だ!!』


 カメラのシャッター音が連続する。

 自らの嫁を撮っている二人の顔は緩みきり、

ふへへへと変な声まで発しながら脇目もふらずにシャッターを切っている。

 カメラはカメラでいくら写真をとってもフィルムがなくなっていない。

フィルムを巻いては撮り巻いては撮り、異様な光景である。

 ビデオカメラはカメラでアングルを移動させながら……


「いいねぇいいねぇ、そう、ここだよここ!」


そういいながらよだれを垂らしていた。

 ひとしきり撮りまくっていると、一箇所に突然写真現像機が現れる。

 他の三人がその機械を見ると、今しがた取られている写真が次々と現像されている。

写真に写っているのは神姫と廻。どちらが中心に撮られているかでどちらがとったのか一目瞭然だ。


「爺さん、あの二人すごいだろ」


「そうだね、毎日のようにすごい人たちだと思うよ」


 高矢が天の言葉に同意する。


「しかも、あの二人の内片方が俺たちの目標なんだぜ、信じられねぇ」


「俺達二人さ、一人でも大妖怪数匹を余裕で合手できるのに、

未だにただの嫁狂いに勝てないとか……涙が出てくるぜ」


 天と国下は悔しそうなセリフを吐いた。

しかし、彼らは自分の目標が以前と変わらずあることが嬉しいようで、その顔は笑っていた。


「ふぅ、今日もいいものが撮れたな!」


「そうだな、いい写真が撮れたぜ!」


 創と零は撮り終わったようで、お互いに笑い合っていた。

 戦場であった時のような殺気は存在せず、さわやかな幸福感がそこにあった。


「ホント、お前ら嫁のどこに惚れたんだよ」


 国下が二人に聞いた。

 二人は迷わず、満面の笑みでこう答えた。


「「全てだ!」」


  ****


 一息ついて彼らはまた草原に寝そべった。

お互いの惚れた相手のどこに惚れたのか、それが話題である。


「うちの嫁はさぁ、包容力がすごいんだよ。

時たまに甘えに言った時に、黙って頭なでてくれたりさぁ」


 そういうのは国下。彼は頭を掻きながら頬を緩ませる。

鼻の下まで伸びているし頬が赤い、この男も十分嫁に骨抜きである。


「包容力? 姫ちゃん舐めちゃいけないぜ、

家の姫ちゃんも一応二児の母だからな、微笑みの慈母具合がおかしいぜ」


 零はそういった後神姫の顔を思い出したようで悶えていた。


「ふふん、家のねーちゃんも負けてないぜ、

あの胸の中で包まれた瞬間、この世のことなんか忘れられるんだぜ」


 創が真っ赤な顔をしながらそういった。

何故か鼻を抑えているので高矢が尋ねると、


「鼻血が出そうだからだ」


と、そう答えた。

人体では興奮で鼻血がでることは通常ないはずなのだが、

そんな常識は彼には通用しないだろう。

 そしてそんな鼻血を出しそうな創を気にせず嫁を称える零。


「あの黒髪のすばらしさと言ったらないね!

黒曜石のような漆黒! 指に全く絡むことのないシルクのような肌触り!

風になびいた時のふんわり感! 一つの芸術と言って差し支えないね!」


 こちらも鼻に詰め物をしている、似かり寄った二人のようだ。

 そして、その零が、天へと視線を向ける。


「天はいい相手いなかったのか?」


 天は嫁がいない、乱戦をしていたというなら出会いは少なかっただろう。

しかし、長い間には人妖問わず女と会う機会もあったはずだ。

しかも天は美形の青年の外見である。惚れる女も多かったはず、なぜなのか。


「だって、居るのは皆ボインボインの女ばっかなんだぜ」


「「あーなるほど」」


「「えっ、なにそれ天国じゃん」」


 理解をしたのは零と高矢、そうでないのは創と国下だ。

 零と創、この二人の嫁を見ればなぜ理解したのかそうでないのかがはっきりする。

零の嫁、神姫は貧乳。創の嫁、廻は巨乳である。そう、女性の好みがこの二人は違うのだ。

 天が言いたいのは、自分は貧乳が好きなのになぜ巨乳しか寄ってこない、ということだろう。


「俺はちっちゃいのが好きなんだよー!」


 天は両手を空へ突き出し叫ぶ。

周りのほとんどが既婚者だからだろうか、その声は少し悔しそうだった。


「皆いろんな人を好きになるんだね」


 高矢がニコニコ笑顔でそう言った。

 零は待ってましたと言わんばかりにニヤついて高矢に言う。


「そうですね、高矢さんも神様が好きですもんね」


「うん、そうだね。私は諏訪子を愛してる」


 零はニヤついた顔のまま固まった。

神様との恋愛のことを言われて焦る姿を予想していたのだろう。

しかし、高矢のあっさりした返しに彼の思考は一旦停止した。

 そして、零が一時停止の間に、高矢は諏訪子に惚れた理由を話し始めた。


「最初は恋愛感情なんてなかったはずなんだ。

彼女に疑問を持ち、それが解消されてよく会うようになってからも、

私は諏訪子に対して恋をするとは思っていなかった。

諏訪子が私を我が子のように見るのでね、第二の母のように思っていたよ。

しかし、やはり人間とは面白いものでね、気づかない内に感情が変わってしまう。

神として敬っていた気持ちも、母のように慕っていた気持ちも、

いつの間にか女性へと向ける気持ちへ変化していった。

いやはや恥ずかしいね、一度想い出すと止まらない、

若い頃はいつ襲ってしまうかと自分を抑えるのが大変だったよ」


 事も無げに高矢はそういった。

しかし、その頬は緩んでおり、ゆるやかな微笑を作っていた。


「神様と人間の恋、いいねぇ燃えるねぇ」


 零が再起動し、そのままそう言った。

ニコニコの笑顔でそう言って、とても零は楽しそうだった。


「というか伝えないの? 自分の気持」


 天が高矢にそう言った。


「ああ、私は伝えない。私の答えは決まっている。

諏訪子の答えも私の予想通りだろう。しかし、やはり神は神。

人間は人間、通じあっていても、やはり立場はわきまえなければならない。

私は君たちのように寿命がない人間ではない、己の整理もしなければいけない存在だ」

ただし、生きている内は最期まで諏訪子といさせてもらうよ。愛しているからね」


 高矢はただの人間だ。そして、只の人間は集団でしか生きられない。

零や創のような、集団でなくとも生きていられる存在ではない。

彼はそれを理解しているからこそ、気持ちを伝えず、

最期まで神のそばにいるもの、としてだけ生きていと決めたのだった。


「そう、高矢さんがいいなら俺はそれでいいです」


 零は、満足そうにそう呟いた。


「ああ、私はこれでいい」


 高矢もそう言った。


「「「今日はいい天気」」」


 他の三人がハモる。

その場にいた全員が笑った。

全員が顔を合わせ同時に言った。


『寝ようか!』


 男達の笑い声が響いた。



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