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東方兄妹記  作者: 面無し
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日神への道標

敵本陣から強い閃光と爆炎が上がっている、

国下さんはなんとか意図通りに動いてくれたらしい。

私は息を吐いて椅子の背もたれに背を預けた。

一端の戦況はこれで持ちこたえられるだろう。

姫さんも戻ってきたし、ひとまずは安定させられる。


「でも、安心できないのが戦場だね」


そう言って黒煙の上がっている敵本陣を見た。

先程上空から何か黄色いものが落ちていくのが見えた。

姫さんに確認をとったところ、この間仲間にしたジャックという使い魔らしい。

こちらの味方が入ったということは、国下さんはまだまだ大丈夫だろう。

だが、まだ嫌な予感が抜けない。

目の前の戦場は安定に向かっているのに、作戦はうまくいったのに、

どうにもまだ裏がある気がしてならない。

私の勘が良く当たるから余計に落ち着かない。


「まぁ、落ち着いて安心できる戦場なんて戦場じゃないんだろうけどね」


安心してしまえばそこに隙が生まれてしまう。

息をつく事はあっても、気を抜く事はあってはならない。


「さて、次の手はどうするか……」


戦場はこのまま膠着状態になるだろう。

敵大将を国下さんが倒した時点で終わりというのもあり得るが、

それは一度考えずに進めてみよう。

私が相手なら、そして、相手が私なら私はどうする?


「こっちの本陣に伏兵を回すのが妥当かな……ならば」


姫さんを呼ばなければいけない、

補給する場所を本陣から引き離さないと。

あそこが潰されれば勝つことすらできなくなる。

指揮は大丈夫、いざとなれば零さんがしてくれる手はずだ。


「さて、姫さんを読んでもらえるかい?」


私は付近に立っていた兵士に頼んだ。

彼は頷くと姫さんの補給所の方に駆けていった。


「さて、次は………」


次の指示をまた付近の兵士に伝えようとしたその時、

不意に周囲が真っ暗闇に包まれた。


「!?」


なんだこれは!?

周囲を見回してみるも後も先も全く見えない。

周囲からの音が聞こえるだけ良い方といったところか。

声から察するに周囲は敵も味方も混乱していて動けていないようだ。

何かの術のたぐいと予想するなら、敵側の本陣で使われたものだろう。

伏兵の国下さんに倒されかけて、最終手段に出たといったところか?

しかし、それでも味方もろともとは切羽詰まっていたのだろうか。

そんなことを思っていると、ふっと周りに光が戻った。

周囲はまだ混乱から立ち直れずに騒いでいる。

沈めなければならない、しかし、

私はそれをなだめるための伝令を送れそうになかった。


「首に剣を当てるなんて、物騒だね。何か用かな?」


「ああ、爺さん。このまま降伏してもらえないかな?」


見知らぬ男の声、随分と若い声だ。

あの暗闇の中を移動してきたのだろう、どうやったのか興味が出る。


「君の名前は? どこに所属してるんだい? 種族は?」


「俺は一般兵だよ、強さは大将並だけどね」


大将並みの強さなのに一般兵か、何か将に繰り上げできない、

もしくはされない理由でもあるんだろうか?

ああそうだ、まだ質問に答えてもらっていない。


「もう一度聞くけど、名前は?」


「……妖山あやしやま そらだ」


「ふーん……で、種族は?」


間があく、嘘でも考えているのだろうか。

まぁ、大体の予想はしている。


「………にんげ」


「嘘だろう? あの闇の中を移動できる人間がめったにいるとは思えない。

君は神様か、もしくはそれに匹敵する妖怪の類じゃないのかい?」


「!……正解だよ。俺は、天狗っていう種族の妖怪だ」


「神谷零を知っているかい?」


「……お前、知ってるのか?」


妖怪の言葉は私に答えを与えた。

そう言ってくる天狗という妖怪は零さんから聞く限りは一人だけ。

お弟子の一人の天という子だけだ。

そうか、いま私に刃を向けているこの子がそうか……面白い。

彼の弟子がどれほどの強さか試してみたくなった。


「知っているとも。ああそうだ、『これ』で私を追い詰めたつもりかい?」


 私は首に当てられた剣に手を当てる。


「まだ脱出でもできるの?」


もちろんだ。私は指で剣の腹を挟み、振る。

ついでだが、もちろん持ち主の天を巻き込んでだ。


「うっそぉ!? 俺翼合わせて八十キロあるんだよ!?」


「八十キロ? その単位はよくわからないが、

今の君の重さなら、指の力だけで投げ飛ばしてあげられるよ」


「人間じゃない……先生の知り合いは人外ばっかかよ!」


天狗の声は言葉の割にとても楽しそうだった。

私も楽しい。久々に強敵と戦えそうだ!


 *****


「やあやあ、我こそは、諏訪の国の将山上国下なり!

 正々堂々、尋常に勝負しろ! 天照大御神!」


「最近の若い妖怪は威勢がいいですね、

 しかも、あなたの場合は強敵であるという付録付き」


目の前の赤髪の女神は笑顔だった。

それだけ自分に自信があるということだろう。

先ほど倒したオッサンも舐めるな舐めるな言ってたし、

ここの神様は全般的に自信家が多いのかな?


「主人、いつかあなたも武器にしてやりますよ、

 ええ、してやりますとも、私は使い魔ですが道具じゃありませんのでね」


「おいジャック、師匠への文句は俺が後で聞く、

 だから、今は目の前の女神さんと戦うことに集中してくれ」


「集中するも何も、戦うのはあなただ。

 私は道具、使われるだけの道具だ、そう、道具なんだから使えよ」


……師匠、いったいこいつに何したんだ?

ひねくれてるぞこの南瓜装備。


「こないのですか? 角の妖かしよ」


「ああそうだったね、じゃあ先手はもらうよ」


腰を落とし、拳を握る。まずは、距離を詰めよう。

地面を蹴って相手の眼前に移動した。

俺の動きについてこれず、未だ前方を見ている女神の鎧にめがけ、

俺は拳を打った。


「え? あっ……グッ!?」


俺の拳は鎧を凹ませ、その衝撃で女神は吹き飛んだ。

よく凹むですんだなあの鎧。普通なら鎧も体も貫通するんだが……。

そう思いながら地面からふらふらと立ち上がる女神を見た。


「おいおい、お前さん今にも倒れそうじゃないか、

これなら殺気のおっさんのほうが強かったんじゃないか?」


「……そうですね、単純な力や体の強さならば彼のほうが強いでしょう」


あっさりと自分の方が戦闘能力低い宣言をしてくる女神。

それによって俺は一気に気が抜けてしまった。


「え……そう。じゃあ、お前さん弱いの?」


「そういうわけではありませんよ、

一応、ここにいる全員を相手取っても勝つことが出来る自信があります」


ということは、なにか能力的なものが彼女は優れているのだろう。

それが何かは大体予想がつく。太陽を象徴する女神だろう?

『光り』誰もが必要とするそれを、彼女はどうにか出来るのだろう。


「いいね、じゃあ勝って見せてよ!」


俺は彼女に向かって走った。

目の前の彼女が笑って俺に手を向けた時、

視界が一気に闇に包まれた。


「!!」


「『日死にちぼつ天岩戸あまのいわと』驚きました? これが私の自信の源ですよ」


女神の声が周囲全体から反響ようにぶれて聞こえた。

視界が闇のせいで全く状況が把握できない。


「ジャック、どうしよう」


「私に聞かないでくれ、今の私は戦えないのだから」


おいおい、知恵ぐらい貸してくれよ南瓜。

というか師匠は役に立つから南瓜よこしたんじゃないのかよ!?


「さて、ここからあなたに攻勢は回ってきません。

今のうちに降伏することをおすすめしますよ?」


余裕かましてんなよ女神さん。

そういうやつほど噛ませ犬になるんだぜ?


「悪いね、認めたやつ以外に喧嘩で降伏するのは嫌なんだ」


「あらそうですか、残念です」


その声が聞こえた後、俺は周囲から剣撃の嵐に見舞われた。

俺自身の防御力が高いため、肌が斬れたりなどの大きなダメージはないが……

いつまでも攻撃されるとヤバイかもしれない。

しかし、周囲が見えないためにどうにも迎撃することが出来ない。

腕で頭を覆い隠しながら呟く。


「なにか導いてくれる能力とかないかな?」


「ああ、そういうことか」


俺の首元から声がした。

あの南瓜が何かに気づいたようだ。


「どうかしたのか?」


「今の状況の打開策がわかった。私のもともとの能力を使えばいい」


「そんなもんしらねぇよ」


攻撃されてる時に悠長に会話できない、さっさとしてもらいたい。


「私はジャック・オ・ランタンという精霊種の妖怪だ。

沼地に住み、旅人を里に案内もすれば、沼に導き殺すこともある。

私達ジャック・オ・ランタンの固有能力は、導きの能力だよ」


なるほど、単純明快分かり易いの一言だ。

師匠もこの妖怪の分類をわかっててよこしたのだろう。

ならば、その手を喜んで貸してもらおうじゃないか。


「じゃあ、頼むぜ」


「無論だ、今の私は武器だ。使用者の敵を打ち倒す手助けをしよう」


俺の首元に光が灯る。

ジャックの内に灯る紫色の紫炎が俺の首元に灯った。

次の瞬間、闇ばかりだった俺の視界に、首元のものと同じ紫炎が起きた。


「あれだな。よくやったジャック、後で妖力おごるぜ」


「おお、ということは妖力と霊力のミックスが楽しめるのか。

久々に豪勢な晩餐を楽しめそうでこちらもやりがいが出る」


向かってくる紫炎に俺は拳を振るった。


「きゃあ!」


女神……を表す紫炎が吹き飛んだ。


「嘘……どうして」


吹き飛んだ先で女神がそう言った。

いや、言ったんだろうが声は四方八方から聞こえた。

女神には俺の首元の炎や、自分に灯る炎に気づけないようだ。

気づいていたならば、何かを計画しているとバレて攻撃を止めるだろう。


「簡単だよ、俺があんたのいる場所をわかるようになっただけだ」


「くっ……それなら!」


四方で神力の収束する気配がする。

今の闇の特性で気配が分身しているが、

女神がどこに居るのか把握できている今、他に気は取られない。

いつでも来い、いつ来たって弾き飛ばしてやる。


「南瓜、お前さんの炎を俺によこせるかい?」


「無論だ、とっておき強力なのをつけてやるさ」


女神に向けた拳に紫の炎が灯る。

俺が拳に妖力を込めると、紫炎もそれに合わせて光をました。

この暗闇の中で唯一見える光、なんと頼り甲斐のあることか。

ふんだんに俺の妖力を送り込み紫炎を燃え上がらせた。


「やってやるぜ、来いよ天照!」


「いいでしょう、太陽の下、その光に身を浄化されなさい!」


女神の叫びと同時に視界が晴れる。

目の前の女神の手が白い光りに包まれている。

膨大な量の神力で構成されたそれは、空に一筋の光を放つ。


「『日生にっしゅつ天野日大刀あまのひのたち』」


その光の筋を、高圧縮された神力を、女神は振り下ろした。


「ふんっ!」


俺はそれを紫炎の灯った拳で迎え撃った。

光の筋と拳が激突し、妖力と神力による紫と黄金の火花が飛んだ。

力は互角、しかし、このままであれば攻撃に膂力を使用してる俺が負ける。


「ぐっ……くっ……」


限界が近い、そう思った時、

俺の手を伝って、光の筋の先に紫の亀裂が走った。


「なっ!?」


女神が驚愕の声を上げ、目を見開いた。

俺自身何が起きたのか理解しきれなかった。


「国下、とっておきを渡すといっただろう?」


喋ったのはジャック。

南瓜の首飾りが、楽しそうにカラカラと音を建てた。


「お前の妖力を、女神の神力を貫けるように導いただけさ」


その言葉に俺はこの後どうすればいいかを悟った。

このまま手のひらの妖力を放出すればいい。

後のことはジャックがなんとかしてくれる。


「先導頼んだぜ、黄色の案内人よ!」


「承った。その力かの女神まで心して案内しよう!」


「「『先導・紫炎の道』」」


拳から妖力を開放する。

放出された妖力はジャックの先導に乗り亀裂の中を走り、

紫の亀裂はその長さ、大きさを増していった。

そして、女神の手元まで亀裂が届いた時、亀裂から一気に妖力が漏れ出し、

女神おも巻き込み、そこに一本の道を作った。


「「目的地到着、なかなかよい旅だったよ、日神」」


そこから周囲の神が俺たち二人に降伏するのにそう時間はかからなかった。

この戦争、こちらの勝利だ。


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