雷神戦………おまけでかぼちゃ装備
「ガッ……はぁ、はぁ」
「おいおいオッサン、息が上がってるぜ?」
この妖怪……強い!
我の雷が体術がことごとく避けられ流される。
この私が苦戦する……なるほど神奈子が負けるわけだ。
しかし、ここで負けるつもりはない。
娘の純血を奪った相手を活かすなどあってはならん!
今ここで、始末してやる!
「舐めるな妖怪!」
我は妖かしの後方に雷撃を落とす。
それを避けた妖怪に向けて手のひらから雷を放つ。
「おおっと」
それをひらりと躱す妖怪、
我が少し疲労してきた頃から、
こいつは余裕の笑みを浮かべるようになった。
「おっさん、狙いはいいんだからもっと頑張ろうぜ」
「黙れい!!」
男のセリフに怒り雷撃を放つ。
直後にまずいことをやってしまったと後悔した。
感情に任せて撃ったせいで加減ができていない。
激しい雷撃は強い閃光を伴い、我の視界を覆い尽くしてしまった。
「くそっ」
「いただき!」
眩しさに目を細めていると、腹部に衝撃が走った。
異常なほどに重たい強烈な一撃。
「ガハッ!!」
衝撃に耐えられず口から声が漏れた。
しかし、負ける訳にはいかない。
揺れる視界を正し、地を踏んで姿勢を正した。
「フンッ!」
まずは雷撃を放ち避けさせ、
その間に後方へ飛ぶ。
先程から遠距離の攻撃はない、
奴は近距離特化型の戦闘型だろう。
遠距離であれば安全であるはずだ。
我が負けるわけがない!
「今遠距離なら安全とか、
自分が負けるはずがないとか思ったろ?」
「!!」
妖怪の一言に攻撃しようとした手が止まる。
「それ、フラグっていうんだぜ?」
「ふら……はぁ?」
意味不明な言葉に動きが止まる。
妖怪はそれを見て笑いながら指を鳴らした。
瞬間、音に合わせたように妖怪の妖気が膨れ上がった。
「俺の勝利が確定しました」
「なっ……お前どこにそんな妖気を」
「どこって角だよ?」
妖怪は額に生えた二本の角を指した。
「角の中に圧縮してんだよ、便利だろ。
放出される妖気が減るから神職に気づかれにくいし、
圧縮してるから自分の内包できる膂力が大きくなる」
妖怪は得意気に笑った。
我が笑えるわけがなかった。
妖気の量はもともと少なかった。
そのくせ力が強いからおかしいとは踏んでいた。
だが、ここ前で規格外とは考えていなかったよ。
「まさか、大妖怪数匹分とは……」
「おどろいたか? これくらいしないと師匠に力で敵わなくてさ」
笑身を浮かべる妖怪は困ったというふうに頭を掻いた。
が、浮かべた笑顔は我に向けた殺気とともに消え去った。
「ごめん、この程度って呼ばれた瞬間から本気出してないんだ」
「……は?」
耳を疑った。
本気を出していないということは、
先ほどの一撃、あれも実は手加減していたということか?
手加減して……あの衝撃?
「嘘……」
「じゃないんだなぁ、これが」
妖怪が我に近づいてくる。
視覚化するほどの妖気を立ち上らせながら、
先ほどとは比べ物にならないほど高速で。
「ほら、あんたはこの程度の速さにも追いつけない」
腹部に一撃、続いて顔面に一撃。
先ほどの一撃以上の衝撃が体を走る。
抵抗するまもなく我の体は吹き飛んだ。
「うーん、やっぱり圧縮してないと威力が出ないな」
上空を飛ぶ我の耳にそんなことを言う妖怪の声が聞こえた。
妖力を圧縮した状態で放った本気の一撃はどの程度なのか……興味がある。
そして、我はまだ娘の仇をとっていない!
「ぬううん!!」
「おお、すごい」
今無理しないでいつ無理をするのだ!
神力を体にまとわせ、雷撃をその上からかぶせる。
地面に手をつき受け身をとる。
「雷光『鳴神の鎧』」
目の前の敵を睨み、身を包む鎧の名を叫んだ。
妖怪は全く動じていなかった。
先程と変わらない殺気を放ち拳を構えた。
「こいよオッサン、鎧着たって意味ないぜ、
そんなちゃちなもん、ぶち抜いてやるよ」
挑発してくる妖怪。
その言葉に乗るつもりはなかった。
先ほどのように迎撃されたくはない。
冷静に、懐に、入る。
「……は?」
妖怪の間の抜けた声が聞こえた。
が、そんなものを気にして顔を見るつもりはない、
一撃、神力と雷撃をまとった黄金の一撃を、その胸部に叩きこんだ。
閃光視界を覆い、雷鳴が地鳴りを伴って響く。
「……」
この攻撃に吹き飛ばす能力はない。
神力の拳で雷撃を相手の中に打ち込む攻撃。
相手の内側から雷撃を拡散させ、その攻撃は相手を焼きつくす。
「……それでも、原型が残っているのが悔しい」
灰になっていると予想した妖怪は全身黒焦げだった。
角もその人型も残っている。
「妖怪よ、お前は強かったよ。
訂正しよう、お前はその程度ではない、
我が戦ったものの中で一番強かった」
鎧を解き一息置いてから直立したままの焦げた人型に言う。
「すまんが我の勝利だ。
次の世は楽しめるといいな」
そう言って背を向ける。
歩こうとした矢先、背中に声がかかった。
「まてよオッサン、あんたは勝ってない。
俺は、まだ負けてないぜ」
驚いて我は振り向いた。
黒焦げの体で、妖怪は普通に喋っていた。
「俺は近接型だからな、防御力が高いんだよ」
防御力が高い? そんなレベルのじゃないはずだ。
全身内側から焼け焦げているはずなのにどうして動ける!?
「ああ、そうそう雷撃なら内側を通らなかったぜ」
「!?」
疑問に思ったことが相手の口から出たことに驚く。
黒焦げの妖怪の表情はわからない。
が、声はとても楽しそうだった。
「俺の遠距離攻撃は少ないけど三つくらいあってな。
今回のは師匠がよく使う手だが、相手の力を吸収して、そのまま放つ。
威力と範囲は相手のに依存するが、妖力を消費しないのがメリット。
デメリットは、その攻撃を自分で食らわないといけないことだ。
吸収しきれなかった分は自分に来るからな、そのせいで妖力の鎧が真っ黒焦げだ」
「え?」
聞こえた言葉に耳を疑う。
鎧? いつそれを着たのか。
そもそも、鎧が焦げたということは、中身は?
「よっと」
目の前の人型が自分の体を震わせる。
骨が折れるような音とともに中から無傷の妖怪が出てきた。
「速度が上がったのは驚いたよ。
まぁ、余裕で対処できる速さだったけどね」
我はすぐさま後方に下がった。
奴に狙撃されるわけにはいかない。
狙撃されないように警戒し、正面を見る。
目の前には誰もいなかった。
「は?」
「上だよ」
上空から声が聞こえた。
その方向を見る間もなく雷撃が我を襲った。
「ぐっがああああ!!」
自身の電撃を受け、体が焼けつく。
目の前が白に染まり、痛みに心臓が跳ねる。
そんな中、妖怪の声が一言だけ聞こえた。
「俺の勝ちだ」
****
目の前の雷神が倒れ、気絶するのを俺は確認した。
正直なところは物足りないというのが本心だ。
大妖怪数匹……ねぇ、それだけあっても本気の体術だけで互角か。
師匠に勝つのにはまだまだ時間がかかるらしいな。
と、そこまで思ったところでもとの目的を思い出す。
「ああ、そうだ、一番強いやつと戦いに来たんだっけ」
そう言って赤髪の女神に目を向ける。
女神の顔は真顔だった。
うーん、師匠に聞いていたイメージと全く違う。
『日本の天皇のご先祖で慈母神っても呼ばれてるよー』
……とか言ってたから優奈みたいな雰囲気の女神を想像してたんだが。
ガッチガチに武装してるし、いかにも『私大将です』みたいな雰囲気だよ。
「あんたが一番強いんだよね」
「ええ、そのとおりです。私は天照、天照大御神です」
「日神なんだっけ?」
「! 知っているのですか?」
「一応上辺を撫でるくらいはね、師匠に教わったんだよ」
「……そのことは、私が勝った後で聞きます」
おお、やる気だねぇ。
面白い、いいとも手加減なしで潰してやるよ。
「い……」
「国下というのは戦闘を一旦やめてもらえるか!!!」
上空から聞き慣れた声。
見上げると、何かが落ちてくる。
紫色の光を灯した……南瓜? しかも顔掘ってあるぞ。
落ちてくる南瓜が地面に降り立つ……いや、空中に浮いているから立ってはいないが。
「お前は?」
俺の疑問に目の前の南瓜が『?』に顔を変えた。
「君が国下でいいんだね?」
「そうだよ、お前は?」
「私はジャック、君の師匠の使い魔だ。
主人が受けた傷がひどくてね、今は私が声を借りてる状態だ」
師匠いつの間に使い魔なんて作ってたんだ。
いやそれよりも、
「なんの用だ? 今から天照と戦おうとしてたのに」
「すまない、しかし主人から言伝があってね、
まず『そのオッサンを死なさないように』
それと『天照と戦うならジャックと組むといい』とのこと」
「え……正々堂々一対一じゃないの?」
「主人によると、私が渡されたこれを使えば正々堂々になるらしい」
南瓜が俺の前に炎を出した。
その炎が消えると、そこにはお守りの形のものがひとつ。
手にとって中身を調べてみると、『武器変換用札』と書かれた紙が出てきた。
「私はそれの中身を知らなくてね、
どういうものかおしえてもらってもいいかい?」
「ああ、こいつは何でもかんでも武器にできるやつだ。
師匠の『その身が武器に』って技を御札に付加したんだろ」
「ほうほう、それをどうするんだ?」
「お前さんに使えってことだな」
「!?」
南瓜の顔が『!?』に変わった。
そしてピクピク震えながら俺の手に持った紙を覗きこむ。
「……主人よ、自分と融合しろといった次は武器になれというのか、
いやまぁ使い魔だから主人の矛であり盾なのだが、
それでもさすがに本物の武器にされるというのは少し無理があるというか……」
そして何かをつぶやきだした。
何だこの南瓜……面白いやつだな。
よし、やってみよう。
「わーししょーのいうことならしかたがないー」
「国下さん?」
「しょうがないからおまえをぶきにかえるかー」
「待て、待ってもらえないか、
主人の事だからどうせまた無茶をさせるだろうとは考えていたが、
まさか武器に変換されるなんて……」
「えい」
「わああああああああああ!!!」
目の前の御札に妖力を送る。
普通の御札と同じ原理で発動した御札は、
目の前の南瓜を吸い込んで光り輝いた。
光は形を変え、収まるとそこには南瓜が武器になったものがあった。
「ほうほう、いいもんだね」
「主人よ、私は主人にいつか仕返ししてやるぞ!」
言葉を話す首飾りなんて珍しい。
……これ武器なのか?
まぁいいや、師匠のことだから何かしらの役に立つんだろう。
「またせたね、天照」
「ええ、随分と待たされました」
じゃあ、早速。
「開戦といこうか」




