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東方兄妹記  作者: 面無し
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中間戦績

「………大丈夫かなぁ」


私は国の神社の中で非戦闘要員として待機していた。

お父さんもお母さんも戦場に行っちゃった……

心配で心配でさっきからそわそわしている。

あの二人は負けることはないとわかっていても、心配。


「特に今回のお父さんはちょっと真剣な顔で出て行ったし……」


いつもは余裕たっぷりなのに……。

実は長年の待ち続けた敵がいるとか?

しかもその人とは何回戦っても引き分けだったとか?

それで勝てるかどうかが戦場の勝敗を分けてたりして……!?

………お父さんですしありませんよねそんなこと。

負けるなんてこともありませんよね。


「……たぶん」


 ******


黒い空間の中で咆哮が飛ばす。


「アアアアアア!!」


叫びながら、周りを移動する奴に赤い棒を振り回し、赤い弾丸を放つ。

同時に、青一色の相手からの攻撃も迎撃する。


「せえい!」


「ァグッ」


撃ち漏らしの弾丸が俺の腰に当たる。

その部分が凍りつき、もろくなったそこは、

俺の下半身を連れて取れた。

もう一度生やして攻防を再開する。

速く済ませたいのに、一進一退で進まない。


「平和ボケでもしたかな?」


最期にこいつと戦ったのは数億年前、

強い相手がほとんどいなかったし、

戦闘に速さがなくなっていても不思議ではない。

しかし、こいつに負けるのはなんかいやだ!


「『八重結界』『歪曲防壁』『三重空間』『間穴泉』!!」


四重の空間隔絶で時間を稼いでみる。

稼げて十秒だろうが……いつもの通りだし、十分だ。

やることはひとつ、どうやって一撃を加えるか。

さっきの創の弾丸なんて様子見の一撃でしかない。

俺達の攻撃はだいたい渾身の一撃でしか決まらない。

だって、それ以外は再生でも何でもできるし、

そもそも効かなかったりするからだ。


「記憶にある最後の戦いはただの殴り合いだったしな」


だって干渉効かないし、物理攻撃は途中で消えるし、

仕方ないから消されない自分の体で殴りあうしかなかったのさ!


「それはやりたくない、傷回復できないし」


でも出し惜しみは出来ない。

異世界を旅する間に増えた装備で乗り切ろう。

まずは、


「『四剣』」


呟く俺の周囲に四本の剣が生えた。

俺の周囲を浮遊する四本の内、空色の刃の剣を手にとる。


「いくか」


覚悟を決めたところで、防壁に亀裂が入る。

俺はその亀裂の中心部分に向けて空色の剣を投げた。

焦ったような声が聞こえ、金属のぶつかる音がした。

四重の防壁が崩れ、黒い空間に戻ってくる。

目の前には頬に傷を作った創が立っていた。


「顔面に刺さるところだったじゃねーか!」


「刺さればよかったのに」


「あんだと!?」


俺は手を前に突き出す。

投げた剣がその手に収まった。


「さて、手を抜いた覚えはないが、

手抜きの殺し合いは終わりにしようか」


「……あー、なんかその周りの剣がやばい気がする」


さすが創、わかってんじゃないか。

俺は片手に持った赤い棒を創に向けて投げ、

真っ赤な刀身の剣を手にとった。


「『クラレント』『エクスカリバー』」


アーサー王物語にて、

王の剣である一振りと、

王に謀反を起こした甥が奪った一振り。

俺のこの剣はそれの名前をもらった別の剣だ。

赤い炎の剣と、空色の氷の剣。

我が武器の中でも、今持ってる四本は別格の強さだ。

まぁもう一つ上が一本あるが。

それはいい、


「こいつでお前を殺す」


「おっ、いいねぇ来いよ、今から先に死んだほうが負けな」


死んだら負けとか当たり前だと思うだろうが、

俺達の場合、死んでも蘇るし、そもそも死ななかったりするからこれが普通だ。

俺は空色の刃を振る。


「凍り付け」


創の周りを氷が壁になって取り囲み、

壁の外側には無数の氷の剣を用意した。


「穿け」


その言葉と同時に、氷の剣たちが壁に突き刺さっていく。

中心に捉えた創めがけて無数に突き刺さり、貫く。

仕留められるとは思っていない。

その予想の答として、後ろから殺気が迫っていた。


「そおい!」


「ふん!」


真後ろから振り下ろされた青の棒をクラレントで受け止める。

炎の剣は青の棒をと触れ、激しい炎をまとった。


「やばい!」


創はそう叫んで俺から離れた。

その判断は正解だ。

なぜなら、次の瞬間には創のいた位置に

氷の弾丸が降り注いだからだ。

飛び退いた創の後ろに転移し、

その後ろから斬りかかる。

もちろんのこと防がれるが、そんなことは関係ない。

横からもう一度氷の雨。

そいつを避けた創にもう一度攻撃。

もう一度氷の弾丸。

創に反撃されないように間髪入れずに繰り返す。

創は途中で気がついたらしく叫んだ。


「この剣、切るたびに温度が上がるのな!」


「そのとおり!」


そう、クラレントは切るたびに温度が上がる。

因みに、上限はないので無制限に、

二乗を繰り返す形で上がっていく。

例としてあげるなら、最初が二なら四、その次は十六という感じだ。

連撃を繰り返し、剣は温度を上げていく。

数回繰り返した時、創の青い棒にヒビが入った。

氷には炎、温度さえ上げてやれば破壊できるのは当たり前だったか。


「叩き折ってやらアアああ!!」


渾身の一撃を創の棒に当てる。

クラレントは棒を真っ二つにし、そのまま創の頭に向かって行く。

念には念を入れ、周囲から氷の弾丸も放つ。


「『転……」


「遅い!」


クラレントの刃は、氷の弾丸は、

容赦なく創の体を切り裂き、貫いた。

刃の熱が創の体を炭化させていく。

黒焦げになりながら倒れる創に「ざまぁみろ」

と言うような笑顔を向けようとしたその時、

俺の首が取れた。


「?」


胴体と首がいつの間にやら離れている。

創を見ると、黒焦げの口を三日月にして笑っていた。

奴の右手が俺に向けられる。

首だけでどうにか出来るわけがない、

俺は創の右手から発射されたレーザーで焼きつくされた。


  ****


「やっぱり強いね姫ちゃん」


「一応、これでも元神なので……」


私は頭を掻いた。

私と廻さんの戦闘は、私が押していた。

私は兄さんや創さん、廻さんに比べて能力を扱ってきた期間が長い。

それはもう気が遠くなるほどに。

正直言えば、兄さんが全力でない限り

私は兄さんに勝つことができるだろう。

全力なら負けるんですけどね。


「ふたりとも強すぎるのよねぇ」


そう言って廻さんは苦笑した。

しかし、すぐに真顔に戻ると、真剣な顔でこちらを見る。


「でも、負けるつもりはないわ」


「そうですか、でも勝たせませんよ」


私達は空中で睨み合う。

押してはいるが、時間がない。

この勢いで勝たせてもらいましょう。


「『記憶の本棚』」


私の言葉とともに、私の周囲に本棚が出現した。

名前の通り、この本棚には私の記憶が収まっている。


「本気でヤバイじゃないのよ!」


廻さんの慌てた声が本棚越しに聞こえた。

私の行動を阻止しに来るだろう。

五重くらいで防いでみますか。


「『八重結界』『反転結界』『次元歪曲』『三重空間』『無数分岐』!!」


本棚達の外側を防壁たちが包む。

稼げる時間は短い、その間に出来るだけ記憶を探そう。


「えっと、これとこれ、あとこれと……こっちもですね」


本棚から抜き出す記憶は総じて私が思い出したくない記憶。

つまるところトラウマの記憶だ。

世界の管理しか出来ず、内側に鑑賞できなかった頃の私は、

世界が内側から崩壊する場合はそれを見守るしかなかった。

逃げる命と、それを覆い尽くす黒、トラウマになって当然の光景だった。


「………思い出しちゃダメです。速く探しましょう」


何も考えず手を動かした。

取り出した十数冊の本たちを開く。

そこに収まった記憶を視覚化して廻さんに見せればいい。


「えげつないですが、ごめんなさい廻さん!」


防壁を解除する。

飛び込んできた彼女の目の前で私は手を叩く。

同時に、本から私の記憶を呼び出し、

そのままその時の視覚と感覚を私達に見せた。


「………」


崩壊していく世界が見える。

命の、光が消えるのが見える。

命の、体が崩れ去るのが見える。

命の、逃げ惑う足音が聞こえる。

命の、救いを求める叫びが聞こえる。

命の、抗わんとする雄叫びが聞こえる。

かつて見た地獄が、私達の感覚を抱きこんだ。

映像が終わった時、廻さんは俯きながら涙を流していた。

そして、そのまま私に背を向けると、どこかに消えてしまった。

私の勝利でいいだろう、しかし、手荒すぎた。

しかも自分自身もトラウマを見てしまった。


「……ッ」


久々のあの光景に、体が震える。

見た時は自分の無力さを呪ったものだ。

……今回は自爆技を放ってしまった。

反省しなければならない。


「……戻りましょう、帰らないと皆さんが危ないです」


転移は止めたが、物量的な不利が未だある。

トラウマを見たごときで戦えなくなってはいけない。

そう思いながら本陣へ飛翔を開始した時だった。


「?」


上から何かが落ちてくる。

私の上空には兄さんたちしかいなかった、

ならば……


「兄さん!」


私は叫びながら落ちてくる物体に向けて飛んだ。

予想通り、それは兄さんだった。

首から下はほとんど回復できていない兄さんは、

受け止めた私を見ると笑った。


「ただ今姫ちゃん。勝負は引き分けだったよ」


「また無茶やったんですか?」


「うん」


軽くいいながら笑う兄さんを私は抱きしめた。

端から見ると上半身だけの男を抱きしめる少女というグロテスクな絵だ。

しかし、兄さんに触れられるのならそんな些細な事どうでもいいです。


「姫ちゃん」


私の胸に収まった兄さんが口を開く。


「顔が真っ青だ。姫ちゃんも無茶したんでしょ」


「……ちょっと」


私は苦笑した。

兄さんが手を伸ばして私の頭に置く。

兄さんの大きな手が私の頭を撫でる。

その手の感覚に私はすごく安心した。


「いつでも頼ってくれていいからね」


「はい、大丈夫ですよ兄さん」


私は戦場を見てみた。

大きな神力と妖力が敵本陣でぶつかり合っている。

妖力ということは国下さんですね。


「兄さん、どうしますか?」


「んー俺が加勢に行くよ、姫ちゃんは補給してあげて」


「了解しました」


私は兄さんを放した。

彼のぬくもりが消えて寂しい。

できればあのまま抱きしめたままが一番幸福なんですけどね……。

いえいえ、それはいいです、今は補給に戻りましょう。


「兄さん、私頑張りますね!」



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