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東方兄妹記  作者: 面無し
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夫が好きすぎる二人の嫁

一番後ろの拠点。

私は高矢さんと一緒に、

そこで皆の武器や防具の修復と、指揮の補助をしていた。

戦況は押され気味、予想も覚悟もしていたとはいえ、

いざ本番となると焦ってしまっていた。

しかも今回は厄介事が増えた。


「相手も小編成の部隊で来る予想もしていたし、

それに対しての戦闘も伝えてましたが……」


「流石に、厄介すぎるね、

相手の部隊が瞬間移動するなんてどうにもやりにくい」


高矢さんが言ったとおり、

敵の部隊が瞬間移動して襲ってくるため、

どうにも対応がしにくいのだ。


「瞬間移動させてる人物に予想はついてるんですけどね……」


「ああ、さっき零さんと戦ってた子のお姉さんだっけ?」


「そうです」


私は上空に突如出現した真っ黒な球体を見る。

兄さんは、今あそこに居る。

何億年ぶりの好敵手を前にはっちゃけているのであろう。

そして、その好敵手、創の姉、それこそが今回の瞬間移動の原因だろう。


「起承転結を操る程度の能力、

おそらく彼女の能力はそんなところになると思います」


以前目にした彼女の能力を思い出しながら私は言った。

私たち夫婦に対抗できる数少ない人物の一人、

そして、創の姉にして嫁。


「私と兄さん以外が敵うとは思わないでください」


「そうかい……じゃあ戦ってもらえるね」


予想通りだった。

おそらく私も戦闘するだろうとは思っていた。

準備もしてある、覚悟もしてある、


「でも」


「修理は心配しないでくれ、

国の方にもう手配をしてある」


「……言うことわかったんですか?」


「勘だよ」


ほんとうに恐ろしい勘だ。

そう思いながら私は首を振った。


「そうですか、なら行ってきます」


「ああ、気をつけて」


「すぐ戻ります!」


そこの言葉に嘘はない。

手配があるなら少しは保つだろう。

だが、万全でない以上速く済ませなければならない。

時間制限がある私の能力を考えれば、

不利であることに変わりはないのだから。


  *****


相手の陣地、その本拠地へと自身を瞬間移動させる。

周りは敵の兵士たち、目の前には大和の神々、

そして、神々の中に佇む一人の女性


「何だ貴様は!」


叫んだ相手の兵士を無視して、

女性の目の前まで移動する。


「お久しぶりですね、めぐりさん」


「ええ、久しぶり姫ちゃん」


周りからの妨害はいただけない。

私は周りの兵士が、神々が反応する前に、

目の前の彼女を掴んで空へと放り投げた。


「何だお前は!」


神の内から、一人の女神が立ち上がる。

緋色の髪をし、白の装束を着た、女性。

私は彼女に叫んだ。


「すいません、手出し無用でお願いします!」


叫びと間を開けず、私は放り投げた彼女のもとへ自身を送る。

空中で漂っていた女性は私に笑いかけた。


「数億年ぶり、相変わらず可愛いわね」


「廻さんも、相変わらず美人さんです」


私たちは久々にあった友人に挨拶をした。

私は目の前の女性を眺める。

創さんに作ってもらったのであろう

赤の浴衣に黒の帯、無地の服であることからすぐわかる。

茶髪のセミロングの髪をポニーテールにまとめて、

安心感のある雰囲気を持った、とんでもない美人。


「零くんと仲いいみたいね、

やっぱり前みたいに隙さえあればチュッチュしてるの?」


「してますよ、廻さんも、服を作り合うなんて微笑ましいです」


「あ、わかる? 気に入ってるのよ、

着てると創が隣にいるみたいな気分になるし」


私は彼女の胸に目を向ける。

たわわな、それでいて形の良い、胸。

自分の胸を見る。

膨らんでいる、形は……いいのだろうか?

比較し、比べて、虚しくなる。


「ああ、なんか創が隣にいないと寂しいなぁ……

ってなんでそんなに沈んでるの姫ちゃん?」


「いえ……なんでもないです」


そうなんでもない、

ただ胸が小さかっただけだ。

兄さんは小さいほうが好きと言ってくれる。

ならばいいじゃないか!

……でも、でもっ!


「ムネガチイサイコトナンテゼンゼンキニシテナイデスヨ?」


「姫ちゃん棒読み棒読み。

大丈夫、零くんは微乳が好きって言ってるじゃない、

旦那の嘘くらいわかるでしょ? 元気元気!」


「でもでも、いつか『やっぱり大きいほうがいいなぁ』

ってい言い出すかもしれないですし……」


廻さんが私の前に来る。

そのまま私の頭を撫でた。


「あれだけ姫ちゃんに骨抜きなんだから

しばらく………二人が死ぬまでくらいは大丈夫よ」


廻さんを見上げる。

にっこり笑顔がそこにあった。


「そうですか?」


「そうよ、何なら零くんに確かめればいいじゃない」


そうだ、そうすればいい。

三日後が夫婦の日だったか、

その時に兄さんに確かめればいい。

ふたりきりなら恥ずかしくない。


「分かりました、ありがとうございます」


「どういたしまして」


ふうと一息を吐く。

気を取り直して、私は廻さんに言った。


「では要件を、瞬間移動の処置をやめて……」


「いやよ」


「……ですよね」


即答だった。

わかっていたことではあるが、少し残念だ。

断られた以上、力づくしかないだろう。


「では、腕尽くですね」


「……やっぱりそうなるわよねぇ」


廻さんは苦笑した。


「普段は非戦闘要員なんだけどなぁ」


「私も同じですよ、でも、

二人と戦える存在なんて私か兄さんしかいないですし」


「仕方ない……か」


私は頷いた。

廻さんは諦めたと言った風に両手を上げた。


「わかったわ、腕尽くで勝ったなら止めてあげる。

ただ、長引けば不利になるだけよ?」


「大丈夫ですよ、私には時間制限があるので、

否が応でも短期決戦になってしまいます」


兄さんのように長時間戦うことは出来ないので、

私はその分、全力で行きますよ。


「隔離します!」


私は両手を前に掲げる。

兄さんと創さんを飲み込んだものと同じ、

真っ黒な空間が私達を包む。

この空間内であれば、外に影響はない、

また、外からの影響もない、極めて隔てられた空間。


「始めましょう」


空間を広げ終わった私は両手を下ろす。

目の前の相手をにらみ、霊力を増幅させた。


「ええ、始めましょう。

久々に、私も楽しませてもらうわ!」


廻さんが笑う、瞬間に彼女の周囲に無数の剣が出現する。

彼女はそのまま私を指さす。

剣達はまるで嵐のように私に向かって飛んできた。

私は苦笑する。短期決戦できるのが望ましい、望ましいが、


「今回は時間ギリギリになりそうですね……」


私はそうつぶやいて霊力の波を周囲に起こす。

波に飲まれ弾かれた剣が舞うのを見ながら、

私は彼女に突撃した。


  *****


私や兄さん、その他私達と同等の力がある人達。

彼らと戦うときは、弾幕を張ってもそんなに意味が無い。

なぜなら、お互いの弾幕はかき消すことが容易だから。

同等の力ならば簡単に消せる。

ならばどうするか、


一撃でいいから、とんでもない威力の一撃を放つのだ。

当たればダメージ、防がれればそれまで、

だが、そうしないとあたりさえしないから仕方がない。


「せぇい!」


私の拳を廻さんが躱す。

体を能力で強制停止させ、

今度は後ろに一回転しながらの蹴りを試みる。

が、それは受け止められ、私はそのまま投げ飛ばされた。

慌てずに空中で指を鳴らす。

廻さんの足元から圧縮したレーザーを打ち出した。


「熱っ!」


とっさに躱した廻さんだが、

浴衣の袖が少し焦げていた。


「あー! 浴衣が焦げた!」


「あーその、ごめんなさい」


その場で私は頭を下げた。

廻さんは袖を握りしめて、悲しそうな顔をする。


「創に謝らなきゃ……」


「う……その……」


悲しそうなその表情に、私は縮こまってしまう。

私も兄さんが創ってくれたものはたくさん持っている。

それが壊れれば……私も同じ顔をするだろう。


「姫ちゃん」


「なんですか…?」


私は顔を合わせられなくて顔をそらした。


「服は許すわ、時間が経てば大切にしていても駄目になるもの」


「……はい」


「それに、創なら何も言わずにもう一着創ってくれそうだし」


「……はい」


「この気分は後で創めに抱きついて、撫でて、膝枕して、

パフパフして、モニュモニュして、キスして、添い寝すればいいもの」


「……?」


「ああ創、おねーちゃん寂しいなぁ。

喧嘩好き(主に零くん相手)なのも、服にセンスがないのも、

別にいいし、と言うか愛おしいし、好きすぎて気絶しそうだし、

今すぐにでも抱きつきたいけれども!

隣にいないと抱きつけないじゃない……」


骨抜きですね……メロメロとはまさにこういうことでしょう。

私も同じようなものです。兄さんが大好きです。

喧嘩好きで、面倒くさがりで、服にセンスなくて、

お腹出して寝るし、約束は時たま破るし(大切なのは別)、

でもでも、やっぱりそういうところも含めて好きだから私は兄さんといるし、

結婚もしたし、子供も作ったし、今も隣にいなくて心細いです。


「ううう……兄さぁん」

「ううう……創ぇ」


私たちは同時に夫を呼んでしまう。

顔を見合わせ、照れ笑い。


「仕方ないですね」


「仕方ないわね」


「続けましょう」


「そうね」


一息ついて、私たちはもう一度戦闘を再開した。

隣の、おそらくよく似た性質の空間で戦う彼らを思いながら。



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