ここであった億年目の好敵手
八坂を捕まえてから二日。
たった二日で次の宣戦布告が来た。
どんな猛スピードで準備をしたのか。
ただの戦争好きの馬鹿溜まりなのか、
神代の通り、日本を平定するのが目的なのか。
どっちにしろ人が死ぬことをやってることに変わりはない。
だが俺は止めない、
なぜなら歴史の修正力が働くのが怖いからだ。
俺が紫や幽香に会う歴史は本当はこの世界にないわけだし、
俺がこの国に居ることも本当はないわけだ。
世界はある一定の歴史にそって動く。
変えすぎると、世界が本の歴史にしようとして、俺を消すかもしれない。
「俺は今回の勝ちを約束出来ませんがいいですか?」
俺は目の前の爺さんに言った。
賽銭箱に座った俺を見上げる爺さん。
いつもどおりの笑顔で別にいいよと返してきた。
「約束された勝利ほどつまらないものはないしね、
まぁ、戦争につまらないも面白いもないけどね」
爺さんは鳥居を眺めていった。
少し細められたその目には、何か黒いものがあった。
「爺さんも色々経験してるんですね」
「ああ、しているとも。
君には遠く及ばなくとも、色々経験している」
まぁ俺も色々経験したよ。
三十億歳以上の年月と、四つの世界は伊達じゃない。
「世界とは思い通りになってくれないものだね」
「その通りですよ、俺でも未だに好きに出来ませんから」
俺は目の前の空を見つめる。
何もないそこに、平和すぎる世界が見えた気がした。
次に発したのは出発の言葉だった。
「行きましょう、零さん」
「ええ、行きましょうか高矢さん」
俺は目の前の理想を消した。
理想には手が届かない。
ならば手の届く理想をつかむことにしよう。
「「勝ちにいきましょう」」
今回の久々の勝負は俺がもらう、絶対に。
*****
戦場になるであろう森の前に来た。
俺の後ろには兵たちが居る。
隣には姫ちゃんがいる。
そして目の森の中から巨大な霊力の柱が立ち上っている。
あいつだと直感で把握した。
絶対にこの直感は外れていない。
アイツの事を俺が間違えるはずがない。
俺は自分の周りに障壁を張り、呟く。
「『激魂歌』」
その呟きとともに俺を中心に霊力の柱が空に上った。
霊力が立ち上ったことで起こった衝撃波障壁にヒビが入る。
目の前の霊力が飛び立つ。
俺もそれを追って空に飛んだ。
「久しぶりだな」
空にいたのは懐かしい顔。
幾度と無く勝負し、幾度と無く引き分けてきた好敵手。
スポーツ刈りの茶髪で、深緑の作務衣を着ている。
「おう、久しぶりだな」
俺達は挨拶した。
かれこれ何億年と会ってなかったのだ、
社交辞令と言うものもあるし仕方がない。
俺が殺気を出すと、相手も乗ってきたように殺気を発した。
「「よう糞野郎」」
俺達は同時に同じ言葉を吐く。
「「ここであったが」」
お互いの声で相手を射抜こうとするように。
強く、重く、突き刺すように。
「「百年目ええええええええええええええええええ!!!」」
空気を声で波打たせる。
そして、示し合わせたかのようなタイミングでお互いに霊力弾を放った。
お互いの中央で弾がぶつかり爆発する。
雷鳴が落ちたかのようなその音が開戦の合図になった。
地上の兵が動き出し、敵を討ち取らんとする覇気の上。
俺達はお互いを潰す勢いで激突した。
「「今日こそ俺が勝たせてもらうぞ!」」
拳を受け止め蹴りを受け止められ、
拳を、足を繰り出しながら俺たちは叫んだ。
「創えええ!!」
「零いいい!!」
自分を害せる数少ない人間の名前を。
****
「『流星の尾』」
「『湾曲防壁』」
俺の放ったレーザーは空間の穴に飲み込まれた。
すかさず俺は片方の腕を空へ上げる。
その腕を中心に魔方陣が描かれた。
「『執拗な追跡者』」
そこから光弾が散らばるように発射される。
あらぬ方向に広がった弾丸は途中で向きを変え、
多方向から、多数の弾丸として相手に降り注ぐ。
「『転移』」
目の前の創が呟く。
創が消えた空間を光弾が素通りしていく、
俺は奴が移動したであろう後方に振り向きざまに光弾を放った。
「アブねッ!」
創はその光弾を難なく避ける。
俺はそのモーションの間に間を詰め、
その顔面に向けて拳を放つ。
受け止めた創が放つ蹴りを、俺は障壁で受け止めた。
創は俺に向けて大口を開けた。
「あ!!!」
そこから出された声の衝撃に俺は後方に吹き飛ばされた。
音の波で衝撃波とか勘弁してほしい。
ただ、
「着弾」
油断大敵だ。
創の背中に光弾が連続でぶち当たる。
先程はなった執拗な追跡者だ。
半永久追尾型エネルギー弾を発射する技である。
着弾と同時に着弾部分が爆発する付属効果もある。
俺は吹き飛んだ創への追撃に流星の尾を放った。
正直、この程度で勝てるわけがない。
創の気配は俺のレーザーを躱し、俺の右方に移動する。
「『巨星の断末魔』」
創のセリフとともに真っ黒なエネルギー弾が発射される。
「『暴食の大口』」
俺の右手が大きな狼の顔に変わる。
その大口で黒い弾丸を砕き、飲み込んだ。
「爆破」
創がそう呟く。
同時に俺の右手の狼の頭が爆発とともに吹き飛んだ。
俺は腕をすぐに再生させた。
「あれ?」
創がボケたような声を出す。
爆発が思ったよりも小さかったとか思ってるんだろう。
先ほどの爆破くらいは予想していた、何回戦ったと思ってる。
「『間穴線』」
創の右側に穴が開く。
先程取っておいた熱風をお返しさせてもらおう。
「やけどにご注意だぜ」
創の体を爆風が包む。
だが、焼けたのは服だけで、創は無傷だった。
「この服せっかくねーちゃんに作ってもらったのに!
どうしてくれんだよ、零! 吹き飛ばすぞ!」
「うるさいよシスコン」
「お前もシスコンだろうが!」
創の周りから銃器が腐るほどの数出てくる。
ロケラン、マシンガン、ライフル、ハンドガン、
ミサイル、戦車、戦闘機、軍艦、………最後のほう兵器じゃないか?
「くらえ! 服の恨み!」
弾丸が嵐のように展開される。
俺はその弾幕に向けて手を広げる。
「『念々ころり』」
サイコキネシスを発言させる技で目の前の弾丸をすべて受け止める。
ついでに創の上空に小型の爆弾を生み出す。皆さんご存知C4爆弾。
小麦粉をおまけで付けさせてもらった。
爆発とともに煙幕が広がる。
俺は目の前の弾幕を粉々にして粉末にする。
「さて問題、粉塵が舞う中火をつけるとどうなるでしょうか?」
答えは簡単粉塵爆発が起きる。
俺は粉塵を創のいた位置に転移させそこに火矢を打った。
粉塵爆発は引火の連続だ。
火力は最高だぜ!
「焼き上がり!」
「そう、じゃあお前は冷凍保存しておこう」
背後の声に振り向いたら遅かった。
頭を捕まれ投げ飛ばされる。
視界に写った創は青い球体を手にしていた。
「おいおい洒落になんないぜ」
俺は空中に障壁を張り、それを地面にして止まる。
「『百火龍鱗』」
両腕に炎を灯して創を睨みつける。
突撃してきた創の手を取ろうとする。
しかし、触れた瞬間炎が掻き消えて腕が凍りついた。
「嘘ぉ!?」
俺はその場から飛び退いた。
ダメになった腕を切り落とし、再生させる。
痛覚を無視してるからできるのであって、普通できない。
なんつー物騒なもん出すのやら……
「正直勘弁願いたいね」
「おいおい、冗談言うなよ。これでも片足焼失したんだぜ?」
「無傷なのに?」
「生やしたに決まってんだろ」
おいおい、行動は常識の範囲内にしろよな、
そうじゃないと世間の皆がびっくりするじゃないか。
そんなことを思っていると、
創の手にある青い球体が長い棒に姿を変える。
俺の腰に向けて横薙ぎされたそれを俺は宙返りで避けた。
両手にもう一度炎を灯し、それを投げつける。
しかし、すべてが途中で棒によって掻き消された。
「全然効いてないしー」
「というかあたっても効きませんしー」
俺のダルそうな声に、同じくダルそうに返して、
創が目の前に飛び込んでくる。
やばいと予感した俺はすぐさま間穴線の穴の中に逃げた。
「やべーやべー」
穴の中でため息をついたのもつかの間。
空間の壁がひび割れそこから手が伸びてきた。
「やば!」
急いで空間から飛び出し、
どこからか作った穴に手を突っ込んだ創に霊力弾を放つ。
それは今度はその場で停止した。
霊力は凍りつくとその場にとどまるんだね、初めて知った。
「せい!」
「のほおお!」
縦に振られた棒を、大げさに飛んで避ける。
正直言うと、対処法がわからなかった。
近づくと凍るような棒にどう対処しよう………燃やすか。
ああいうおかしな冷凍能力は能力で創りだしたものだ。
なら、おかしな加熱物体を出現させればいいか。
「『百火龍鱗』」
体制を整えてもう一度手に炎を灯す。
そして、今度はこれに小細工を施す。
「『規則改竄』この炎の最低温度を現在の温度に固定化」
まずは温度を下げられないようにして温度を保存。
「『有無機物』」
その次に炎という消えるものを物質化して、
消えないものに無理やり変換する。
後は変形させれば完成だ。
「さて……」
背後に迫った青の棒を剣で受け止める。
真っ赤な剣は青の棒とあたって焼ける音と煙を上げた。
「ううん、いい音だ……」
創はその場から飛び退き、距離をとった。
睨んでくるその目を俺も睨み返した。
「さて、後半戦だ」
その言葉とともに指を鳴らす。
俺を中心に現れた黒い空間が俺たちを飲み込んだ。




