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東方兄妹記  作者: 面無し
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大和の武神

姫ちゃん達を能力で呼び寄せ、

本殿の囲炉裏を囲んで七人で昼食を頂いている。


「武器は?」


「鉄製」


装備や作戦などを、俺達は先に爺さんから聞いておくことにした。

俺達の場合、力が規格外なので、

自陣に合わせないと仲間を攻撃してしまうことになる。


「伏兵なんかは?」


「いっぱい使うだろうね、相手の国とは山があるから」


それもそうか、隣の国までは、山がある。

森林の中を囲んだりと色々するだろう。


「サポートはどれくらいで?」


「出来れば兵に防御系の術があれば嬉しいが……」


「わかりました、それくらいなら余裕です」


爺さんはありがたいねといって笑う。

じゃあ、とその隣の諏訪子が口を開く。


「それなら罠を仕掛けたほうがいいんじゃないかい?

そっちのほうが包囲したり、奇襲したりが楽になる」


「そうですね。でも、森にしかけるのなら大掛かりに出来ませんよ?」


爺さんは同意したが、さすがに無理があるのではと難しい顔をした。

森の中では木々が邪魔になる、相手は掛かりやすいが、

その分地形も意識していないと仕掛けは意味がなくなってしまう。

しかし、今ここには俺がいる。不可能は殆ど無い。


「大丈夫、そこは俺が仕掛けよう。

大掛かりな術のほうが俺はよく使うし得意だ」


そう言って俺は指を鳴らす。

囲炉裏の上に近隣の地形が映しだされた。

山から川まで再現した精密地図だ。


「どこにどう仕掛けるかは指示してください、

俺は爺さんの言うとおりに動きます」


そういう俺に爺さんは頷く。

そうすると、国下が思い出したように声を出した。


「そうだ、そういえば、こんなのを作ってきたんだ」


懐から国下が取り出したのは一枚の紙。

ミミズがのたくったようなよくわからない文字だが、

これはれっきとした国下の知っている文字らしい。

調べてみると、これは術だった。


「拘束系の術か」


俺の言葉に国下は頷く。


「尾都が優奈に教えてたらしくてな。

できるだけ強化してみたんだ、使えないかな?」


仮想世界を開き、そこで展開してみる。

元の術はおそらく個々人を補足して拘束するタイプの術だが、

これは範囲内の人物を拘束するものらしい。

半径は、二十メートルか……随分いいもの作ったじゃないか。


「すっごい使える、アレンジして使わせてもらうぜ」


「マジか!?」


国下はガッツポーズと同時に鼻息を荒く吐いた。


「爺さん、指示を」


俺と国下が爺さんに目を向ける。

爺さんは頷いて、口を開いた。

雰囲気は、境内でのものになっていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「あー来たきた」


神社の賽銭箱の上に胡座をかいて俺は言った。

それを合図に目の前の人員が駆け足で鳥居を出て行く。

彼らは今回の戦争の部隊長達。

国のために、敵を打ち取らんと駆けていった。


「よしい行こうか」


俺は拝殿の戸を開けた。中に居るのは一人。

彼は立ち上がる。


「いつでもいいぜ」


彼は拳を鳴らした。


「行くぞ」


『おう!』


俺の声とともに、

二人の国の切り札が、境内から出撃した。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


私は神輿に乗って山を登っていた。

おそらく、もうすぐ敵が襲ってくるだろう。

隣国、『諏訪の国』が今回の相手。

強大な神が居座っており、

鉄という素材で作られた強い武器を持っていると言う話だ。


「単独での行動は危なかっただろうか……」


少しだけ後悔して、それを振り払う。

私の落ちぶれてしまった地位も、これに勝てば取り戻せる。

よくわからない姉弟が来てからというもの、

下っ端の私はすぐに地位を下げられてしまった。

全ては私の力不足がいけないことなのだが、

私はそれを認めたくなかった。


「わかっていても、認めたくないんだよねぇ」


理屈ではないのだ、こういうことは。

っと、人の気配がしてきた、皆に注意を促さないといけない。


「お前たち、そろそろだ。

行軍の速度を落とし、慎重に進むぞ」


『はっ!』


今回の兵は少ない。

いつもの兵の3分の1程度だ。

私個人の兵はこの程度で、たかが三百人程度。

その兵を前後に百人ずつ、左右に五十人ずつで並ばせている。

だが、数千人の大きな国では百人というのは大きな数字だろう。

さて、どこから来るだろうか。私は感覚を研ぎ澄ました。


私は国では武神に入る。

その感覚は戦場での気配を感じ取り、

相手の行動を解いて、勝利を導く。

今回は、包囲型のようだ。


「いいか、囲みに来るよ!」


私の声に、周りの者が行軍を少し早めた。

囲まれる前に突破した方がいい。

広げてあるなら軍は薄いはずだ。

そう読んで軍を進める。

しかし、


「あれ?」


行けども行けども相手と当たらない。

気配は確かに周囲にあり、確かに動いている。

しかし全く正面の相手に当たらなかった。


「なんだ?」


何が起こっている?

私が兵達に一旦止まるよう指示しようとしたとき、


『うわぁ!』


前方で深緑の網が閉じ上がる。

数人の兵がそれにかかり上空に釣り上げられた。

ただの罠だ、しかも軽いチャチな方の、

私はすぐに攻めこんでくると踏んで身構えた。

しかし、誰も攻めてこない。


「?」


ハッタリかと思った瞬間、地面に紫の閃光が走った。

木々の根本を走るそれは、網のように周りを囲んでいった。

術だとすぐに分かったが、気づくのに遅れた私は防げなかった。


『神奈子様! 前方より、謎の障壁によって進軍が出来ないとのこと!』


障壁!? そんな大掛かりな術でどうして隠密展開ができる!?

気づけるはずの術に気づけなかったことに私は動揺した。

しかし、慌ては周りに見せてはいけない。私は顔だけは平静を装った。


「慌てるな、ここで止めたということは、

ここで攻撃してくるはずだ! 周囲を警戒せよ!」


私は周りに指示を出す。

神輿から私も降りて、腰から剣を抜く。

周囲の気配はまだ様子見といったように周囲を回るように移動している。

その間にできることはやっておこうと、私は後ろの障壁に小さな玉を飛ばす。

私の神力を込めたものだ。私の判断で軽い衝撃波が出る。

それであれば障壁は壊れるはずだ。


「さぁ、来い!」


私が大きく叫ぶと、上空から声が聞こえた。

見上げると小さな点がひとつ。

それが大きく声を上げていた。


「ふうううううううううううう!!!」


点は驚くような速度任せに私を踏み潰そうとしてきた。

しかし、私は神だ。神力を武器に流し、強化されたそれで足を防いだ。

棍棒で壁を殴ったような砕く音がした。

叩き切ろうと下私の剣は弾かれ、

降ってきた点いや、人は傷一つなく着地した。


「誰だ貴様は!」


私は降ってきた男に剣を突きつけ叫ぶ。

目の前の男は仮面でもかぶせたような笑みで答えた。


「俺は神谷零、人間だよ」


奴が指を鳴らすのと、

地面を術が這うのと、

敵が攻めてきたのは同時だった。


術によって動きが鈍る。

他の兵たちのも同様の術がかかったはずだ。

そう感じた私は解くために神力を周りに流し込む。


「させないよ」


神力で術を見出そうとする私の力は目の前の零という人間に止められた。

掴みかかる男を剣で薙ぎ払おうとする。

男はそれを素手で受け止めた。


「な!?」


驚く私を男は笑った。

もう片方の手で殴りかかろうとする手を確は掴んで止め、

がら空きのその頭に頭突きをお見舞いした。

しかし、相手に意味はなく、私の頭に激痛が走った。


「っ~!!」


よそ見は出来ない。

しかし、指揮するものとして、

目の前より周囲を確認した。

今のところは善戦をしている。

先ほどの気配の通り、囲んでいたから部分での数は少ない。

一度乗り切ればしばらく安心できるはずだと踏んで、

私は目の前の男を押し切ることにした。


「ぜやぁ!!」


刀身に神力を這わせ振りぬく。

黄金に輝く光の刃を、男は飛び上がって避け、

空中でもう一度飛び上がって私の首に足を掛けた。


「なぁ!」


私は頭上の男に剣を刺さんとする。

男は背を下げて私の背中に体重をかける。

男の体重程度で倒れる私ではないと、私は足に力を込める。

が、男の重さは体の大きさとは予想もつかないほど、

そして、私が支えきれないほどの重さを発した。


私は背中から崩れ落ちる。

男は地面に手をつくと、足の力だけで私を投げ飛ばした。


「わあああああああ!」


数人の兵にぶつかり、

障壁に背中を打ち付けて体が止まる。

飛び起きて男を探すと、男は消えていた。


「な!?」


私は周囲をもう一度見回す。

男は完全に気配すらも残っていなかった。

私は警戒をしながら戦場を走った。

先ほどの男はほうっておけない、

私は兵たちを助けながら男を探し回っていた。


「どこだ! どこに居る!?」


前方の端まで来た時に、もう一度奴が現れた。


「ハァイ☆」


「貴様!」


振られる剣を男は悠々と躱し、

最期に受け止めて笑いながら私の背後を指さす。


「大きく行くぜ?」


「は?」


『うわああああああああ!!』


兵たちが叫びを上げる。

私が振り向くと男の言うとおり、

地面が砕け折れた木々が兵達を襲っていた。


「今度はこっち」


男がそう呟く。

私はその意味をわかっていた。

故にそれを防ごうと男に掴みかかった。

男は簡単に捕まり、笑顔を私に向ける。


「嘘でした。今度は右だ」


私ははっとして右を見る。

先程と同じく瓦礫の嵐がそこを襲っていた。

兵たちが吹き飛ばされ下敷きになるのが見えた。

私は男に向き直る。怯んではいけない、いけないのだ!

そう奮い立たせた時、またも瓦礫の音が響いた。

左のほうだったが、私は振り向けなかった。


音と声を無視して男を睨む。

先ほどのことで投げ飛ばせないのは承知だ。

私は神力を腕に這わせて直接的な殴打を与えることにした。

振りかぶった拳を男は避けなかった。

鈍い音がして拳が男に当たったが、男は特に気にした様子はない。

私がそのことに驚いた後に、私の拳が音を立てた。


「あっ………ぐっ!」


骨が折れる音がする。

変な音を立てて、私の腕から力が抜けた。

私は男から距離をとった。

自分の拳が砕けたことで、

私の心はヒビが入っていた。


私はさらに少し後ずさった。

それに気づいて私は自分をもう一度進ませようとする。

しかし、足は全く動かなかった。


周りを見る。見回す。

相手の兵が見当たらない。

後方の瓦礫にも、右方の瓦礫の方にも、

どこにも相手の兵が見当たらない。


「嘘だ……さっきまで……」


私の中で何かが危ないと警告した。

それを感じて私は正面を見る。

男がゆっくりと私に近づいてくる。

その背中に何か黒い影を見て、私は息を呑んだ。


「やあああああああ!!」


一人の兵が男に向かっていく。

それを止めようとするまもなく、彼は吹き飛ばされた。


普段ならここで私はもう一度自分を奮い立たせるだろう。

仲間の仇を取ろうともう一度男に向かうだろう。

しかし、今回はそれが出来なかった。


私の気持ちは目の前の敵に向くどころか、

後ろに仕掛けたあの球を発動させる方にばかり向いた。


「止まれ!」


男の前に数人の兵が踊り出る。

私が先程苦戦したのは彼らも見ているだろう。

彼らは自分が男に敵わないことを知っているはずだ。

彼らは私が自分を奮い立たせるのを待っているのだ。


「お前たち! どけ!」


私は叫んだ。

彼らは私を信じている。

私は神だ、応えなければならない!

気持ちは相変わらず後ろを向いている。

進軍したこともすごく後悔した。

男に向かっていくのが正直怖い。


「私がやる!」


だが、逃げては彼らに悪いじゃないか。


私は折れていない方の腕で、近くに落ちていた剣を拾った。

神力を流しこみ、男に突きつける。

男は自分も近場の剣を取り、構えた。

彼の剣が青い霊力の光を帯びる。


私は男に向かって突撃した。

男の胸を狙って腕を引く。

突き出す時に切っ先に神力を集中し、

貫通力を倍増させて、男に向ける。

光る切っ先を男は剣で受け止める。


私は叫んだ。

私の叫びとともに、

込められた神力は男の剣を軋ませる。

私は足を踏み鳴らして地面をけった。

男の剣がひび割れていく。


渾身の力で腕を伸ばす。

黄金に輝くの剣は、男の剣を砕き、

男の胸に一直線に突き立てられた。


「ああああああああああ!!」


骨を叩いたような、硬い音がした。

黄金の剣は男の胸でピッタリと止まり、

私は頭が真っ白になった。


「………俺達の勝ちだよ」


男がそういう。

私に応えられるだけの思考が戻る前に、

衝撃が走って私の意識をどこかへと飛ばした。

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